「ドイツ競馬史でも書きませんか?」
有難くかつ興味深い話だ。書けるものなら是非書きたいという気持ちではある。だがどれくらいの原稿枚数で、いつまでに書くかというのはまるで決まっていない。ただ「ドイツ競馬史」という大枠があるだけである。一体どの程度の量で、どんな構成で書くべきか、今のところ殆ど見当が付いていない。しかし締め切りが決まっていないからといってだらっとしてると、多分永久にまとまらない気がするので、だらっとなりに思い浮かぶ観点をいくつか考えてみよう。
まずご依頼主が密かにご所望されていると思われる血統史というのは、私には書けない。単純にその力量がなく、とりわけ配合史という観点になってはまったく分からないし、そもそも私が書く必要性もない。血統に詳しく拘っている方が血統表と生産者名を繋ぎ合せながら、飽くまで配合としての馬作りの思想と実践を紐解いていただければよいのだ。それでも血を繋いでいく馬産という意味で、独自血統を育てる牧場史という観点なら、私なりのアプローチは多少出来るかと思う。
ということで一つ考えられる構成方法が、いくつかの伝統ある著名牧場の歴史を並列的に描くものである。プロイセン王立のグラディッツ牧場、現存する個人牧場最古参のシュレンダーハーン牧場、名繁殖牝馬Festaを英国から輸入して20世紀ドイツ馬産の大きな礎を築いたヴァーンフリート牧場、Nereideを産んだエーレンホフ牧場、その他レットゲンやツォッペンブロイヒ、戦後に開業して大きくなったフェーアホフやイットリンゲン等、それぞれの牧場の歴史を描くことで、ドイツの馬産史というものが複合的に見えてくるはずだ。但しこの構成方法だと、時間の流れを行ったり来たりすることになるため、大きな流れでの発展史としては描きにくい。同じ意味で名馬列伝も同様の困難を伴う。
競馬興行の歴史という観点では、それなりに1本の流れを作り出せる可能性はある。だがドイツの場合、案外それも一筋縄ではいかないところがある。なぜならドイツ競馬の黎明期にドイツという国家がなかったのだから。現代のドイツという括りではオーストリアは除外されるが、19世紀ではハプスブルク帝国は「ドイツ」という曖昧な概念の重要な構成要素で、そこにはドイツ語圏でないハンガリーも含まれる。またバーデンやバイエルンといった南西ドイツの中規模国家では、必ずしもプロイセンを中心とした北東ドイツとは歩を合わせた発展をしていないし、少なくとも1871年のドイツ第二帝国成立までは複数の流れを捉える視点が必要だ。また第一次大戦終了までオーストリア・ハンガリーは、なおも大枠としてのドイツ競馬の一要素として捉えておく必要はあると思う。
むしろこうした複眼的観点によってドイツの馬産と競馬の歴史を捉えることで、競馬を通じたドイツ史が描かれることになるのではないかと考えている。だがそれはなかなかに大胆な試みだ。一端の文化史を描くことになるのだから。ただそうなると、そもそもこのような文章の読者層の期待に応えてるのかどうかが怪しくなる。少なくとも直接馬に携わる人たちにとってはあまり興味のない話になるのではないかと。所詮私は元々が歴史屋崩れだから、結局のところ書斎派競馬層向けにしか書けないのだろう。
しかし上にざっくり書いたものは、どう考えても1冊の本レベルの内容量になってしまう。共著としての1章とか、実は原稿用紙10枚程度のコラムでしたってことになれば、当然こんな大仰な話は出来ないわけで、その場合の「ドイツ競馬史」は、何か切り口を一つ設けて書くような感じになるのだろう。面白い文章になるかは、その切り口次第。しかし妙にキャッチーな切り口を設けて、ドイツ競馬というものに中途半端な色を付けてしまいたくはない。これまた書き始めるまでが難しくなりそうだ。
まあ何にせよ、きっちりした内容のものを書こうと思ったら、まずは積読状態の我が家の文献類を読み込んでいかないといけない。しかし当たり前の話だけど、日本語で本を読むよりはるかに時間がかかるわけで、実際の執筆までかなり長い道程になるだろう。まずは原稿用紙50枚程度の時系列的な薄い歴史を叩き台として書いてみるのも手ではありが、はてさて、この冬の間に出来るかな?どうかな……?
2010年11月05日
2010年10月14日
八幡平で紅葉・自然撮影
南部杯マイルチャンピオンシップに合わせて今年も盛岡に行ってきた。ただ、今年は日帰りではなく、前日朝に夜行バスで盛岡入りし、紅葉撮りを楽しむことにした。競馬写真仲間のT氏が最近競馬よりも自然撮りにはまっていて、彼も行くというので(T氏は更に1日早く現地入り)、レンタカー便乗で一緒に廻ることにしたのである。
宿泊、及び撮影は盛岡から岩手山の北側に回った八幡平で、今年は夏が長引いたせいで紅葉は例年より遅れているということだったが、八幡平アスピーテラインや樹海ラインを登った山の中腹付近では程よく色づいていて、とてもよい景色を堪能することが出来た。日曜日は基本的に霧雨が降っていたため、撮影コンディションとしては必ずしもよくなかったものの、濡れた景色というのもまた乙であり、虹や雲海にも出会えたのは、むしろ雨天ゆえの絶好の撮影日和だったともいえる。
私にとっては初めての気合を入れた自然撮影で、なにかと要領を得ないところが多かったが、自然撮影を熱心に勉強中であるT氏のアドバイスもあり、初回としてはなかなかよい撮影が出来たと感じている。それゆえ備忘録の意味でも、今回の撮影をいくつか振り返ってみたい。
基本撮影機材は以下のとおり。
◆ボディ: CANON EOS 7D
◆レンズ:
SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM
CANON EF200mm F2.8L II USM
◆三脚: SLIK スーパーイーグル
八幡平アスピーテラインで後生掛温泉方面へ向かう途中の景色。霧雨が舞っていて森の上方は霞んでいるものの、木々が色とりどりに色付いていたので、車を止めて撮影。競馬場では緑と青空を映えさせるため、大抵ホワイトバランス(WB)は「太陽光」、ピクチャースタイル(PS)を「風景」にしているのだけれども、紅葉撮りの場合は赤みを鮮やかにしたいので、WB「くもり」、PS「ポートレート」にしてみた。フォトショでコントラストを若干強めているが、本来靄ってしまう風景で、それなりに木々の色合いは拾えたんじゃないかと思う。
因みに私はフォトショで調整することにそれほどの躊躇はない。RAWで撮った場合はWBを調整できるのがそもそもの強みであり、コントラストも含めフォトショで調整することで、被写体の持っていた魅力をより再現できるなら、それでいいではないかという考えだ。またPC画面で画像を大きくして微調整することで、次の現場での撮影のための勉強にもなる。いずれにせよいじり過ぎると不自然になるから、基本的にWBの見比べと、多少のコントラストの強調とシャープ化だけ。また望遠で寄り切れなかったものに関しては2割程度まではトリミングすることもある。
苔の碧をもう少し強調するならPSを「スタンダード」か「風景」に変えた方がよかったかもしれないが、主役は飽くまで落ち葉の方にしたので、枯葉色はこれの方が出たんじゃないかと。EF200mm/F2.8を付けると競馬場ではシャッタースピードとぼけ味を出すために思いっ切り開放にする癖が付いているのだけど、ここは中央の落ち葉全体がクリアになりつつ周りをぼかすという感じでいくつか絞りを調整して、F5.6が結果としてうまく収まったかなと。落ち葉に付いた雫ももう少し際立ったら綺麗なのだろうけど、それにはマクロレンズが必要になるのだろう。
後生掛温泉を過ぎたすぐ先の大沼にて。降ったり止んだりだった中で晴れ間が覗いた時に撮影。空の青さをある程度拾いたかったので、WBは「くもり」のままだけど、PSを「風景」に変えた。結構明るくなったのでISOを100にしたのだけど、被写界深度をとるためF14まで絞ったらやはりシャッタースピードがかなり遅くなったので、三脚を使う。でもISO400くらいまでならそれほど画質を気にするものではないから、手持ちでも撮ることは可能なレベル。
八幡平樹海ラインを温泉郷方面へ引き返す途中で虹に出くわす。雨と隣り合わせの撮影だからこそ出会えるラッキーだろう。とはいえ、虹が出ている時間は僅かなものだから、虹が見えたと思った瞬間に車を止めて撮影開始。しかし虹と空と森とで適正露出が全く異なり、とにかくいろいろ設定を変えながら撮りまくる。結果として森の色合いを同時に出そうとすると空に対しては露出過多になり、虹は薄くなって、空も白飛びしてしまうため、虹を強調するためには、やはり森が黒く潰れるのも致し方ないというもの。因みにシャッタースピード1/1600秒なんてもちろんいらない。もっと絞ってシャッタースピード遅めてもよかったのだろうけど、とにかく虹が消えてしまう前に露出を調整していたから、偶々この設定でこの明るさになったということだ。この辺も経験による勉強と。
これも八幡平樹海ラインを走っている途中で出会った光景。雲海が眼前に広がる様は実に素晴らしかった。そういう目で見た感動をどこまで写真に収められるかというのが、謂わば写真撮りの腕の見せ所となるのだろうけど、まあさすがに難しい。設定としては虹と同じように空や雲を強調すると森が黒潰れし、森の緑を拾おうとすると空が白飛びしてしまう。ただこの光景では森にかかる雲が重要なので、森を完全に潰すわけにはいかず、鮮やかさには欠けるもののうす暗く森の雰囲気を残しながら、それを覆う雲を形取った写真になった。もちろんあとから結果としてこの1枚を選んだのであり、他に暗すぎたり白飛びしてるのを何枚も撮ってますよ(笑)
