2009年08月23日

ネレイーデ物語 〜 はじめに

ネレイーデ物語〜Geschichte einer Wunderstute - Nereide〜

旧ブログ、しかも2005年11月を最後に未完のまま放置していたドイツの名牝ネレイーデ(Nereide)のストーリーを、全面的に書き直して再スタートします。既に校了しておりますので、今度は中断しません。ご安心くださいませ。全部で約2万字、(古い人間なので換算しないと自分の中でイメージつけられないのですが…)大体原稿用紙50枚程度になってしまったので、連載形式で各節数日置きにアップしていきます。

本編を始める前にまず4年前の言い訳をしますと、ダービーまでは手元のドイツ語資料を読んでそのまま勢いで書けたのですが、ブラウネス・バントのフランス馬コリーダとの対決になって、そもそもコリーダのことをきちんと調べてなかったせいで一旦頓挫しちゃったのです。で、手元のドイツ語ではイマイチ情報が足りなかったし、フランス語は読めないし、日本語、英語でもこの馬の全体像が見えてくるものがすぐに見つからなかったので、するすると執筆意欲が萎んで放置プレイとなってしまいました。その後半年に1度くらいむくっと「書かねば!」という気持ちがもたげるのですが、それまで勢いで書いた部分にも間違いや誤解を招きかねない点、表現が気に入らないところなどが出てきて、また最初から調べ直したりしてると、また色々気になりだして頓挫というのを繰り返し、なんとまあ4年も経ってしまったわけです。嗚呼…orz

ただ今回蔵出しする文章については既に3ヶ月ほど前に仕上がってたし、これだけの内容だったら多分もっと前にも書き上げることは出来ていたと思います。前回エントリーでちらりと触れましたが、実はもう一つまとめておきたい話があって、それと合わせて完成という思いだったので、それが書けなかったのがこれまで引きずってしまった一番の理由になります。当初「エピローグ」として、途中から「補論」として書いては消してを何度か試行し、結局一旦諦めたテーマについて、ここで本編を始める前に一応触れておこうと思います。それによって、単なる名馬列伝という視点を相対化し、ドイツ競馬という観点をも一旦リセットしてもらいたいからです。

そのテーマとは、この物語の種本の一つなる『パティエンスからネレイーデまで〜ドイツのサラブレッド生産30年の興隆〜』"Von Patience zu Nereide - Drei Jahrzehnte des Aufstieges der deutschen Vollblutzucht"(1937年)の著者リヒャルト・シュテルンフェルトが、何故ネレイーデを機にこの本(初出はSport-Welt紙上の連載)を執筆したのか、ということです。これだけだと、この人物を知らない人にはどうでもよく思えるかもしれませんが、しかしこの著書がネレイーデの名声を確固たるものにすることへ一役買ったことは確かであり、またそれ以上にドイツ競馬の発展史を長期的視野で見ていくための一つの軸を作った点でも重要な一書になります。この続編となる書も、1963年、2003年に世代を超えるスパンで出版されています。

しかし私の関心は、この書が後に与えた影響よりも、まずは飽くまでこの人物自身が何故この書をこのとき書いたのか、或いは書かずにはいられなかったのかということです。「書かずにはいられなかった」とは些か主観的解釈になりますが、しかしその捉え方は多分間違いではないでしょう。最初にこの書を読んだときから、文章にある種のパッションを感じていました。そして戦後ハラルド・ルドルフィによる続編『アーベントフリーデンからバーリムまで』"Von Abendfrieden zu Baalim"(1963年)の冒頭に書かれたシュテルンフェルトに関する短い逸話を読んだとき、私にとってこの人物への関心が拭い難いものとなりました。長年Sport-Welt紙上他においてドイツ競馬ジャーナリズムの一線にいたシュテルンフェルトは、ルドルフィによると、この書を最後に筆を置き、そして戦時中ナチの犠牲者となってその人生を閉じたとされているのです。如何なる理由でナチの犠牲になったのかは書かれていません。戦後の出版物もかなり目を通しましたが、残念ながら彼の人物像と死の原因を語るものは見つけられませんでした。彼個人について分かっていることは、博士号を持つ馬学者であったこと、そして本編でも触れるとおり、ネレイーデを産んだエーレンホフ牧場の創設者モーリッツ・I・オッペンハイマーの顧問(Berater)を務めていたということです。オッペンハイマーはユダヤ人で、ネレイーデの活躍を見ることなくナチによりこの世から消されます。即ちシュテルンフェルトの書は、実はオッペンハイマーに奉げる哀悼の意も込められていたのではないかと思うのです。そして彼自身も何かの理由でナチの目につけられ、或いはナチに従うことを拒み、命を奪われたわけです。

ただ一方で、彼はドイツのサラブレッド生産という視点に拘っていました。

ドイツの生産者が自らの課題の大いなる道筋をその目から見失わない限り、全てのことは決定的な意味を持つものではない。これまでなかった何か、今日我々の魂の目の前にある何かを成すこと、それに値することとは、ドイツのサラブレッドである。(強調原文より)

拙訳で恐縮ですが、これは『パティエンスからネレイーデまで』の最後に書かれている言葉です。この書は一貫してドイツ内国産の発展史を各年毎に論じたものであり、ネレイーデを一つの到達点として描いているのですが、しかし当然これが終わりではなく、更なる発展を追及するためにドイツのサラブレッド生産という視点を強く持ち続けていかなければいけないということを強調しているわけです(そもそもネレイーデは母がイタリアからの輸入馬で、およそ純ドイツ血統といえる馬ではない)。彼の最初の理論書と思われる『ドイツのサラブレッド生産』"Deutsche Vollblutzucht"(1917年)という論文にも目を通しました。このときから彼の競馬に対する姿勢は一貫しています。シュテルンフェルトは紛れもなくドイツに対する強いアイデンティティを持ったナショナリストでした。

そこで大きな課題が持ち上がります。即ち、そもそも「ドイツ」とは何かということです。私は曲がりながらもかつてドイツ史を専門として勉強していた者ですから、このテーマにはドイツ競馬に取り組む以前から一応少なからず係わってきました。「ドイツ」とは何かを理解していくには、まず今頭の中にある「ドイツ」の既成概念やイメージを解体する必要があります。上で「ドイツ競馬という観点をも一旦リセットしてもらいたい」と書いたのはそういうことです。少なくともドイツ近代競馬発祥年とされる1822年には「ドイツ」という国は存在しなかったことくらいは、基本知識として押さえておく必要があるでしょう。ただこの課題に正面から取り組むと、最早「ドイツの競馬史」ではなく、「競馬を通じたドイツ史」を書かざるえなくなってきます。これはもうサイトのコンテンツレベルでは収まりません。

更にこの課題の一つの軸として、「ドイツ地域におけるユダヤ人」というのも外せなくなります。エーレンホフ創始者のオッペンハイマーのみならず、シュレンダーハーン牧場オーナーのオッペンハイム家、名繁殖牝馬フェスタ(Festa)によってドイツ馬産に多大な影響を与えたヴァルトフリート牧場の創設者ヴァインベルク兄弟も、キリスト教への改宗者とはいえ元はユダヤ家系に属します。現代に残るドイツ血統の礎はユダヤ系の馬産家によって築かれたと言っても過言ではありません。そして、ドイツのサラブレッド生産という観点で内国産馬の向上に尽力したという意味では、彼らもまたシュテルンフェルトと同じなのです。実は先月、約500ページに渡るシュレンダーハーン牧場史が出版され、早速ドイツのAmazonで取り寄せ気になる箇所を読んでみたのです。私はこれまで、オッペンハイム家はナチ時代末期に亡命していたと思っていたのですが、それは勘違いで、先頃亡くなったカリンさんら家族は、実は『アンネの日記』同様、ケルンの知人宅の屋根裏に終戦まで1年余り息を潜めて隠れていたのだと知りました。またヴァインベルク兄弟の兄アーターは、ナチに捕えられ強制収容所で死んでいます(殺される前に衰弱死)。しかし彼らがユダヤ人としてナチの迫害を受けたことと、ドイツのサラブレッド生産を通じたナショナルな帰属意識は矛盾しません。ただこの無矛盾性をきちんと論じるには、私自身がドイツのユダヤ人について勉強不足であることを認めざるをえません。

私たちは、ドイツのサラブレッド生産及び競馬の歴史にとって、一つのマイルストーンとなった年を終えようとしている。

これは『パティエンスからネレイーデまで』の冒頭の言葉です。シュテルンフェルト自身がユダヤ人馬産家たちと共に築いてきた「ドイツのサラブレッド生産及び競馬の歴史」において、ナチ最盛期の1936年に「一つのマイルストーン」となったネレイーデの活躍の意義とは何か、それを語らないままではネレイーデ物語は中途半端といわざるをえません。しかしこれをこなす為には一冊の本を書くくらいの力量が必要なのです。ですが残念ながら今の私にそれだけの力はありません。今後もこのテーマで上梓できる保証はありません。ただ個人的課題としては残していくつもりなので、今後のブログエントリーで断片的に触れていくことはあるでしょう。

もっとも、一応書きあがっているネレイーデ自身の生涯を眠らせておくのはもったいないので、結果「中途半端」と明言した上でこの度蔵出しすることにしたわけです。断念したテーマについても常に意識しながら書いてはいたので、読んでくださる方にもその辺を頭の隅に置いておいてくださればと思います。

最初に触れたとおり、各節毎に連載形式で順次アップしていきます。その際「はしがき」としてこのブログ上に、註というか補足や旧ブログ上での間違いの訂正箇所などをアップします。各節に関するご意見、ご質問、ツッコミ等がある場合は、それぞれの「はしがき」のコメント欄に書き込んでいただければ幸甚です。

posted by 芝周志 at 01:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ネレイーデ物語

2009年08月18日

日本の夏は相変わらずしんどいのです…

みなさん、お久しぶりです。殆ど競馬脳が止まっている芝です。はてブ見てる人は生きてることくらいお気づきではと思いますが、一応生存確認ということで夏バテ、冷房負けの体をのそのそ動かして取りとめもなく。

先週水曜日、お盆で暇なのを当て込んで職場にカメラと三脚を持っていき、定時上がりでお台場へ行くつもりでいたら、こういうときに限って無駄に嵌って、9時過ぎに着いたときにはライトアップが終わってた罠…orz

まあしかしこれはこれで悪くないかなと。多分日中ほど混んでなかったし、屋台群の場所が少し盛り土で高くなっていて、店仕舞い後で堂々と三脚を立てられたので、3枚目のような写真が撮れた次第。しかし如何せん暗いからAFがなかなか上手く反応せず、マニュアルで試したところで合わないものは合わないわけで、とにかくピント合わせにえらく苦労した。結局僅かに外光を浴びている部分にフォーカスを持っていき、そこでAFを反応させる。被写体が微動だにしないというのが有難い。大体1秒から1枚目の写真だと15秒も開放して撮っている。2枚目についてはフォトショで少し明るくしたけど。因みにISOはどれも320。

自称「アニヲタ3級」としては、「ヱヴァ破」に続いて「サマーウォーズ」も見に行ってきたわけだが、こちらは普通に楽しませてもらった。あれこれ深く考察するのは野暮というもので、最初の暗号を正解していなかった健二君がなんでいきなり指名手配されて顔写真まで流出してたのかとか、夏樹の両親は物語最後に漸く上田まで辿り着けたのに、万助おじさんはなんで2時間で漁船を取って帰ってこられるんだよとか、その他諸々細かいとこは突っ込んじゃダメなのであって、素直に型破りな大家族エンターテイメントを楽しめば良いのである。花札大勝負も冷静に考えると突っ込みどころ満載なのだが、この場合は雰囲気に呑まれて感動しちゃったもの勝ちなのだ。「ヱヴァ破」のように2度お金を出して見に行こうというほどではないけど、DVDが出たらレンタルでまた見ようかなというくらいの価値はあり。