朝焼けを撮るために朝4時に起きて八幡平樹海ラインに向かったのだが、まだ雲が多く空を覆っており、八幡平の山頂付近は雨が酷かったので、急いで止んでいるところまで引き返し、パノラマが広がるところで空の変化を撮っていた。そうしたら岩手山の山頂を覆う雲とそこから降り注ぐ雨に陽光が差し、なんとも鮮やかに輝きだした。まるで空から光が降り注ぎ、山を溶かしていくような感じになったのである。これはいいものを見させてもらった。カメラの設定はとにかくあれこれ変えながら撮りまくり、一番バランスよく落ち着いたのがこんな感じだ。もう少し露出をマイナス補正すると光の存在感が際立つのだろうが、私はこんな感じに山の色合いも残っている方が神秘的な気がするので、空は白飛び勝ちだがこれでいいかなと。
これは山の稜線にズームして、光が山肌を照らす様子を撮ってみたもの。もうちょっと光にコントラストがあったら荘厳な感じもでるのだろうが、取り敢えずこれはこれでといった感じ。尚、この写真を撮るに当たってはEOS 7Dの持つライブビュー機能がとても役に立った。コンデジだと背面のライブビューを見ながら撮るのは当たり前だが、一眼レフでこの機能が付いたのはキヤノンの中級機以上だと7Dが最初だ(訂正:1D Mark IIIや50Dにも付いてましたね)。こういう景色だとAFの焦点が合いにくいので、ライブビューで見ながら焦点付近を拡大し、マニュアルで焦点を合わせた。この機能は接写のときにも使える。
この他にもいくつか挙げてみたいものはあるが、さすがに冗長になってきたのでこの辺にしておく。
その他の写真はこちら。
週末はどうしても競馬撮りばかりになってしまうが、やはり時には思い切って自然撮りに行くのも楽しい。また時々チャレンジしてみたいと思う。
宿泊、及び撮影は盛岡から岩手山の北側に回った八幡平で、今年は夏が長引いたせいで紅葉は例年より遅れているということだったが、八幡平アスピーテラインや樹海ラインを登った山の中腹付近では程よく色づいていて、とてもよい景色を堪能することが出来た。日曜日は基本的に霧雨が降っていたため、撮影コンディションとしては必ずしもよくなかったものの、濡れた景色というのもまた乙であり、虹や雲海にも出会えたのは、むしろ雨天ゆえの絶好の撮影日和だったともいえる。
私にとっては初めての気合を入れた自然撮影で、なにかと要領を得ないところが多かったが、自然撮影を熱心に勉強中であるT氏のアドバイスもあり、初回としてはなかなかよい撮影が出来たと感じている。それゆえ備忘録の意味でも、今回の撮影をいくつか振り返ってみたい。
基本撮影機材は以下のとおり。
◆ボディ: CANON EOS 7D
◆レンズ:
SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM
CANON EF200mm F2.8L II USM
◆三脚: SLIK スーパーイーグル
八幡平アスピーテラインで後生掛温泉方面へ向かう途中の景色。霧雨が舞っていて森の上方は霞んでいるものの、木々が色とりどりに色付いていたので、車を止めて撮影。競馬場では緑と青空を映えさせるため、大抵ホワイトバランス(WB)は「太陽光」、ピクチャースタイル(PS)を「風景」にしているのだけれども、紅葉撮りの場合は赤みを鮮やかにしたいので、WB「くもり」、PS「ポートレート」にしてみた。フォトショでコントラストを若干強めているが、本来靄ってしまう風景で、それなりに木々の色合いは拾えたんじゃないかと思う。
因みに私はフォトショで調整することにそれほどの躊躇はない。RAWで撮った場合はWBを調整できるのがそもそもの強みであり、コントラストも含めフォトショで調整することで、被写体の持っていた魅力をより再現できるなら、それでいいではないかという考えだ。またPC画面で画像を大きくして微調整することで、次の現場での撮影のための勉強にもなる。いずれにせよいじり過ぎると不自然になるから、基本的にWBの見比べと、多少のコントラストの強調とシャープ化だけ。また望遠で寄り切れなかったものに関しては2割程度まではトリミングすることもある。
苔の碧をもう少し強調するならPSを「スタンダード」か「風景」に変えた方がよかったかもしれないが、主役は飽くまで落ち葉の方にしたので、枯葉色はこれの方が出たんじゃないかと。EF200mm/F2.8を付けると競馬場ではシャッタースピードとぼけ味を出すために思いっ切り開放にする癖が付いているのだけど、ここは中央の落ち葉全体がクリアになりつつ周りをぼかすという感じでいくつか絞りを調整して、F5.6が結果としてうまく収まったかなと。落ち葉に付いた雫ももう少し際立ったら綺麗なのだろうけど、それにはマクロレンズが必要になるのだろう。
後生掛温泉を過ぎたすぐ先の大沼にて。降ったり止んだりだった中で晴れ間が覗いた時に撮影。空の青さをある程度拾いたかったので、WBは「くもり」のままだけど、PSを「風景」に変えた。結構明るくなったのでISOを100にしたのだけど、被写界深度をとるためF14まで絞ったらやはりシャッタースピードがかなり遅くなったので、三脚を使う。でもISO400くらいまでならそれほど画質を気にするものではないから、手持ちでも撮ることは可能なレベル。
八幡平樹海ラインを温泉郷方面へ引き返す途中で虹に出くわす。雨と隣り合わせの撮影だからこそ出会えるラッキーだろう。とはいえ、虹が出ている時間は僅かなものだから、虹が見えたと思った瞬間に車を止めて撮影開始。しかし虹と空と森とで適正露出が全く異なり、とにかくいろいろ設定を変えながら撮りまくる。結果として森の色合いを同時に出そうとすると空に対しては露出過多になり、虹は薄くなって、空も白飛びしてしまうため、虹を強調するためには、やはり森が黒く潰れるのも致し方ないというもの。因みにシャッタースピード1/1600秒なんてもちろんいらない。もっと絞ってシャッタースピード遅めてもよかったのだろうけど、とにかく虹が消えてしまう前に露出を調整していたから、偶々この設定でこの明るさになったということだ。この辺も経験による勉強と。
これも八幡平樹海ラインを走っている途中で出会った光景。雲海が眼前に広がる様は実に素晴らしかった。そういう目で見た感動をどこまで写真に収められるかというのが、謂わば写真撮りの腕の見せ所となるのだろうけど、まあさすがに難しい。設定としては虹と同じように空や雲を強調すると森が黒潰れし、森の緑を拾おうとすると空が白飛びしてしまう。ただこの光景では森にかかる雲が重要なので、森を完全に潰すわけにはいかず、鮮やかさには欠けるもののうす暗く森の雰囲気を残しながら、それを覆う雲を形取った写真になった。もちろんあとから結果としてこの1枚を選んだのであり、他に暗すぎたり白飛びしてるのを何枚も撮ってますよ(笑)
朝焼けを撮るために朝4時に起きて八幡平樹海ラインに向かったのだが、まだ雲が多く空を覆っており、八幡平の山頂付近は雨が酷かったので、急いで止んでいるところまで引き返し、パノラマが広がるところで空の変化を撮っていた。そうしたら岩手山の山頂を覆う雲とそこから降り注ぐ雨に陽光が差し、なんとも鮮やかに輝きだした。まるで空から光が降り注ぎ、山を溶かしていくような感じになったのである。これはいいものを見させてもらった。カメラの設定はとにかくあれこれ変えながら撮りまくり、一番バランスよく落ち着いたのがこんな感じだ。もう少し露出をマイナス補正すると光の存在感が際立つのだろうが、私はこんな感じに山の色合いも残っている方が神秘的な気がするので、空は白飛び勝ちだがこれでいいかなと。
これは山の稜線にズームして、光が山肌を照らす様子を撮ってみたもの。もうちょっと光にコントラストがあったら荘厳な感じもでるのだろうが、取り敢えずこれはこれでといった感じ。尚、この写真を撮るに当たってはEOS 7Dの持つライブビュー機能がとても役に立った。コンデジだと背面のライブビューを見ながら撮るのは当たり前だが、
この他にもいくつか挙げてみたいものはあるが、さすがに冗長になってきたのでこの辺にしておく。
その他の写真はこちら。
週末はどうしても競馬撮りばかりになってしまうが、やはり時には思い切って自然撮りに行くのも楽しい。また時々チャレンジしてみたいと思う。
2010年10月01日
コンデジで挑戦〜反省会〜
ちょいと遅くなりましたが、先週25日(土)に挑戦した中山でのコンデジ撮影の結果について気づいたところをば。
使ったデジカメ、及び基本設定は以下の通り。
機種:CANON Powershot A520
記録画素数:2272×1704画素
ISO:50固定
焦点距離(35mmフィルム換算):35-140mm
連写機能:使用なし
測光方式:スポット測光(中央固定)
ホワイトバランス:プリセット(太陽光)
前回も書きましたが、ISOは50から1段でも上げると画質に即影響するため、シャッタースピードが遅くなっても上げずに撮るつもりでした。当日は昼頃まで雲がかかっていたものの、幸い午後には快晴となり、ISOを気にする必要はありませんでした。コンデジ撮影としては、最高の条件に恵まれたと言っていいでしょう。その代わり悪条件での撮影は殆ど試せなかったので、今回は飽くまで光量を十分に確保できる環境下でのチャレンジということになります。
まず、まだ雲がパドック上空を覆っていた6レース新馬戦のパドック。
広角撮り。ホントは被写界深度をもう少し稼ぎたかったのだけど、これ以上シャッタースピードを落とすのは取り敢えず避けたかったので、F4.5で。しかしこれでもまずは無難なところかなと。
但し、やはりAFが甘いのが多かったですね。特にズームにすると、動いているときは上手くいってもこれくらいです。
AFサーボがなく、毎度ワンショットAFで撮ってるから、馬を追うコツを掴んでピントの甘さを克服するしかない感じですね。
しかし7レース以降はすっかり晴れて、パドックにもきれいな秋の日差しが差し込んだため、ズームで寄ってF5.5にしても、1/800秒までスピードを稼げ、AF精度も高まり、これくらいくっきりとした写真も撮れました。
ただワンショットAFゆえの典型的な失敗パターンとして、シャッターを押してから実際に撮影されるまでに、ピント合わせの一拍が入ってしまうため、以下のように顔がフレームから切れてしまうような写真を量産してしまいました。
これもカメラ性能に依存した解決策はなく、フレーム内に常に収めながら馬を追うテクニックを再三撮影することで掴んでいくしかないでしょうね。しかしその辺は慣れの問題とも思うので、克服までにそれほど時間がかかるものではないでしょう。
コンデジの手軽さを活かした撮り方としては、思い切って柵の下までカメラを下し、広角で目暗射ちしてみるのも面白いです。4、5回試し撮りすれば大体の理想的角度は分かります。天気の良い青空を入れながら広角であおるように撮ると、こんな感じの写真になります。
ゴール前写真や返し馬はさすがに厳しかったです。返し馬ですら以下のとおりで、レースについてはワンショットAFの問題も含めて、タイミング良くフレーム内に収めることが難しかったです。
この点も慣れである程度克服することは可能でしょうが、いずれにせよ一眼望遠ほどの対応力はなく、絵としてきれいにまとまった写真を撮るには偶然に頼る部分が多すぎると思います。コンデジの得意分野ではないと割り切って、他のイメージを探した方がいいでしょう。
結局競馬場でコンデジの能力を引き出すには、広角メインに景色としての描写に凝った方が良いのではと思います。この日の午後はきれいに晴れたため、そういった景色として撮るには絶好の条件となりました。
4コーナーからの撮影ですが、柵からカメラを外へ出して、モニターを斜めに覗きながら柵沿いの観客をフレームから外し、斜めに広がるターフと空の雲を返し馬のタイミングに合わせて撮って見たのが以下の写真です。
好きな馬を撮りたい人には、こういう景色写真は無用かもしれませんが、こういう場面の中に自分の好きな馬が写っているのも素敵でしょう。そこは写真撮影が単調にならないように、工夫してみる範囲のもとの思います。
ただ、馬を間近に撮るなら、やはりパドックでの撮影慣れをするのがいいのでしょうね。その場合はやはりまずワンショットAFのピント合わせのタイミングと、フレーム合わせる馬の追い方を覚えるのが肝心でしょう。天気が悪く光量が少ないと、AFの測光が甘くなるのは否めません。これはシャッタースピードの問題ではないため、感度を上げて解決するものではなく、馬を追いながら如何に測光ポイントを1点に会わせ続けられるかになるのでしょう。
それでも冬の中山とかは、パドックも最初から光が少なくなってしまうでしょうから、シャッタースピードと相談しながら、まずは出来るだけ絞りを開放にして明るさを確保し、ISOを上げるのは最終手段という感じで攻めることになるのだと思います。
それにしてもこれだけ好天に恵まれたため、結果としては楽しい撮影が出来ました。コンデジ派の人たちにも、コンデジの長所を活かした撮影を楽しんでもらえればと思います。この記事が多少の参考になれば幸甚かなとw
使ったデジカメ、及び基本設定は以下の通り。
機種:CANON Powershot A520
記録画素数:2272×1704画素
ISO:50固定
焦点距離(35mmフィルム換算):35-140mm
連写機能:使用なし
測光方式:スポット測光(中央固定)
ホワイトバランス:プリセット(太陽光)
前回も書きましたが、ISOは50から1段でも上げると画質に即影響するため、シャッタースピードが遅くなっても上げずに撮るつもりでした。当日は昼頃まで雲がかかっていたものの、幸い午後には快晴となり、ISOを気にする必要はありませんでした。コンデジ撮影としては、最高の条件に恵まれたと言っていいでしょう。その代わり悪条件での撮影は殆ど試せなかったので、今回は飽くまで光量を十分に確保できる環境下でのチャレンジということになります。
まず、まだ雲がパドック上空を覆っていた6レース新馬戦のパドック。
広角撮り。ホントは被写界深度をもう少し稼ぎたかったのだけど、これ以上シャッタースピードを落とすのは取り敢えず避けたかったので、F4.5で。しかしこれでもまずは無難なところかなと。
但し、やはりAFが甘いのが多かったですね。特にズームにすると、動いているときは上手くいってもこれくらいです。
AFサーボがなく、毎度ワンショットAFで撮ってるから、馬を追うコツを掴んでピントの甘さを克服するしかない感じですね。
しかし7レース以降はすっかり晴れて、パドックにもきれいな秋の日差しが差し込んだため、ズームで寄ってF5.5にしても、1/800秒までスピードを稼げ、AF精度も高まり、これくらいくっきりとした写真も撮れました。
ただワンショットAFゆえの典型的な失敗パターンとして、シャッターを押してから実際に撮影されるまでに、ピント合わせの一拍が入ってしまうため、以下のように顔がフレームから切れてしまうような写真を量産してしまいました。
これもカメラ性能に依存した解決策はなく、フレーム内に常に収めながら馬を追うテクニックを再三撮影することで掴んでいくしかないでしょうね。しかしその辺は慣れの問題とも思うので、克服までにそれほど時間がかかるものではないでしょう。
コンデジの手軽さを活かした撮り方としては、思い切って柵の下までカメラを下し、広角で目暗射ちしてみるのも面白いです。4、5回試し撮りすれば大体の理想的角度は分かります。天気の良い青空を入れながら広角であおるように撮ると、こんな感じの写真になります。
ゴール前写真や返し馬はさすがに厳しかったです。返し馬ですら以下のとおりで、レースについてはワンショットAFの問題も含めて、タイミング良くフレーム内に収めることが難しかったです。
この点も慣れである程度克服することは可能でしょうが、いずれにせよ一眼望遠ほどの対応力はなく、絵としてきれいにまとまった写真を撮るには偶然に頼る部分が多すぎると思います。コンデジの得意分野ではないと割り切って、他のイメージを探した方がいいでしょう。
結局競馬場でコンデジの能力を引き出すには、広角メインに景色としての描写に凝った方が良いのではと思います。この日の午後はきれいに晴れたため、そういった景色として撮るには絶好の条件となりました。
4コーナーからの撮影ですが、柵からカメラを外へ出して、モニターを斜めに覗きながら柵沿いの観客をフレームから外し、斜めに広がるターフと空の雲を返し馬のタイミングに合わせて撮って見たのが以下の写真です。
好きな馬を撮りたい人には、こういう景色写真は無用かもしれませんが、こういう場面の中に自分の好きな馬が写っているのも素敵でしょう。そこは写真撮影が単調にならないように、工夫してみる範囲のもとの思います。
ただ、馬を間近に撮るなら、やはりパドックでの撮影慣れをするのがいいのでしょうね。その場合はやはりまずワンショットAFのピント合わせのタイミングと、フレーム合わせる馬の追い方を覚えるのが肝心でしょう。天気が悪く光量が少ないと、AFの測光が甘くなるのは否めません。これはシャッタースピードの問題ではないため、感度を上げて解決するものではなく、馬を追いながら如何に測光ポイントを1点に会わせ続けられるかになるのでしょう。
それでも冬の中山とかは、パドックも最初から光が少なくなってしまうでしょうから、シャッタースピードと相談しながら、まずは出来るだけ絞りを開放にして明るさを確保し、ISOを上げるのは最終手段という感じで攻めることになるのだと思います。
それにしてもこれだけ好天に恵まれたため、結果としては楽しい撮影が出来ました。コンデジ派の人たちにも、コンデジの長所を活かした撮影を楽しんでもらえればと思います。この記事が多少の参考になれば幸甚かなとw
2010年09月21日
コンデジで挑戦
大変ご無沙汰いたしております。数少ない読者の皆さま、残暑続く中ご機嫌如何でしょうか?ドイツの皆さまには、もう随分秋の気候になっていることでしょう。
いやはや毎度のこととはいえ、ブログの更新が気まぐれ過ぎてすみません。しかしドイツ競馬の話題も、最近は重賞レベルで関心ある人はレーポスのサイトで結果詳細くらいチェックできるし、ここの独自性も薄れてはいるよなあと思う今日この頃です。というか、ブログに書く前におふざけしながらツイッターで適度に喋っちゃってるので、ここに書くネタがなくなるというのがあります。
しかしながらツイッターから触発されるものもあり、今日はドイツ競馬についてではありませんが、カメラネタで思い立ったことをば。
そういやここには書いてませんでしたが、5月にEOS 1D Mark IIをぶっ壊した後、7月にEOS 7Dを買いました。最新機種とはいえまたAPS-C機に逆戻りで、微妙な気持ちのリニューアルとなりました。とはいえ今のところ折り込み範囲でのボディ性能には不満はなく、撮影自体も30Dよりは明らかに快調で、Mark IIより連写持続時間が長くなった分、直線撮影での安心感があります。ただ400mm/F5.6に1.4倍エクステンダーを付けられないので、Mark IIとの対比においてスタンドからの撮影だとどうしても被写体まで遠くなってしまうのが一番の不満なのですが、それはもう仕方ないわけで。
そんな感じで先々週末から始まった中山開催で7Dを振り回しているのですが、ツイッターの競馬クラスタではこの夏に一眼デビュー、またはボディのランクアップを図った人も少なくなく、競馬写真班も活況著しい状態となってきました。以前からの競馬写真を撮ってる者としては仲間が増えて嬉しい半面、自分なりのオリジナリティを維持するため、それなりにプレッシャーを感じてきている次第でもあります。
一方そんな中、実はコンデジで競馬写真を撮ってる人たちから、どことなく溜息混じりの声が聞こえてきています。コンデジでは一眼に敵わないよと。確かにコンデジで一眼並みの写真が撮れれば、わざわざ高いお金出して機材を揃える必要はありません。自分もだからこそ一眼にお金を注いでいるわけです。
しかし本当にコンデジだと一切一眼に太刀打ちできないのか?