で、一応ドイツ競馬も。だらっとしてる間に4つもGr.I終わってるんだよねぇ。一昨日のラインラント・ポカールはヒルシュベルガー馬2頭の一騎打ちになって、ダービー馬Wiener Walzerがドイツ賞馬Getawayを短頭差に抑えて勝利。フランスのファーブル厩舎からドイツに戻ってきたGetawayが最初からGAG99.5kgをつけてたから、Wiener Walzerは評価の低かったダービーのGAG96kgから一気に100kgにジャンプアップ。しかし個人的にはまだWiener Walzerの力に懐疑的なんだよね。圧倒的な強さはいまだ感じられず、鞍上ヨハンソンの絶妙なペース配分が上手く嵌ってる感じで、もっと厳しい競馬になったらどうなのかという思いは拭えない。一方デフリースはどこかついてない。ダービーでは選択馬を外し、ドイツ賞はカタール主催のアラブ馬レースを契約上優先せねばならなくてGetawayに乗れず、ラインラント・ポカールでも微妙な線で星を落としてしまい、このままだと1年限りでシュレンダーハーンとの契約解消になりそう。

ディアナ賞はフィッゲ厩舎所属Night Magicが軽快な逃げ切りで快勝。これは強かった。今年の最終目標はオペラ賞だが、Stacelitaやブエナビスタが不在なら十分勝負になると思う。またノルトライン・ヴェストファーレンの馬が常に主力を形成するドイツ競馬にあって、ミュンヘン所属馬のGr.I制覇というのも快挙。鞍上ケレケシュは昔から腕のいい騎手だとは認めていたのだけど、フィッゲとの関係が深いせいかラインラントへ移籍する様子もなかったので、このコンビで勝てたことも意義深い。

バイエルン・ツフトレネンは…、ま、いいか。

次回から、書き溜めしておいたものを順次蔵出ししてしまうかと思う。本当はもう一つまとめてからにしようと思っていたのだけど、そちらは考えれば考えるほど生半可なことが書けないと痛感したため、一旦諦めることにした。参考文献一覧をまだ整理してないので、今週末あたりにでもと一応予告。

posted by 芝周志 at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ・写真

2009年07月19日

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を見て

ドイツ在住中に上映していたためまだ見ていなかった「ヱヴァ序」を先日漸く鑑賞し、早速「ヱヴァ破」も劇場で見てきた。サクッと言葉にはし難いのだが、思いつくままに考えるところを書いてみたい。

ネタバレしまくりなので、まだ見てない人は読まないでください。そして少なくとも旧作で色々と思いを巡らした過去のある人は、「ヱヴァ序」を前もって見た上で、是非「ヱヴァ破」を見に行ってください。誰もが手放しで評価できるとはいいませんが、新たに向き合ってみる価値は十分にあります。ただこの感想を含め、「ヱヴァ破」自体の前知識はできるだけ持たずに見に行きましょう。

では、以下「ヱヴァ破」を見た人だけどうぞ。

続き
posted by 芝周志 at 04:01| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ・映画等

2009年07月07日

4度目の挑戦で初制覇を果たしたWiener Walzerのダービー

普段一日PV数10前後の路地裏ブログなのにいきなり100件超えしてビビりましたよ殿下(ご挨拶

それにしてもかすりもしなかったな私の予想…orz ヒネッケ兄弟の兄ハネスが一応本命当てて、穴予想のToughness Danonが3着に突っ込んだからワイドくらい取ってるかもしれん。

ということで、Wiener Walzerが4度目の挑戦で遂にダービー制覇。初挑戦が2000ギニー2着の看板で挑んだ1936年で、名牝Nereideの圧勝劇の前に6着と敗退。2度目の挑戦となった1960年がこれまでで最も優秀で、Alarichに短首+1馬身差の3着。2歳時には無敗でヴィンターファヴォリート賞を勝ち、3歳春には2000ギニーを制したクラシックホースでもある。因みにこのときはシュレンダーハーンではなく、ツォッペンブロイヒ牧場所属。3度目の1987年はどこをステップにしてきたのかもよく分からず、オーナーもこの一度切しかダービーに出走させたことがない小馬主だし、単勝129.6倍という全くのアウトサイダーのまま17着。そして63年振りにシュレンダーハーン所属に戻った今年、念願のタイトル獲得となったわけだ。

まあドイツは母親頭文字ルールがあるから、20~30年毎に甦る馬はよくいるわけです。本当は私の本命Saphirが勝ったら、まはるさんも触れていた20世紀初頭のドイツ馬産を支えた種牡馬Saphirについて少し調べ直そうかとも思っていたのだけど(断片として記憶していて頭の中で整理されてない)、Gr.I取るときまで棚上げしておきます。つか、Thoroughbred Horse Pedigree Queryでは10頭目だよ今年のSaphir。

さて、今年のレースタイムは2:29,56で、10年振りに2分30秒を切った。馬場荒れデフォルトのダービーとしては明らかに速い。スタート後のスタンド前は最低人気のDouble Handfulと同じく人気薄のOrdenstreuerが競り合い、Oriental Lionのペースメーカー役の可能性もあったGlad Pantherも好スタートで前に並んでいたから、1コーナーを回るまでは結構速いラップだったはずだ。しかし向正面に入る前にOrdenstreuerがきっちり2番手に控えたことで、ペースがかなり落ち着いた。Wiener Walzerは4~5番手で、その外にOriental Lion。SuestadoはWiener Walzerのすぐ外目後ろで、位置取りとしては申し分なかったはず。EliotはSuestadoの更に斜め後ろ外。Toughness Danonは馬群中央に位置し、Saphir、Sordino、Quo Dubaiが並んで最後方。Boliviaがその1馬身前という向正面の展開だった。