もちろん太刀打ちできない写真はあります。私が400mm/F5.6や200mm/F2.8を使って撮ってるゴール前写真なんかは、やはりコンデジでは無理です。200mm/F2.8を使ったパドック写真で、馬のアップと背景ぼかしみたいなのも難しいでしょう。でもある程度広角にした場合は、構図的な差は特になくなります。またコンパクトであるからこそ可能な機動力もあるでしょう。その辺は工夫次第なんだと思います。
しかし私を含めた一眼班が言ってみたところで、結局一眼持ちは毎度一眼で撮りまくってるわけですから、所詮口先だけに過ぎません。その辺の無責任さに鈍感にも今頃気づいて、ならば自分もコンデジで勝負しなきゃダメじゃないかと、昨夜突如として自分に責めを感じ始めました。となればやるしかないでしょ。おっさんとしては。
さすがに重賞レースは自分の全力全開で撮りたいので一眼にしますが、来る25日(土)の中山は得にこれといったレースもないので、純粋にコンデジでの撮影に挑戦してみるにはよさそうです。
因みに私の所有しているコンデジは、5年前に買ったCANON Powershot A520です。400万画素で、望遠は35mm〜140mm相当。絞りはF2.6〜5.5です。感度はISO50からありますが、100から早速画質が酷くなります。普段は50のまま。連写機能はありますが、1枚/1秒で何の役にも立ちません。
いつもは仕事用バッグに放り込んであって、時々目について撮りたいものを撮るといった使い方をしてます。最近仕事帰りに撮ったものはこんなのですね。
どうしても夜に使う機会が多くなってしまうのですが、こういう店内のさりげないのにはコンデジの機動力が活きます。
ドイツで撮ったものですが、やはり店内での食事写真をさりげなく。
では競馬場ではとなると、日本ではまだ一度もコンデジで撮ってないので、まだ慣れない頃にドイツで撮ったもので。レースやパドックは一眼を使ってたので全然残ってませんでしたが。
とまあこんな感じが自分で把握しているPowershot A520の能力ですが、このコンデジで中山での撮影に挑んでみようと思います。多分いきなり自慢できるようなのは撮れないと思いますが、まずはいろいろ可能性を試してみたいなと。
反省含めた結果は報告いたしますので、どうぞよろしくです。
いやはや毎度のこととはいえ、ブログの更新が気まぐれ過ぎてすみません。しかしドイツ競馬の話題も、最近は重賞レベルで関心ある人はレーポスのサイトで結果詳細くらいチェックできるし、ここの独自性も薄れてはいるよなあと思う今日この頃です。というか、ブログに書く前におふざけしながらツイッターで適度に喋っちゃってるので、ここに書くネタがなくなるというのがあります。
しかしながらツイッターから触発されるものもあり、今日はドイツ競馬についてではありませんが、カメラネタで思い立ったことをば。
そういやここには書いてませんでしたが、5月にEOS 1D Mark IIをぶっ壊した後、7月にEOS 7Dを買いました。最新機種とはいえまたAPS-C機に逆戻りで、微妙な気持ちのリニューアルとなりました。とはいえ今のところ折り込み範囲でのボディ性能には不満はなく、撮影自体も30Dよりは明らかに快調で、Mark IIより連写持続時間が長くなった分、直線撮影での安心感があります。ただ400mm/F5.6に1.4倍エクステンダーを付けられないので、Mark IIとの対比においてスタンドからの撮影だとどうしても被写体まで遠くなってしまうのが一番の不満なのですが、それはもう仕方ないわけで。
そんな感じで先々週末から始まった中山開催で7Dを振り回しているのですが、ツイッターの競馬クラスタではこの夏に一眼デビュー、またはボディのランクアップを図った人も少なくなく、競馬写真班も活況著しい状態となってきました。以前からの競馬写真を撮ってる者としては仲間が増えて嬉しい半面、自分なりのオリジナリティを維持するため、それなりにプレッシャーを感じてきている次第でもあります。
一方そんな中、実はコンデジで競馬写真を撮ってる人たちから、どことなく溜息混じりの声が聞こえてきています。コンデジでは一眼に敵わないよと。確かにコンデジで一眼並みの写真が撮れれば、わざわざ高いお金出して機材を揃える必要はありません。自分もだからこそ一眼にお金を注いでいるわけです。
しかし本当にコンデジだと一切一眼に太刀打ちできないのか?
もちろん太刀打ちできない写真はあります。私が400mm/F5.6や200mm/F2.8を使って撮ってるゴール前写真なんかは、やはりコンデジでは無理です。200mm/F2.8を使ったパドック写真で、馬のアップと背景ぼかしみたいなのも難しいでしょう。でもある程度広角にした場合は、構図的な差は特になくなります。またコンパクトであるからこそ可能な機動力もあるでしょう。その辺は工夫次第なんだと思います。
しかし私を含めた一眼班が言ってみたところで、結局一眼持ちは毎度一眼で撮りまくってるわけですから、所詮口先だけに過ぎません。その辺の無責任さに鈍感にも今頃気づいて、ならば自分もコンデジで勝負しなきゃダメじゃないかと、昨夜突如として自分に責めを感じ始めました。となればやるしかないでしょ。おっさんとしては。
さすがに重賞レースは自分の全力全開で撮りたいので一眼にしますが、来る25日(土)の中山は得にこれといったレースもないので、純粋にコンデジでの撮影に挑戦してみるにはよさそうです。
因みに私の所有しているコンデジは、5年前に買ったCANON Powershot A520です。400万画素で、望遠は35mm〜140mm相当。絞りはF2.6〜5.5です。感度はISO50からありますが、100から早速画質が酷くなります。普段は50のまま。連写機能はありますが、1枚/1秒で何の役にも立ちません。
いつもは仕事用バッグに放り込んであって、時々目について撮りたいものを撮るといった使い方をしてます。最近仕事帰りに撮ったものはこんなのですね。
どうしても夜に使う機会が多くなってしまうのですが、こういう店内のさりげないのにはコンデジの機動力が活きます。
ドイツで撮ったものですが、やはり店内での食事写真をさりげなく。
では競馬場ではとなると、日本ではまだ一度もコンデジで撮ってないので、まだ慣れない頃にドイツで撮ったもので。レースやパドックは一眼を使ってたので全然残ってませんでしたが。
とまあこんな感じが自分で把握しているPowershot A520の能力ですが、このコンデジで中山での撮影に挑んでみようと思います。多分いきなり自慢できるようなのは撮れないと思いますが、まずはいろいろ可能性を試してみたいなと。
反省含めた結果は報告いたしますので、どうぞよろしくです。
2010年08月11日
スボリッチ騎手引退
Starjockey Andreas Suborics kündigt Karriereende an
短期免許で度々来日していたドイツのトップジョッキー、アンドレアス・スボリッチ騎手が8日ハノーファー競馬場で引退を表明した。彼は香港滞在中の4月に調教中の事故で頭部内出血の重傷を負い、今期はこれまで治療に専念していた。7月にGaloppOnline.deに載っていた記事では慎重な姿勢ながらも秋頃の復帰に向けリハビリに励んでいると語っていたのだが、頭部内という難しい個所の傷であるゆえに、最終的に医師から騎手復帰は危険すぎると言われ、引退を決断するに至ったということだ。
スボリッチ騎手は1987年にウィーンでデビューし、生涯勝利数は1542。1971年ウィーン生まれで、国籍はオーストリア。スボリッチという姓は多分ハンガリー系で、遡ればハプスブルク帝国時代の隣国出身ということになるのかもしれない。実家は菓子屋。馬とは基本的に縁のない家庭の出身らしい。
ウィーンから程なくドイツのミュンヘンへ移り徐々に頭角を現す。1995年には当時ドイツの2大厩舎の一角ブルーノ・シュッツ師の2番手騎手として競馬の中心地であるケルンへ移り、86勝を揚げる。それを見込まれ翌年レットゲン牧場の主戦騎手に抜擢されるが、シーズンスタートと同時に落馬骨折し秋まで戦線離脱を余儀なくされた。しかし9月に復帰するとA Magicmanでフォレ賞を勝ち、初のG1制覇を揚げる。その後はシールゲン厩舎でTiger Hill、ヴェーラー厩舎でSilvanoといった名馬に出会い、今世紀に入る段階でシュタルケと双璧をなすドイツのトップジョッキーとなった。Silvanoと世界転戦した2001年は、それまでの稼いだ賞金額を1年で稼ぐ活躍振りを示す。そして2003〜2005年にシュレンダーハーン牧場/ウルマン男爵の主戦騎手となり、2004年にShiroccoで念願のドイツ・ダービーを制した。シュレンダーハーンとの契約が切れた後は、あまり所属厩舎が安定せず大手馬主のいい馬に騎乗する機会が減ったため、絶頂期に比べると目立つ活躍も減ったが、しかしそのような少ない機会でも重賞では度々勝利を揚げて、ここぞというときの信頼感は確かであった。日本の短期免許滞在ではあまり目立った活躍はなかったが、2004年と2006年のWSJSで優勝し、日本の競馬ファンの印象にも残る騎手だったと思う。
個人的にもズビ(ドイツでは皆からこの愛称で呼ばれていた)は最も思い出深い騎手だ。私の滞在中が彼の絶頂期だったというのもあるが、思い出してみると最初に自分の撮った写真にサインしてもらったのは彼だった(2003年1000ギニー)。その時にこんな真正面からの写真を撮らせてもらえたのも彼だからこそ(笑)
ズビはファンサービスをとても意識していて、重賞を勝利した時のウィニングランではいつもスタンドに向かって手を回し、観客を盛り上げていた。更にそれだけではなく、人気が低迷する競馬界の為に彼は少なからず一役買っている。例えばテレビの「この人の職業は何でしょう?」といったバラエティーショウに出演したり、もっと具体的に彼の生活を追ったドキュメンタリー番組にも出たりしている。
更にとても印象深いものとして、数少ない競馬のテレビ放映の機会に、レースで騎乗しながら自ら実況するという企画にも挑戦しているのだ。当日の解説者だった元騎手ルッツ・メーダー氏は、このような騎手に無駄な負担を与える試みに対しあからさまに不満顔をしていたが、しかしズビ自身もそれが騎乗へのマイナスになることは百も承知の上で、視聴者への関心をより喚起させるための試みに自ら買って出ているのである。こんな企画は後にも先にもこれ一度きりだろう。貴重なものなのでYouTubeにもあげてみた。
(因みに準オープンクラスのこのレースを勝ったのは2004年カナディアン国際で2着になったSimonas)
ズビは日本に幾度か来ていたため、競馬場で私を見かけるといつも「コンニチハ」と声をかけてくれ、勝利のあとに「おめでとう」と日本語で声をかければ、「アリガトウ」と答えてくれた。さすがに観戦エリア内でそれ以上の会話は普段は殆どしなかったが、ある日メインレースが終わって駐車場エリアから真横に見られるケルンの2400mスタート地点に行ったら、そのあとのレースのスタート前の輪乗りをしていたズビが、「来週はクレーフェルト(競馬場)に来ますか?」と馬上から話しかけてきて二言三言会話を交わすという楽しい体験をさせてもらった。ほかにもミュンヘンへ日帰り遠征した際、帰りの飛行機が一緒になって乗り降りの際に話したりもした。その際私のサイトのアドレスをあげたのだが、まあ覗きに来てる様子はなかったかな(笑) それでも騎手とのちょっとした交流を楽しませてくれたのは、いつもズビだった。
怪我で引退というのは誠に残念だ。年齢もまだ40前だし、まだまだベテランの腕を発揮できたはずだ。
引退表明の際にはこう語ったそうだ。彼なら鞍から降りてもきっとドイツの競馬界に貢献する形で活躍してくれるだろう。まずはゆっくり傷を癒し、近く競馬場を元気に闊歩する姿を見せてほしい。
ズビ、お疲れ様!
短期免許で度々来日していたドイツのトップジョッキー、アンドレアス・スボリッチ騎手が8日ハノーファー競馬場で引退を表明した。彼は香港滞在中の4月に調教中の事故で頭部内出血の重傷を負い、今期はこれまで治療に専念していた。7月にGaloppOnline.deに載っていた記事では慎重な姿勢ながらも秋頃の復帰に向けリハビリに励んでいると語っていたのだが、頭部内という難しい個所の傷であるゆえに、最終的に医師から騎手復帰は危険すぎると言われ、引退を決断するに至ったということだ。
スボリッチ騎手は1987年にウィーンでデビューし、生涯勝利数は1542。1971年ウィーン生まれで、国籍はオーストリア。スボリッチという姓は多分ハンガリー系で、遡ればハプスブルク帝国時代の隣国出身ということになるのかもしれない。実家は菓子屋。馬とは基本的に縁のない家庭の出身らしい。
ウィーンから程なくドイツのミュンヘンへ移り徐々に頭角を現す。1995年には当時ドイツの2大厩舎の一角ブルーノ・シュッツ師の2番手騎手として競馬の中心地であるケルンへ移り、86勝を揚げる。それを見込まれ翌年レットゲン牧場の主戦騎手に抜擢されるが、シーズンスタートと同時に落馬骨折し秋まで戦線離脱を余儀なくされた。しかし9月に復帰するとA Magicmanでフォレ賞を勝ち、初のG1制覇を揚げる。その後はシールゲン厩舎でTiger Hill、ヴェーラー厩舎でSilvanoといった名馬に出会い、今世紀に入る段階でシュタルケと双璧をなすドイツのトップジョッキーとなった。Silvanoと世界転戦した2001年は、それまでの稼いだ賞金額を1年で稼ぐ活躍振りを示す。そして2003〜2005年にシュレンダーハーン牧場/ウルマン男爵の主戦騎手となり、2004年にShiroccoで念願のドイツ・ダービーを制した。シュレンダーハーンとの契約が切れた後は、あまり所属厩舎が安定せず大手馬主のいい馬に騎乗する機会が減ったため、絶頂期に比べると目立つ活躍も減ったが、しかしそのような少ない機会でも重賞では度々勝利を揚げて、ここぞというときの信頼感は確かであった。日本の短期免許滞在ではあまり目立った活躍はなかったが、2004年と2006年のWSJSで優勝し、日本の競馬ファンの印象にも残る騎手だったと思う。
個人的にもズビ(ドイツでは皆からこの愛称で呼ばれていた)は最も思い出深い騎手だ。私の滞在中が彼の絶頂期だったというのもあるが、思い出してみると最初に自分の撮った写真にサインしてもらったのは彼だった(2003年1000ギニー)。その時にこんな真正面からの写真を撮らせてもらえたのも彼だからこそ(笑)
ズビはファンサービスをとても意識していて、重賞を勝利した時のウィニングランではいつもスタンドに向かって手を回し、観客を盛り上げていた。更にそれだけではなく、人気が低迷する競馬界の為に彼は少なからず一役買っている。例えばテレビの「この人の職業は何でしょう?」といったバラエティーショウに出演したり、もっと具体的に彼の生活を追ったドキュメンタリー番組にも出たりしている。
更にとても印象深いものとして、数少ない競馬のテレビ放映の機会に、レースで騎乗しながら自ら実況するという企画にも挑戦しているのだ。当日の解説者だった元騎手ルッツ・メーダー氏は、このような騎手に無駄な負担を与える試みに対しあからさまに不満顔をしていたが、しかしズビ自身もそれが騎乗へのマイナスになることは百も承知の上で、視聴者への関心をより喚起させるための試みに自ら買って出ているのである。こんな企画は後にも先にもこれ一度きりだろう。貴重なものなのでYouTubeにもあげてみた。
(因みに準オープンクラスのこのレースを勝ったのは2004年カナディアン国際で2着になったSimonas)
ズビは日本に幾度か来ていたため、競馬場で私を見かけるといつも「コンニチハ」と声をかけてくれ、勝利のあとに「おめでとう」と日本語で声をかければ、「アリガトウ」と答えてくれた。さすがに観戦エリア内でそれ以上の会話は普段は殆どしなかったが、ある日メインレースが終わって駐車場エリアから真横に見られるケルンの2400mスタート地点に行ったら、そのあとのレースのスタート前の輪乗りをしていたズビが、「来週はクレーフェルト(競馬場)に来ますか?」と馬上から話しかけてきて二言三言会話を交わすという楽しい体験をさせてもらった。ほかにもミュンヘンへ日帰り遠征した際、帰りの飛行機が一緒になって乗り降りの際に話したりもした。その際私のサイトのアドレスをあげたのだが、まあ覗きに来てる様子はなかったかな(笑) それでも騎手とのちょっとした交流を楽しませてくれたのは、いつもズビだった。
怪我で引退というのは誠に残念だ。年齢もまだ40前だし、まだまだベテランの腕を発揮できたはずだ。
自分はかつて目指した以上のものを騎手として達成できた。今は別の形で競馬に関わっていきたいと思っている。
引退表明の際にはこう語ったそうだ。彼なら鞍から降りてもきっとドイツの競馬界に貢献する形で活躍してくれるだろう。まずはゆっくり傷を癒し、近く競馬場を元気に闊歩する姿を見せてほしい。
ズビ、お疲れ様!
2010年07月19日
第141回ドイツ・ダービーはゴドルフィンのBuzzwordが戦後外国馬として初制覇〜関係者コメント〜
ドイツ・ダービーは戦前オーストリア、ハンガリー、デンマーク等の周辺諸国の馬にタイトルを奪われることはしばしばあったが、戦後は国内調教馬限定となり、再び外国馬へ扉が開かれたのは1993年。それから18年間ほぼ毎年外国馬の挑戦を受けながらドイツ勢がタイトルを守ってきたが、今年遂にドイツ・ダービー馬の称号が国境を越えた。ゴドルフィンの第2調教師アル・ザルーニが送り込んだBuzzwordがZazouとの直線での叩き合いを制し、優勝したのである。2着はウニオン・レネンを圧勝して臨んだZazou。3着にノルウェー調教馬のSir Landoが後方から追い込み入線するが、直線でRussian Tangoの進路を妨害し4着に降着。そのRussian Tangoが3着となる。
7月18日ハンブルク
第141回ドイツ・ダービー(G1, 2400m)
以下、関係者コメント(GaloppOnline.deより)
フレンチ騎手(1着Bussword)
「ドイツは徐々にお気に入りの国になってる。昨年G1を勝ち、初めてのダービーも取れた。Buzzwordは強靭な馬で、G1を勝って本当に報われた。」(註:昨年オイローパ賞をJukebox Juryで勝っている)
ホーファー調教師(2着Zazou&5着Lamool)
「両馬とも実力通りに見事に走った。Zazouには最後の200mが長かった。2000mならG1に勝てる馬だ。Lamoolにはもう少しやわらかい馬場の方がよかっただろう。」
ヴェーラー調教師(3着Russian Tango&9着Scalo)
「Scaloはまったくまともなレースができてなかった。馬場も乾き過ぎていたのだろう。Russian Tangoの距離適性に対する問題には答えが出た。彼は素晴らしいレースをした。」
ノイロート調教師(4着Sir Lando)
「彼は最高のレースをした。降着は実に腹立たしい。ダービーで3着と4着では大きな違いだ。私はAppel Au Maitreでも4着になっているのだ。」
ジョンストン調教師(7着Monterosso)
「非常に残念だ。私の馬は勝ち馬には4馬身半差で勝ったことがあるのだから。彼には多分もっと長い直線が必要だ。」
シュタルケ騎手(13着Seventh Sky)
「最後のコーナーでは5番手までポジションを上げることが出来たが、その後伸びなかった。」
7月18日ハンブルク
第141回ドイツ・ダービー(G1, 2400m)
以下、関係者コメント(GaloppOnline.deより)
フレンチ騎手(1着Bussword)
「ドイツは徐々にお気に入りの国になってる。昨年G1を勝ち、初めてのダービーも取れた。Buzzwordは強靭な馬で、G1を勝って本当に報われた。」(註:昨年オイローパ賞をJukebox Juryで勝っている)
ホーファー調教師(2着Zazou&5着Lamool)
「両馬とも実力通りに見事に走った。Zazouには最後の200mが長かった。2000mならG1に勝てる馬だ。Lamoolにはもう少しやわらかい馬場の方がよかっただろう。」
ヴェーラー調教師(3着Russian Tango&9着Scalo)
「Scaloはまったくまともなレースができてなかった。馬場も乾き過ぎていたのだろう。Russian Tangoの距離適性に対する問題には答えが出た。彼は素晴らしいレースをした。」
ノイロート調教師(4着Sir Lando)
「彼は最高のレースをした。降着は実に腹立たしい。ダービーで3着と4着では大きな違いだ。私はAppel Au Maitreでも4着になっているのだ。」
ジョンストン調教師(7着Monterosso)
「非常に残念だ。私の馬は勝ち馬には4馬身半差で勝ったことがあるのだから。彼には多分もっと長い直線が必要だ。」
シュタルケ騎手(13着Seventh Sky)
「最後のコーナーでは5番手までポジションを上げることが出来たが、その後伸びなかった。」
2010年07月17日
第141回ドイツ・ダービー予想
まさか前日に終電まで飲むとは思わなかったので、当日になってしまった…。
トライアル回顧は前々回記事に書いたので、早速ダービー予想に入ろう。
7月18日ハンブルク
第141回ドイツ・ダービー(G1, 2400m)20頭出走(補欠3頭)
(日本時間午後3時時点でKite HunterとGodotが出走取り消し確定。Lyssioが繰り上がり出走予定)
昨年ダービー予想を紹介したドイツの競馬友だちヒネッケ兄弟から、今年もたっぷりとした予想メールが届いた。今年も現場ドイツ人競馬ファンによる今年のダービー展望を、メールをくれた順番に紹介しよう。
(内容は抄訳。文脈から言及された順番を一部入れ替えたり、出走取り消し馬の話は削除してあります。)
◆弟マティアスの予想
最後に全く言及してなかったKeep Coolを三連単に絡めるとか、ちょっとツッコミを入れたくなったが(笑)、軸はMonterossoで已む無しとの見解。ドイツの馬には高い信頼を置けないということだ。Sir LandoやUstilagoを馬券に絡めようというところは、兄よりも賭博師気質なマティアスらしい。