3コーナーを回った辺りで徐々に動き出すが、Suestadoは手応え悪く最終コーナーでは完全に馬群に飲まれてしまう。Wiener Walzerは3、4番手にいたHansomが外へ膨れた間にサッと入り込み、粘るOrdenstreuerを交わして先頭へ躍り出る。そして後方から追い込んできたSordino、Toughness Danon、Eliotを押さえ込んでゴール。

総じてWiener Walzerのレースには無駄がなく、ヨハンソンの腕が光った内容だったと思う。向正面で思いのほか流れが落ち着いたことで、末を活かせたのも良かったのだろう。その点Suestadoにも無理はなかったのだが、3戦目での重賞初挑戦がダービーでは、なんやかんやで馬に与えるプレッシャーが大きかったのかもしれない。2着に入ったSordinoは大外一気。前走ブレーメンのトライアルでは超スローペースで脚を余して3着に敗れていたのだが、元々期待度の高い馬だったし、こういったある程度速い流れなら突っ込んできてもおかしくなかったのだ。中1週もマイナス評価されてしまう要因だったのだけど、結局あのレースでは殆ど力を使ってなかったのかもしれない。3着Toughness Danonの堅実さは少々神憑ってきた。バーデン大賞あたりでちゃっかり2着になり、「世界最強の未勝利馬」という、かつてEgertonが掲げた輝かしい称号を引き継ぐのではなかろうかw

Saphirは、SordinoやQuo Dubai(5着)と同じようなところにいながら、逃げ粘ったOrdenstreuer(6着)にも届かず7着。この順位はこの馬なりに伸びていた証なのだけど、バヴァリアン・クラシックで見せた鉈の切れ味では届かなかったというか、あの時競り合ったPeligrosoが中1週のウニオンで完全に力尽きていたように、Saphirにも結構あのレースは応えていて疲労が残っていたのかもしれない。とりあえず無理させず、古馬になってから本格化させる育て方の方がいいのかもしれない。

尚、Wiener Walzerの今後の予定は今のところ未定。ラインラントポカールかバーデン大賞が一応視野にあるようだが、凱旋門賞への追加登録という話はまだ出ていないようだ。

posted by 芝周志 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年07月05日

ドイツ・ダービーです

IDEE 140. Deutsches Derby (Gr.I)

1991年以来スポンサーとなっていたBMWが、遂に降りてしまった第140回ドイツ・ダービー。今年のスポンサーは昨年までハンザ賞に出資していたコーヒーメーカーのIDEEが買って出たのだが、この会社のオーナーはハンブルク競馬場理事のダールボーフェン氏(Albert Darboven)だから、内輪でなんとかしてるわけで、世界的な不況も相まって、ドイツ競馬界の財政事情は相変わらず火の車状態です。

そうはいっても、やはりダービー。他の如何なるGr.Iよりもワクワクするわけで、昨年暮れに独日の競馬カレンダーを交換して以来ご無沙汰していたドイツ人の競馬友だちヒネッケ兄弟から、居ても立ってもいられないので思わずお前にメール書いちゃったぜって感じで便りが届いた。因みに兄のハネスは恐らくドイツ人で唯一人の『優駿』購読者という日本競馬ヲタで(日本語は初級レベルしか出来ないけど…)、府中にも5度来ており、ディープインパクトが凱旋門賞に出走したロンシャンではディープの帽子とTシャツを着ていたものだから、しっかり写真を撮られて『優駿』に載ってしまったというネタになる男です(バックナンバー持ってる方、そう、そいつですよ!)。弟マティアスの方は特に日本競馬通ではないが、馬券師としてはこっちの方が濃くて、涼しい顔して時々でかいの当てている。

そんなヒネッケ兄弟のダービー予想を(勝手に)お披露目しちゃおう。

兄ハネスの本命はWiener Walzerだ。ウニオンの走りを非常に気に入り、200m延長も問題なしと見込んでいる。それゆえ主戦のデフリースがSuestado騎乗を選んでしまったのは気に入らない様子。対抗にはまず牝馬のBoliviaを挙げてきた。5月31日のディアナ・トライアル(Gr.II)直後、Miss Europaで勝ったシュタルケが「このレースの1、2着馬はダービーに追加登録すべきだ。」と言ったそうで、ヒクスト厩舎4頭出しの中でも主戦スボリッチが早々に選んだBoliviaは外せないそうだ。今年の3歳牝馬はレベルが高いらしい。もっともそのMiss Europaが、金曜日のユングライヒ・ガーベルシュタープラー大賞(Gr.III)で2着に敗れてしまったので、その辺どう評価すべきかは考えどころか。バヴァリアン・クラシック(Gr.III)勝者のSaphirも対抗馬として挙げている。ミュンヘンの2000m戦は、ゴール地点から始まるのではないかと思われるくらいスタミナへのポテンシャルが感じられたそうで、やはりシールゲン厩舎主戦シュタルケが早々に選んだこともあり、この馬は有力だと。よって兄ハネスの予想は、一応三連単全組み合わせ有りで(つまり日本なら三連複)以下の通り。

  • Wiener Walzer
  • Bolivia
  • Saphir

尚、大穴一発狙うならToughness Danonだそうだ。

弟マティアスの方は兄貴のように整理して書いてこなかったので、どれが本命なのかははっきり分からないのだが、やたら気になっているのがEliotだそうだ。まだ未勝利でウニオンでもまだまだ青いところを見せていたが、それでも上位に僅差の5着に突っ込んできたポテンシャルには見るべきものがあったと。もっとも本格化するのは恐らく古馬になってからで、ダービーはまだ早いとも見ている。1番人気になるSuestadoはデビュー戦の勝利からして非常に強烈で、やはり馬券からは外せないとの見解(兄はバッサリ切ってたが)。あとは兄同様Boliviaが気になるそうだ。よって弟マティアスの予想は、一応以下の3頭ということでいいだろう。