◆兄ハネスの予想
最後は日本の競馬が気になって仕方がない兄ハネス(日本競馬オタ)。もともとロマンチスト馬券派とは思っていたが、自らはっきり宣言してくれると清々しい(笑)。
予想は結局Monterossoで諦めざるを得ないという感じだ。それに対しZazouがどれだけ対抗してくれるかといったところだろう。
前々回記事では挙げていなかったが、2週間前のミュンヘンで古馬混合のハンデ・リステット戦が行われており、2歳時のレーティングトップNeaticoが滑り込みでダービー前に叩いてきた。ローテーション、距離適正に不安は残るが、シーズン当初は期待馬の1頭に上がっていた馬なので、一応の注目はしておきたい。
さて私が彼らに送った予想はというと、一応以下のとおり。
Seventh Sky
Zazou
Monterosso
Lindentree
Scalo
突如登録してきたMonterossoの評価には苦しんだが3番手にした。単にドイツ競馬基地の自分としては本命に置く気になれないというのが本音なのだが、一応無理矢理こじつけた理由を言うと、まず血統的に本質的にはステイヤーではないということ。またDubawiは重馬場適正が強いが、今年のハンブルクは好天が続いて良馬場がほぼ確実だ。しかし1週間の連続開催で馬場は例年通り相当荒れており、要はこのドイツ・ダービー特有の荒れ馬場への適正があるかどうかが重要で、そこは重適正とは違うスタミナと精神力が求められる。鞍上ファロンもドイツ・ダービーは久しく乗ってないし、敢えてその対応力に疑問符を付した。
ヒネッケ兄弟からは評価を得られなかったSeventh Skyだが、私は今年のKing's Bestのトレンドと、ダービー実績のある母Sacarinaの血の力を信じて本命にした。兄SamumやSchiaparelliはデビューから活躍していたのに対し、確かにSeventh Skyは前走のトライアルに勝つまで未勝利だった。しかし徐々に成長している様子が見え、日本のエイシンフラッシュも英国のWorkforceもダービーで開花したように、今年のKing's Best産駒は遅れてやってきてこそ怖いと考える。
Zazouは、ハネスも書いている通り、これまでの成績からドイツでは明らかなNo.1である。特に母系の血統はスタミナがある。ただこれまでのレース過程をみると、2000mがベストな気がし、2200mのウニオンでは残り300mの瞬発力勝負で勝ったものの、真の持久力が求められるダービーで対応できるかには僅かに疑問符が残る。あっさり勝たれたら仕方ないが、ここは敢えて2番手に下げた。
Lindentreeは私の中のダークホースだ。ウニオンではZazouに完敗したが、早めに仕掛けてよく残った2着は評価できる。Zazouの猛烈な勝ちっぷりに目が奪われがちだが、2頭でロングスパートしていたら、もしかしたらZazouの脚が先に止まってLindentreeが差し返していた可能性も否定できない。
Scaloはヒネッケ兄弟も書いている通り、最終評価が出来ない馬だ。トライアル回顧にも書いたとおり、勝った重賞2レースは楽勝だったとはいえ、明らかに相手のレベルが低かった。そして真の試金石になるはずだったウニオンでは、とことん不利を被って何も出来ずに終わってしまう。Lando産駒は決して2400mがベストではなく、母系もマイラータイプなので、距離適正にも不安が残る。この馬の本来の力が単に上位だった場合にはあっさり勝つかもしれないし、なんだかんだでLando産駒には勝ってもらいたいという思いはあるので(賭博師の弟マティアスもその気持ちは同感だと書いてた)、一応予想の中には入れておいた。
馬券を買う場合は、自分は基本的に単勝主義者なのでSeventh Skyの単・複を1点。あとはSeventh SkyとLindentreeで上記の残りの馬にワイドで流す感じになるだろう。
レースの鍵は直線でのコース取り。全体に馬場が荒れている中で、仮柵が外される内5mくらいが王道となる。早めにこの王道に切り込める馬が有利になるが、馬場荒れの少ない大外で勝負をかけるロングスパートが利く馬が一気に差し切ることがよくあるのもドイツ・ダービー。馬の能力だけでなく、コースを熟知した騎手の経験も重要なファクターとなる。
というわけで発走は日本時間の19日午前0時30分。間もなくだ。
トライアル回顧は前々回記事に書いたので、早速ダービー予想に入ろう。
7月18日ハンブルク
第141回ドイツ・ダービー(G1, 2400m)20頭出走(補欠3頭)
(日本時間午後3時時点でKite HunterとGodotが出走取り消し確定。Lyssioが繰り上がり出走予定)
馬番 | ゲート | 馬名 | GAG | 斤量 | 馬主 | 調教師 | 騎手 |
1 | 15 | Monterosso | 98.5 | 58.0 | Darley Stud Management Co.Ltd./England | M.Johnston | K.Fallon |
2 | 1 | Zazou | 95.5 | 58.0 | WH Sport International | Mario Hofer | O.Peslier |
3 | 7 | Buzzword | 95.5 | 58.0 | Godolphin Management Co.Ltd./England | M.Al Zarooni | R.Ffrench |
4 | 8 | Scalo | 94.5 | 58.0 | Gestüt Ittlingen | Andr.Wöhler | E.Pedroza |
5 | 6 | 94.5 | 58.0 | Stall Steigenberger | Mario Hofer | J.Victoire | |
6 | 2 | Russian Tango | 94.0 | 58.0 | Rennstall Darboven | Andr.Wöhler | J.Bojko |
7 | 17 | Neatico | 94.0 | 58.0 | Gestüt Ittlingen | P.Schiergen | C.Soumillon |
8 | 5 | Lindentree | 93.0 | 58.0 | Stall Grafenberg | W.Hickst | Y.Lerner |
9 | 18 | Ustilago | 92.0 | 58.0 | Gestüt Röttgen | W.Baltromei | D.Boeuf |
10 | 11 | Baschar | 91.5 | 58.0 | Stall Litex | M.G.Mintchev | A.Crastus |
11 | 9 | Nordfalke | 91.5 | 58.0 | Gestüt Wittekindshof | P.Schiergen | A.Göritz |
12 | 16 | Keep Cool | 91.0 | 58.0 | Gestüt Winterhauch | A.Löwe | T.Hellier |
13 | 14 | Next Hight | 90.5 | 58.0 | Gestüt Ammerland | P.Schiergen | F.Minarik |
14 | 20 | Supersonic Flight | 90.5 | 58.0 | R & B Int. | M.Rulec | D.Porcu |
15 | 10 | Nightdance Paolo | 90.0 | 58.0 | Stall Hornoldendorf | P.Schiergen | Jiri Palik |
16 | 3 | Lamool | 89.0 | 58.0 | E.Sauren | Mario Hofer | A.de Vries |
17 | 4 | Seventh Sky | 89.0 | 58.0 | Stall Blankenese | P.Schiergen | A.Starke |
18 | 12 | Val Mondo | 89.0 | 58.0 | Stall Dipoli | U.Ostmann | I.Mendizabal |
19 | 13 | Jammy Shot | 89.0 | 58.0 | Stall Turffighter | Andr.Wöhler | M.Demuro |
20 | 19 | Sir Lando | 88.0 | 58.0 | Stall Perlen/Norwegen | W.Neuroth/ Norwegen | J.Fortune |
21 | 0 | 88.0 | 58.0 | Stall Elfenstein | H.-J.Gröschel | D.Bonilla | |
22 | 0 | Lyssio | 87.0 | 58.0 | Gestüt Ittlingen | P.Schiergen | G.Masure |
23 | 0 | Mulan | 85.5 | 58.0 | Stall Steigenberger | W.Hickst | A.Pietsch |
昨年ダービー予想を紹介したドイツの競馬友だちヒネッケ兄弟から、今年もたっぷりとした予想メールが届いた。今年も現場ドイツ人競馬ファンによる今年のダービー展望を、メールをくれた順番に紹介しよう。
(内容は抄訳。文脈から言及された順番を一部入れ替えたり、出走取り消し馬の話は削除してあります。)
◆弟マティアスの予想
ドイツ馬のにはスタミナに疑問が残る馬が多い。全体として今年の馬たちはあまり信頼していない。前哨戦も特に言及すべきものに乏しく、ドイツの標準でも展開の遅いレースばかりだった。
それゆえMonterossoに大きな期待をしている。この馬はいい馬で、距離も持つだろう。良馬場に合っているかは疑問が残るが、私はこの馬を気に入っている。これまで良馬場で走った内容から、ドイツの馬に対抗しても十分通用するだろう(註:今夏のドイツは好天続きで馬場が乾いている)。
Scaloは分からない馬だ。ウニオン・レネンでのレース振りは検討材料にならないからだ。
Neatico、Nordfalke、Russian Tango(いい馬ではある)は2400mは持たないと思う。
Zazouのことは高く評価しているが、スタミナについては何ともいえない。4、5着には来る馬だと思う。
英国馬のBuzzwordは、Monterossoには明らかに劣る。King Edward VII Stakesの内容から、Monterossoと比較し距離2400mが合ってるかも疑問だ。しかしチャンスは十分で、ドイツ勢にとっては怖い存在だ。私の評価としてはZazouと同じレベル。
Lindentreeは距離適正はある。ただ上位3着に入るタイプではない。
Bascharは来ると思わない。
Sir Landoは驚かす可能性のある馬として注目しておきたい。ブレーメンのトライアルの成績は忘れていい。あの時はゲートで少しイレ込んでいた。うまく条件が合えば、上位5頭以内には来る。
Ustilagoは入着の可能性はある。成績は足りないが、厩舎の調子はいい。
Val Mondoは堅実ないい馬で、私が好きなタイプだ。しかし勝ち負けとなると難しいだろう。レベル的にあと一つ足りない気がする。
Seventh Skyは、上位5頭に入るためには、ハノーファーのトライアルから更にもう一段成長しないといけないだろう。鞍上シュタルケには、血統や馬主等の関係で「お気に入り」の馬ではある。
Supersonic Flightは、長い目で見ればとても期待できる馬だ。しかし現段階ではまだ少し足りない。
Lamoolは所謂調教では走る馬。良馬場に合うタイプではない。
Next Hightは血統から距離の持つ馬だ。しかしウニオン・レネンやフランスのリステッドの内容から、この馬は来るとは思わない。
ということで、5頭選ぶと以下のようになる。
Monterosso
Scalo
Sir Lando
Zazou
Buzzword
馬単の軸はMonterossoだ。上記の上記の馬以外では、UstilagoとKeep Coolを三連単には絡めておこうと思う。
最後に全く言及してなかったKeep Coolを三連単に絡めるとか、ちょっとツッコミを入れたくなったが(笑)、軸はMonterossoで已む無しとの見解。ドイツの馬には高い信頼を置けないということだ。Sir LandoやUstilagoを馬券に絡めようというところは、兄よりも賭博師気質なマティアスらしい。
◆兄ハネスの予想
まず全体的な話として。
1.GAG98.5kgの馬がダービーに出走するなんて自分の記憶にない!これだけでもスゴイことだ。
2.但しGAGが実際の質より高く設定されているとは感じている。例えば今年の20番が88kgというのは高すぎだ。例年と比べてありえない。
Zazouはドイツ馬の中では明らかにNo.1だ。成績全体において、国際的レベルでも。ウニオン・レネンを見る限り、あと200m伸びても大丈夫だ。
Scalo…う〜ん。ウニオンの内容は切り捨てていい。その前に2レース勝っているが、同じ馬たちが相手でレベルは高くなかった。
Seventh Skyを評価する場合は、ハノーファーでのSupersonic Flightとの斤量差は考慮すべきだろう。Supersonic Flightはハースロッホで1馬身勝ちに過ぎない馬だぞ!(註:ハノーファーでは、1勝馬Supersonic Flightの斤量が58kg、未勝利Seventh Skyが55kg。またハースロッホはローカル競馬場で総じて出走馬レベルが低い)
Neaticoは面白そうだ。2週前のリステッド2着(古馬混合のハンデ準重賞2000m)の内容は評価すべきものがある。しかしMecicean産駒がダービーに合うか?
Dai Jin産駒のLindentreeはダークホースだ。
BascharとUstilago(バルトロマイ厩舎が調子いいので)は連下に押さえる。
Buzzwordだが、驚くような成績の馬ではない。しかし3着以内に来る可能性はあるだろう。
それにしても自分にとって今年のダービーに欠けているのが、出走馬に対するシンパシー(原文大文字強調)だ!単純に今年のメンバーには応援したいと思える馬がいない。私は気持ちで馬券を賭けるタイプだ。しかし今年はそんな気持ちが完全に欠落している。
そういう意味でSchorcherが出走しないのは非常に残念だ。フランスで走った内容からチャンスはかなりあると思っていただけに…。
大穴を開けそうな馬がいないわけではないが、そのような馬が勝つような場合は、それは私のダービーではない。ということで今年の賭け金は抑えめにして、凱旋門賞でエイシンフラッシュに突っ込む(註:このあとエイシンフラッシュは凱旋門賞へ行かないよとメールしときました)。
ということで私の予想。
Monterosso
Zazou
Neatico
Ustilago
Lindentree
(ドイツ馬贔屓の自分たちにとって)運がよければ、Monterossoは来ないだろう。いやいや、それはない。この馬は十分強い。
そんなことより、ディープインパクトの子が既に2頭勝ち上がってるね。でもこの時期の2歳戦はまだその後の主役を演じるものではないのかい?
最後は日本の競馬が気になって仕方がない兄ハネス(日本競馬オタ)。もともとロマンチスト馬券派とは思っていたが、自らはっきり宣言してくれると清々しい(笑)。
予想は結局Monterossoで諦めざるを得ないという感じだ。それに対しZazouがどれだけ対抗してくれるかといったところだろう。
前々回記事では挙げていなかったが、2週間前のミュンヘンで古馬混合のハンデ・リステット戦が行われており、2歳時のレーティングトップNeaticoが滑り込みでダービー前に叩いてきた。ローテーション、距離適正に不安は残るが、シーズン当初は期待馬の1頭に上がっていた馬なので、一応の注目はしておきたい。
さて私が彼らに送った予想はというと、一応以下のとおり。
Seventh Sky
Zazou
Monterosso
Lindentree
Scalo
突如登録してきたMonterossoの評価には苦しんだが3番手にした。単にドイツ競馬基地の自分としては本命に置く気になれないというのが本音なのだが、一応無理矢理こじつけた理由を言うと、まず血統的に本質的にはステイヤーではないということ。またDubawiは重馬場適正が強いが、今年のハンブルクは好天が続いて良馬場がほぼ確実だ。しかし1週間の連続開催で馬場は例年通り相当荒れており、要はこのドイツ・ダービー特有の荒れ馬場への適正があるかどうかが重要で、そこは重適正とは違うスタミナと精神力が求められる。鞍上ファロンもドイツ・ダービーは久しく乗ってないし、敢えてその対応力に疑問符を付した。
ヒネッケ兄弟からは評価を得られなかったSeventh Skyだが、私は今年のKing's Bestのトレンドと、ダービー実績のある母Sacarinaの血の力を信じて本命にした。兄SamumやSchiaparelliはデビューから活躍していたのに対し、確かにSeventh Skyは前走のトライアルに勝つまで未勝利だった。しかし徐々に成長している様子が見え、日本のエイシンフラッシュも英国のWorkforceもダービーで開花したように、今年のKing's Best産駒は遅れてやってきてこそ怖いと考える。
Zazouは、ハネスも書いている通り、これまでの成績からドイツでは明らかなNo.1である。特に母系の血統はスタミナがある。ただこれまでのレース過程をみると、2000mがベストな気がし、2200mのウニオンでは残り300mの瞬発力勝負で勝ったものの、真の持久力が求められるダービーで対応できるかには僅かに疑問符が残る。あっさり勝たれたら仕方ないが、ここは敢えて2番手に下げた。
Lindentreeは私の中のダークホースだ。ウニオンではZazouに完敗したが、早めに仕掛けてよく残った2着は評価できる。Zazouの猛烈な勝ちっぷりに目が奪われがちだが、2頭でロングスパートしていたら、もしかしたらZazouの脚が先に止まってLindentreeが差し返していた可能性も否定できない。
Scaloはヒネッケ兄弟も書いている通り、最終評価が出来ない馬だ。トライアル回顧にも書いたとおり、勝った重賞2レースは楽勝だったとはいえ、明らかに相手のレベルが低かった。そして真の試金石になるはずだったウニオンでは、とことん不利を被って何も出来ずに終わってしまう。Lando産駒は決して2400mがベストではなく、母系もマイラータイプなので、距離適正にも不安が残る。この馬の本来の力が単に上位だった場合にはあっさり勝つかもしれないし、なんだかんだでLando産駒には勝ってもらいたいという思いはあるので(賭博師の弟マティアスもその気持ちは同感だと書いてた)、一応予想の中には入れておいた。
馬券を買う場合は、自分は基本的に単勝主義者なのでSeventh Skyの単・複を1点。あとはSeventh SkyとLindentreeで上記の残りの馬にワイドで流す感じになるだろう。
レースの鍵は直線でのコース取り。全体に馬場が荒れている中で、仮柵が外される内5mくらいが王道となる。早めにこの王道に切り込める馬が有利になるが、馬場荒れの少ない大外で勝負をかけるロングスパートが利く馬が一気に差し切ることがよくあるのもドイツ・ダービー。馬の能力だけでなく、コースを熟知した騎手の経験も重要なファクターとなる。
というわけで発走は日本時間の19日午前0時30分。間もなくだ。
2010年07月04日
君に送る言葉 〜 ありがとう、オグリキャップ
正直に言おう。君は僕にとって最初は悪役だった。
1988年の日本ダービーで大学の悪友に誘われサクラチヨノオーの単勝馬券500円を買った時から、僕の競馬人生は始まった。しかし何の予備知識もない僕が次に意識したレースは、その2週間後のG1宝塚記念だった。その間の日曜日に行われていたニュージーランド・トロフィーのことなど気付く由もない。地方からやって来た芦毛の若武者が、7馬身差のぶっ千切りで中央4連勝目を果たしていたなど、僕は全く知らなかった。宝塚記念で僕は芦毛の苦労馬タマモクロスの単勝を500円買い、2度続けて賭けた馬が勝つ喜びを覚える。