  • Suestado
  • Bolivia
  • Eliot

加えて大穴候補に兄同様Toughness DanonとFrantic Stormを馬券に絡めておきたいとのこと。

因みに私は今年のトライアルの中でバヴァリアン・クラシックを高く評価しているので、本命はSaphir。距離伸びて間違いなくプラスだし、ある程度速い流れを経験済みなのもいい。今年のハンブルク開催は珍しく好天続きで馬場もいつもほど傷んでいたい。それゆえ例年より早い流れが予想されるので、スピードとスタミナをきっちり備えた馬が最後に力を発揮できると考える。そういう意味ではウニオン2着のOriental Lionにも高いポテンシャルがあり、前回のように不利を被らなければかなり怖い存在だ。ただヒネッケ兄弟によると、この馬は兄に似てかなり気性的に扱い辛そうなところがあり、レースをうまく運べないのもその辺に難しさがあるそうだ。Suestadoはやはり外せないところだろう。ハノーファーのレースは明らかに格が違っていた。ただ同時に相手が皆明らかに格下だったともいえる。そこのところが気になって巷ほど高くは評価できないのだ。ウニオン馬Wiener Walzerには、やはり距離不安を感じる。加えてまだ未熟な面も見せていたので、多頭数のダービーで最後まで上手くレースを運べるかは疑問。ヒネッケ兄弟揃って押しているBoiviaは確かに気になるが、上述のとおりこの馬に前走接戦で勝ったMiss Europaが一昨日負けてるので、馬券対象からは外しておきたい(って本当に馬券を買うわけじゃないけど)。ということで、私の最終予想。

  • Saphir
  • Suestado
  • Oriental Lion

良馬場で予想以上に早い流れとなり、前崩れの展開となった場合、Panyuあたりが3着以内に突っ込んでくる可能性はあり。ただ逃げそうなのがEgonとFrantic Stormで、両馬ともヒクスト厩舎だから、逃げ競うことはないだろう。淀みない流れにはなっても暴走気味に速くなることはないと思う。

スタートは17時45分(日本時間6日0時45分)。ハンブルク競馬場にいるヒネッケ兄弟を羨ましく思いつつ、私もPC画面でライブ観戦、夜更かし決定です。

posted by 芝周志 at 03:36| Comment(2) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年06月25日

ドイツダービー出走馬レイティング

中1週となるダービー最終便swb-ダービートライアル(準重賞、ブレーメン)は、このレースを6週間後のディアナ賞への一叩きに利用した唯一の牝馬、しかも休み明けのSerienhoeheが牡馬陣を一蹴して勝利。これまた伝統のSライン継承馬で、本番でも人気の一角を担うことになるだろう。もっともかなりスローペースで上がり勝負となったレースゆえに、SerienhoeheについたGAGはたったの89kgで、90kgに届かない低評価。しかもそのせいで敗れた牡馬たちのレイティングはかなり低く抑えられてしまい、ダントツの1番人気ながら追い込み及ばず3着に終わったSordinoは僅かGAG82kgしかもらえなかった。レース前はダービー本番の秘密兵器と囁かれていたにも拘らず、結局スボリッチ(今年はヒクスト厩舎所属)は追加登録された牝馬Bolivia(ディアナ・トライアル2着)に騎乗することを早々と決めてしまった。

さてこのように一通りトライアルが終了したことで、ダービー登録馬のレイティング、即ちレースでの馬番が以下の通り発表された。

140. IDEE Deutsches Derby (7月5日ハンブルク)

馬番

馬名

GAG

1

Wiener Walzer

95.0

2

Saphir

95.0

3

Oriantal Lion

93.5

4

Panyu

93.5

5

Egon

93.5

6

Hansom

93.0

7

Bolivia

92.5

8

Eliot

92.5

9

Quo Dubai

92.0

10

Glad Panther

91.5

11

Suestado

91.0

12

Frantic Storm

86.0

13

Toughness Danon

85.5

14

Sordino

82.0

15

Marlow

82.0

16

Ordenstreuer

81.5

17

Double Handful

80.0

ハノーファーのトライアル勝者でRacebets.comの前売りでは1番人気に支持されているSuestadoが11番と、かなり大きな番号を与えられているが、この辺二つの重賞に偏重した評価という感は否めない。確かに相手がかなり手薄だったというのはあるが、バヴァリアン・クラシック4着のQuo Dubaiあたりよりは上でもよかった気はする。多分そのせいもあるだろう、陣営主戦騎手のデフリースがまだ騎乗馬を決定できずにいる。そりゃあもう1頭はポールポジションなわけだし、通常だったら何も考えずWiener Walzerに乗るはずなのだが、2年前に主戦だったヘリアーは距離不安が囁かれていた馬番1番のPersian Stormを選んで見事に敗れ、ハノーファーをステップに12番を付けてたAdlerflugが圧勝してしまったのだ。デフリースとしても折角のチャンスを馬番だけで見す見す逃したくはないだろう。かといってSuestadoを選んで負けたら、結構厳しい評価をされてしまうだろうし、なんとも苦しい胸の内が察せられる。尚、デフリースが選ばなかった方には、2年前にAdlerflugで勝ったヨハンソンが乗ることが決まっている。実は彼が一番おいしい立場なのかもしれない。

posted by 芝周志 at 01:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年06月18日

Sラインが関心を集めているようです

PV数が普段1日10前後という殆ど誰にも知られていないし関心ももたれていないニッチな当ブログに今週は毎日20PV程付いていてちょっぴりニマニマしている管理人の芝周志ですこんばんは。

要因は先日フランスのディアヌ賞(仏オークス)を勝ったスタセリータ(Stacelita)にあるようで、「ドイツ Sライン」乃至、これを含む検索キーワードで、先日書いた「ブエナビスタの祖−シュヴァルツゴルトとシュレンダーハーンのSライン」に皆さんいらっしゃるのである。この馬は生産も調教もフランスではあるが、血統は父母ともに思い切りドイツで、牝系はまさにシュレンダーハーン牧場のSラインである。ディアヌは2番手から直線持ったままで抜け出す4馬身差の楽勝で、無敗の5連勝。ブエナビスタとは全く違うタイプだが、日欧に登場した傑出した牝馬がともにSライン牝系ということで合田さんも取り上げていることから、Googleでの検索率がちょっと高まっている様子だ。

まあそれでもうちは所詮デイリー20PV程度なのだから、何の影響力も持ってはいないのだけど、一応記事ではシュヴァルツゴルトについて他では書かれていないことも書いたつもりだし、少しでも多くの人に読んでもらえれば嬉しい。特にナチによるブラウネス・バントの出走妨害については、多分これまで日本語では未出だろう。この事件の背景に関し更に掘り下げられるかは私の手元資料の範囲では難しいが、この時代のオッペンハイム家が置かれていた状況から憶測できるものがあるかもしれない。ドイツということで、独自牝系に拘った系統繁殖の馬産伝統とナチの優生政策を安易に結び付けたがる話はこれまでにもチラホラ見かけてはいるが、ユダヤ系のオッペンハイム家やエーレンホフ牧場の創設者オッペンハイマーの悲劇、ナチのフランス馬略奪とは距離を置き戦中もフランス馬産界との良好な関係維持に心砕いた伝統的ドイツ馬産界など(その一端は旧ブログのこの辺で触れた)、ドイツの馬産史をナチに対する視点と同一に語ることはできない(というか、そもそも優良血統を洗練させていくことはサラブレッドの定義そのもので、これがナチなら競馬好きは全員ハイル・ヒトラーと叫ぶべきだ)。

ところで話はまた別の方向へずれるが、スタセリータの母Soigneeはウルマン氏の生産馬であり、セリで高額で落札されてウルマンの手は離れたが、現役時代はドイツで走っていた。2歳時の秋バーデンで準重賞クロニムス・レネンを圧勝したときには、この世代の牝馬はこの馬中心に回るものと思われた。しかしその後フランスのPrix des Reservoirs(Gr.II)で2着と健闘したものの、3歳になってからはこれといった結果を残せず、残念ながら早熟イメージで終わってしまった。とはいえ、現役時代に少しは期待をかけた馬の仔がこうして活躍してくれると格別嬉しいものだ。因みにSoigneeのことを合田さんは上に紹介した記事で「ソワニエ」と書いているが、現役当時ドイツの実況チャップマン氏は「ソンニェー」と叫んでいたので、私の頭にもそれでインプットされていた。最初にスタセリータの母の名を見たのが合田さんの記事だったら、Soigneeのこととは気付かなかっただろう。で、ここは自分の庭なので、強引に私の耳に残っている「ソンニェー」でカタカナ書きさせてもらう。

今やフランスにいるソンニェーは、一応ドイツ伝統のSライン継承者ではあるが、血統図をよく見ると母はフランス生産馬になっており、祖母、曾祖母も英国生まれでドイツではない。ここで思い出されたのが80年代後半に『優駿』誌上に連載された山野浩一氏の連載「血統理念のルネッサンス」だ。そのPart II「ドイツ競馬の現在」(手元にあるのがコピーで、何年何月号かメモってませんでした。すみません。)に取り上げられているシュレンダーハーン牧場の記事では、落日の時にある牧場は繁殖牝馬を売らなければ経営を維持できない状況にあり、Sラインも多く流出されてしまったことが書かれている。当時晩年を迎えていた牧場長マイヤー・ツゥ・デューテ(Meyer zu Düte)にインタビューした山野氏は、馬産において重要な三つのGを彼から教えてもらった。金(Geld)、忍耐(Geduld)、幸運(Glück)である。山野氏はその中で忍耐(Geduld)こそがドイツらしさと捉え、それまでの牧場の成功に大きな役割を果たしてきたと解釈している。だがその当時の牧場の姿は、山野氏の目には最早その忍耐すら尽き果てる間近と映ったようで、この項の最後を「シュレンダーハンは一世紀の驚異的な輝きの後に今眠りに就こうとしている。」という言葉で締めている。だが幾多の苦難を乗り越えてきたシュレンダーハーン牧場とオッペンハイム家の「忍耐」は、当時の山野氏の見立てほど柔なものではなかった。この記事から間もない88年1月に、夫の早世後30年以上牧場オーナーを務めてきたガブリエレ・フォン・オッペンハイム(Gabrielle von Oppenheim)夫人が87歳で亡くなり、娘カリン・フォン・ウルマン(Karin von Ullmann)氏がその職務を引き継いだ。そしてカリンさんがウルマン名義で持っていた黄青の勝負服を息子ゲオルク(Georg von Ullmann)が引き継ぎ、母子で牧場再興に向け尽力したのである。ソンニェーの母Suivezはこの再興の時に当たって、流出されたSラインとしてゲオルクが取り戻したのであろう。牧場に残るSuivezの牝馬にはSuiviがおり、その産駒が今ドイツダービー最有力として注目を浴びているSuestadoである。即ちSラインには今年更にまた大きなところを取れそうな馬が控えているのだ。しかもバヴァリアン・クラシックを勝ったダービー候補SaphirもSラインである。

何だかえらくシュレンダーハーンに肩入れした記事ばかり書いてしまっているが、普段ドイツ競馬を見ているときは特別シュレンダーハーン贔屓というわけではないんだよ(はてなのアイコンはヘニーホフ牧場だし・笑)。ただ一つの一族だけでこれだけ長い歴史と伝統を担ってきた牧場は他にないわけで、歴史的な話になると史料的にもシュレンダーハーンに優るものはなく仕方がない。また今年はSラインばかりでなく、英国二冠馬となったシーザスターズ(Sea the Stars)もシュレンダーハーン伝統のAラインの血を引いており、また先だってオーナーのカリンさんが亡くなられたということもあって、どうしてもこの牧場に関心が引き寄せられてしまうのである。資料を引っ張り出して机の脇に積んだりしているので、しばらく折に触れてシュレンダーハーンの話になりそうだ。

posted by 芝周志 at 02:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年06月15日

混戦ダービーを予感させることになった今年のウニオン

オッペンハイム・ウニオン・レネン(Gr.II)

ダービートライアルとしては格上の存在である伝統のウニオン・レネンがつい先ほど行われた。勝ったのはシュレンダーハーン牧場のWiener Walzer。古馬のエースAdlerflugが調教中の怪我で急遽引退となり、そして何より牧場オーナー、カリン・フォン・ウルマンさんが今月1日に逝去され、シュレンダーハーン陣営にとって辛く苦しい思いの中で臨んだレースであったろう。Wiener Walzerは4月10日に未勝利戦を7馬身差で圧勝後、剥離骨折の除去手術のため2ヶ月のブランクを余儀なくされた。だが仕上がりは万全であった。直線に入ると、逃げるEgonと2番手から先頭に並びかけたPeligrosoを持ったままでサッと抜き去ったのである。しかしブランクの影響は決してゼロとはいえず、抜け出してから右へ左へとふらふらし、鞍上デフリースの必死の鞭で気合を維持して、2着Oriental Lionに1¼差でゴールを駆け抜けた。ただ潜在力の大きさは認められるものの、Walzerkoeniginの仔でもあり、ダービー・ディスタンスへの不安を感じさせられた。このレースは結局、陣営の意地の勝利という印象が残った。

恐らく主戦デフリースは、ダービーではハノーファーのトライアルを勝ったSuestadoの手綱を握ることになるだろう。カリンさんの弔いとしては黒青赤の牧場勝負服の方が適しているだろうが、元々黄青のウルマン服はカリンさんが始めたものを息子が引き継いだものなので、どちらでもよいといえばよいのだろう。

2着のOriental Lionは道中Wiener Walzerの内にいて、直線では粘るEgonとふらふらするWiener Walzerの影響を少なからず受けてなかなか前へ出られず、Peligrosoが完全に失速して漸く空いたスペースからスパートをかけることができた。その位置から、既に最後方からスピードに乗せて追い込んできてたPanyuを押さえ込んでいるのだから、十分地力のある馬であることは示せた感じだ。ただ一瞬の切れる脚があれば前へ突っ込んでいける隙間は何度かあった。それが馬の問題なのか鞍上ポルクーの腕のせいなのかは何ともいえないが、それでもポルクーの騎乗があまり褒められたものでなかったことも確かだ。

オストマン陣営は主戦として今年から迎えていたモンジールとの契約を先日解消した。3年前までは位置取りの悪さで時々見せていたハラハラするレースも、追い込みの腕でちょっとしたパフォーマンスに高めていたモンジールであったが、今回の来独では失敗ばかりが目に付き、かつての「アガ・カーン・ジョッキー」という昔の名前では最早売れないほどの腕の衰えを露呈してまった。クビになるのも仕方ない。しかしオストマンにとっては頭の痛い状況であることに変わりはない。ポルクーは私が帰国後に名前が出てきた騎手なのでよく知らないのだが、昨年ローマ賞(伊Gr.I)で大穴を開けたEstejoに騎乗していたことでドイツに名が売れ、今年からバーデンバーデンでアウエンクヴェレ牧場の馬を預かるルーレック厩舎へ呼ばれてきて25歳のイタリア騎手である。そのポルクーを、とりあえずアウエンクヴェレのメイン厩舎であるオストマンのところへ連れてきたのだろうけど、今回の騎乗を見る限りダービー本番で任せてもらえそうな気はしない。

デットーリに中弛みを許さないプレッシャーを掛けられながらEgonが引っ張ったレースは、全体として締まった内容ではあり、レベルの低いレースだったとは思わない。しかしこの着順がダービーへ直結する評価に繋がるとはいえない。現状のままいけば、多分Suestadoが1番人気になるだろう。もっともステップが飽くまで準重賞勝ちであるから、GAGの上ではWiener Walzerかミュンヘンを勝ったSaphirがトップとなり、ゼッケン1番を付けることになる。両者の比較軸となるはずだったPeligrosoが、中1週の遠征のせいか今回失速してしまったため、ウニオンとバヴァリアン・クラシックのどちらが上に評価されるかは明日GAGが発表されるまで分からないが、とにかく今年のダービーが予想の難しい混戦模様になることは確かだ。

posted by 芝周志 at 02:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年06月14日

凹み捲くった先週のことは早く忘れよう。独ダービートライアルについて軽く振り返ろう。

先週、安田記念残り1Fでウオッカの勝利に絶望し、大勘違いで大外の青い勝負服をディープスカイと思い込んでカンパニーを激写し捲くった芝周志です……_| ̄|○

ドイツに行く前はちゃんと帽子の色で見分けてたのに、いつの間にやら表面積の広い勝負服だけで馬を判断するようになっていたようで、ちゃんと内のディープスカイを狙ってたらラスト50mくらいはウオッカに焦点をシフトできていただろうと思うと悔しさ倍増です。しかもレース前は、「今日は負けてもウオッカを撮る日」とか言ってたのに…(嗚呼)。単勝1.8倍取ってても嬉かありません。カンパニーがファリダット差してたら三連複取れてたなんて、思い出すだけでも……くっ、カンパニー、オマエって奴は!オマエって奴はっ!でもノリちゃんにはダービーで気持ちの良い思いをさせてもらったので、はい、もう誰も恨みません。

そんな感じで3週連続の競馬場疲れも手伝ってブログをサボり捲くってました。長手綱でやる方針にしたので別にしばらく放置したところで別にいいはずなのだけど、日本ダービー、安田記念だけでなく、英仏ダービー、そして独1000ギニーやダービートライアルがあったりで、実際のところ書きたいことがいっぱいあったにも拘らず、どこか溜まった疲れから頭がそれらを全く処理できないまま時間が過ぎてしまったことに忸怩たる思い。でももう今更だから細かく振り返ることは已めます。

それでもドイツの3歳戦には簡単に触れときます。独1000ギニーは英1000ギニー6着のPenny's Giftにドイツ勢完敗。2着のFabianaは人気薄が直線一気で入り込んだものであり、このレースだけでは実力評価はできない。ドイツ馬では実力上位と見込まれていたNorderneyが不利なく力を出していたにも拘らずPenny's?GiftやフランスのEntre Deux Eauxに全く敵わず敗れてしまい、少なくとも今年のマイル3歳牝馬は高いレベルを望めそうもないということが判明してしまった。

牡馬は、6月1日にミュンヘンとハノーファーでダービートライアルがあり、Gr.IIIのバヴァリアン・クラシックをSaphirが、準重賞のハノーファー・フォルクス銀行大賞をSuestadoが制した。共にレースの質としては高かったと思う。昨年のラティボア・レネンを勝った後ゴドルフィンに買われたPeligrosoが参戦したバヴァリアン・クラシックは、そのPeligrosoがデットーリを背に澱みないペースで逃げ格の違いで押し切ると思われたところを、Saphirがステイヤー資質全開にしてジリジリと追い詰め差し切った。この馬は1レース毎に成長している姿が見え、先々結構楽しみな馬だと思う。

しかしダービー候補としては、ハノーファーを勝ったSuestadoの方が取沙汰されている。面子レベルが低かったとはいえ、相手を完全に子ども扱いした勝ちっぷりであり、当然の注目が集まったわけだ。今年からシュレンダーハーン、ウルマン陣営の主戦になったデフリースは、明日ウニオンでダービーの切符を取りに行くWiener Walzerより、本番ではSuestadoに乗りそうな雰囲気が既に漂っている。ハノーファーの準重賞は一昨年ダービー馬のAdlerflugが勝ってるし、馬場が荒れ易く結構スタミナを要求されるところがハンブルクに似てるので、左回りでもトライアルとしてはかなり適していると思う。移動祭日の聖霊降臨祭開催をやめて6月第1日曜日に固定し、重賞に格上げしてもらえないものだろうか。

尚、ついさっき行われたドレスデンのダービートライアル準重賞フライベルガー・プレミアム大賞(3歳ドレスデン賞)は2頭出走取り消しの4頭立てとなり、デビュー2連勝中のNavajo Dancerにとっての出来レースになるかと思ったら、Navajo Dancerは仕掛けどころで全く伸びず、ダービー登録のないPalermoが力強く逃げ切ってしまった。ドレスデンでは1年で唯一注目が集まるレースなのに、95年のAll My Dreams以来ダービー馬が出てないばかりか、このままでは益々有力候補が集まらなくなってしまう。旧東独地域では貴重なレースなだけにこの傾向はとても残念。

明日のダービートライアル真打、伝統のウニオン・レネン(Gr.II)は、先に挙げたシュレンダーハーン牧場のWiener Walzer、PlatiniやPaoliniの半弟Panyu、Oriental Tigerの半弟Oriental Lion、及び中1週で再びドイツへやって来るデットーリとPeligrosoが人気を分け合いそう。今のところどの馬が抜けているという感じはなく、ダービーへの評価は全てレースの結果次第。

posted by 芝周志 at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2009年05月28日

Adlerflug、調教中に骨折、引退へ

う〜む、残念としかいいようがない。重条件の力のいる馬場なら、英仏Gr.Iの一つか二つ取れると思ってたのに…。

Ganz ganz bitter! Deutschland Nr.1 Adlerflug vor dem Aus? (GaloppOnline.de)

26日朝の調教で、今週日曜日のシャンティイ大賞(仏Gr.II)へ向けた最終追い切りの際骨折してしまい、ニューマーケットまで輸送されて手術を受けたということだ。状況は予断を許さず、引退は不可避ながら、種牡馬として生かすため、現在懸命の治療が施されている。

生涯成績は11戦4勝。Gr.Iは3歳にダービー、4歳時にドイツ賞を制し、バーデン大賞で2年連続2着。今年はガネー賞(仏Gr.I)に出走し、追い込んでの3着であった。総獲得賞金651,290ユーロ。最終GAG100.5kg。

AdlerflugのAラインは、前回記事のSラインよりも更に古いシュレンダーハーン牧場の基幹牝系で、それについては2007年にダービーを勝った際(ヘッダの写真はその時の直線)、旧ブログに書いた。そちらも読んでもらえれば嬉しい。

ドイツダービーは、名門Aラインの勝利

【追記】

Aufatmen im Adler-Lager! Um 17:00 Uhr stand er wieder (GaloppOnline.de)

手術は無事成功し、昨日27日の17:00には自分の脚で立つことも可能になったとのこと。牧場長アーペルト曰く、幸運にも当初危惧したよりは軽傷で、2週間後には退院可能だろうということだ。まずは一安心。それでもAdlerflugの脚(どの脚かは記事には書かれていない)には3本のボルトが埋め込まれたとのことで、アーペルトは「レースで走ることはもうない。これは確実だ。」と明言。但し種牡馬としてのプランは全くの白紙とのことで、それはまあ当然だろう。

posted by 芝周志 at 01:17| Comment(2) | TrackBack(0) | ドイツ競馬