とはいえ、その時の僕は所詮駆け出しの競馬者。面白いのはG1だけで、特に夏の間は敢えて見ておく必要もないもの判断し、一旦競馬を忘れれていた。再び気持ちが戻ってきたのはようやく秋の天皇賞のときだ。即ち、高松宮杯、毎日王冠で(旧齢)4歳馬にして古馬を捻ってきた君の活躍などまるで気付きもせず、僕に競馬への扉を開いた春の2頭のうちダービー馬が長期休養から出てこないとなれば、応援するのは必然、タマモクロスということになった。当時存在した単枠指定で僕のヒーローと人気を分け合う君は、僕の目には単なる成り上がり者の悪役に過ぎなかったのだよ。
君より1年先輩の彼は、成り上がりの若造である君を返り討ちにし、続くジャパンカップでもアメリカ馬ペイザバトラーとの攻防で君に主演の座を与えるような隙を与えなかった。僕にとって芦毛のヒーローは紛れもなくタマモクロスだった。
だから引退の花道である有馬記念で彼が君に敗れたときは、かなり悔しかった。だが同時に、彼から芦毛色のバトンを渡された君は、容易に他の馬に負けてはならない存在になったと、勝手ながらに思わせてもらった。
翌春は故障で棒に振ってしまったが、復帰したオールカマーでの楽勝は当然として、春の天皇賞と宝塚記念を勝ち秋も主役の座を狙おうと現れたイナリワンとの攻防を制した毎日王冠では、タマモクロスを破ってきた君のプライドを強烈に感じさせてもらった。そして続く天皇賞(秋)でのスーパークリークへの惜敗、マイルチャンピオンシップでのバンブーメモリーとの鼻差の勝負、連闘で臨み世界レコードとなった猛烈なジャパンカップでホーリックスを僅かに捕え切れなかった悔しい2着。君が繰り広げたそれらの死闘は、僕の中でタマモクロスの後継としての君の位置づけを完全に消し去り、君こそが僕にとっての競馬となった。
決して格好いいわけではない。少し潰れたような無骨な顔。どちらかというとまだ黒っぽくて綺麗とはいえない芦毛の姿。走り方だってまったくエレガントではない。君はいつだって荒々しくゴールへ向かって走りこんでくるのだ。そして、人も馬も威圧するような強い意志と力がほとばしった目。僕のとある友人が言った。「あれはもう人の目だよ」と。
有馬記念ではもう君しか見ていなかった。だから君が初めて力尽きたように敗れた姿は悲しかった。だが誰もが分かっていた。あの秋の無茶なローテーションで、しかもその全てで死闘を繰り返してきたあとでは、どんなすごい奴だって余力は残ってないことを。でも悔しかった。君が自分の力を出し切れずに負けてしまったのが悔しかった。君はこんなんじゃないはずだ。そして翌日のスポーツ紙に君が涙を流している写真が載った。僕たちは誰よりも君自身が悔しがっていることを知った。やはり君は君だった。
翌春、安田記念で快勝したときはさすがだと思ったよ。でも宝塚記念でどこか歯車が狂いだした。そして秋。君の中から何かがポロリと落ちてしまったようだった。天皇賞(秋)、ジャパンカップ、そこには昨年、一昨年に見ていた荒々しい君がいなくなっていた。燃え尽きてしまったのか……。ジャパンカップのあと、僕は連複で遊んだ馬券を当てていたにもかかわらず、府中の芝を見つめながらどこか虚しい気分に陥っていたのを覚えている。
1990年12月23日有馬記念。中山競馬場には18万人以上の観衆が集まっていた。僕もその中の一人だった。馬券は前日のうちに後楽園のWINSで買ってあった。この年の4歳馬メジロライアンとホワイトストーンも好きで、君の引退後を担うのは彼らだと思っていたから、それぞれの単勝と複勝を500円ずつ買った。そして僕を決定的に競馬へと結びつけてくれた君との別れを記念し、単勝8番の馬券を1000円買った。思えば単枠指定のないジャパンカップを除き、僕が君と出会ってから初めて君がその単枠指定から外された馬券だった。でもそんなことは関係ない。僕は君と出会った証を残しておきたかっただけなのだから。確かサンスポで高橋源一郎がハートマークというふざけた印を付けていたけど、君の単勝馬券を買った人の多くはみんなそんな気持ちだったにちがいない。
君の最後のゲートが開いた。僕は後ろのからのギューギューとした圧力に押されながらも、安い一眼レフカメラを持って坂の途中の埒にしがみ付き、君の最後の姿を追っていた。
最終コーナー、僕はあの瞬間を今でも覚えている。「ただ無事に帰ってきてくれればいい」、そう思っていた自分の意識があっという間に消し飛び、外を回って先団に向かってきた君を見て、「オグリが来た!オグリが来たっ!」と叫んだのだ。言い知れぬ胸の高鳴り。僕はカメラを構え、君だけを目掛けてシャッターを切った。そして僕の前をとおり過ぎるとカメラを下ろし、僕が次世代を期待したメジロライアンとホワイトストーンが迫りくる姿にも興奮しながら、君に向かって「オグリ頑張れ!頑張れーっ!」と必死に叫んだんだ。
そして君は勝った。最後にもう一度、君は僕の知っている君を見せてくれた。恥ずかしながら、僕の目は明らかに熱くなっていた。こんなに涙もろかったっけかと、頭の隅にいる冷静な自分が苦笑いしながらも、僕は目頭にこみ上げる熱いものを押さえ切れなかった。
1月の引退式。僕は現場には行かなかったが、写真で君の姿を見たとき、君の毛色が驚くほど白くなっていて、ああ終わったんだなと実感したよ。
種牡馬としての君は結局振るわなかった。血統的に三流とは最初から言われていたことで、そのような結果は冷静に受け止めていた。と同時に、つくづく君は心だけで走ってたんだなと再認識したよ。そういう意味で君は、血統のスポーツとしての競馬の常識をも打ち破っていたんだな。どの馬の仔でも、どの馬の親でもない。君は紛れもなく君なんだと(まあお母さんのホワイトナルビーの血は認めるけどね)。
君が怪我でこの世を去るというのは、なんとなくらしくないなとは思う。最期を痛い思いで迎えたのは辛かったろう。どうか安らかに眠ってくれ。
競馬を始めた最初に君と出会えて本当によかった。これまで多くの馬を見てきて、もちろん君のような奴とは一度も出会っていないし、きっとこれからも出会うことはないだろう。そういう意味で君は僕にとって一生特別な存在だ。だが、事実上君とともに僕の競馬人生が始まったお陰で、僕は競走馬たちの走る意思というものを最初から知ることが出来た。だからこれまでも、そしてこれからも、競走馬たちとの出会いを繰り返し楽しむことができる。
だから心を込めて言おう。
ありがとう、ありがとう、オグリキャップ
1988年の日本ダービーで大学の悪友に誘われサクラチヨノオーの単勝馬券500円を買った時から、僕の競馬人生は始まった。しかし何の予備知識もない僕が次に意識したレースは、その2週間後のG1宝塚記念だった。その間の日曜日に行われていたニュージーランド・トロフィーのことなど気付く由もない。地方からやって来た芦毛の若武者が、7馬身差のぶっ千切りで中央4連勝目を果たしていたなど、僕は全く知らなかった。宝塚記念で僕は芦毛の苦労馬タマモクロスの単勝を500円買い、2度続けて賭けた馬が勝つ喜びを覚える。
とはいえ、その時の僕は所詮駆け出しの競馬者。面白いのはG1だけで、特に夏の間は敢えて見ておく必要もないもの判断し、一旦競馬を忘れれていた。再び気持ちが戻ってきたのはようやく秋の天皇賞のときだ。即ち、高松宮杯、毎日王冠で(旧齢)4歳馬にして古馬を捻ってきた君の活躍などまるで気付きもせず、僕に競馬への扉を開いた春の2頭のうちダービー馬が長期休養から出てこないとなれば、応援するのは必然、タマモクロスということになった。当時存在した単枠指定で僕のヒーローと人気を分け合う君は、僕の目には単なる成り上がり者の悪役に過ぎなかったのだよ。
君より1年先輩の彼は、成り上がりの若造である君を返り討ちにし、続くジャパンカップでもアメリカ馬ペイザバトラーとの攻防で君に主演の座を与えるような隙を与えなかった。僕にとって芦毛のヒーローは紛れもなくタマモクロスだった。
だから引退の花道である有馬記念で彼が君に敗れたときは、かなり悔しかった。だが同時に、彼から芦毛色のバトンを渡された君は、容易に他の馬に負けてはならない存在になったと、勝手ながらに思わせてもらった。
翌春は故障で棒に振ってしまったが、復帰したオールカマーでの楽勝は当然として、春の天皇賞と宝塚記念を勝ち秋も主役の座を狙おうと現れたイナリワンとの攻防を制した毎日王冠では、タマモクロスを破ってきた君のプライドを強烈に感じさせてもらった。そして続く天皇賞(秋)でのスーパークリークへの惜敗、マイルチャンピオンシップでのバンブーメモリーとの鼻差の勝負、連闘で臨み世界レコードとなった猛烈なジャパンカップでホーリックスを僅かに捕え切れなかった悔しい2着。君が繰り広げたそれらの死闘は、僕の中でタマモクロスの後継としての君の位置づけを完全に消し去り、君こそが僕にとっての競馬となった。
決して格好いいわけではない。少し潰れたような無骨な顔。どちらかというとまだ黒っぽくて綺麗とはいえない芦毛の姿。走り方だってまったくエレガントではない。君はいつだって荒々しくゴールへ向かって走りこんでくるのだ。そして、人も馬も威圧するような強い意志と力がほとばしった目。僕のとある友人が言った。「あれはもう人の目だよ」と。
有馬記念ではもう君しか見ていなかった。だから君が初めて力尽きたように敗れた姿は悲しかった。だが誰もが分かっていた。あの秋の無茶なローテーションで、しかもその全てで死闘を繰り返してきたあとでは、どんなすごい奴だって余力は残ってないことを。でも悔しかった。君が自分の力を出し切れずに負けてしまったのが悔しかった。君はこんなんじゃないはずだ。そして翌日のスポーツ紙に君が涙を流している写真が載った。僕たちは誰よりも君自身が悔しがっていることを知った。やはり君は君だった。
翌春、安田記念で快勝したときはさすがだと思ったよ。でも宝塚記念でどこか歯車が狂いだした。そして秋。君の中から何かがポロリと落ちてしまったようだった。天皇賞(秋)、ジャパンカップ、そこには昨年、一昨年に見ていた荒々しい君がいなくなっていた。燃え尽きてしまったのか……。ジャパンカップのあと、僕は連複で遊んだ馬券を当てていたにもかかわらず、府中の芝を見つめながらどこか虚しい気分に陥っていたのを覚えている。
1990年12月23日有馬記念。中山競馬場には18万人以上の観衆が集まっていた。僕もその中の一人だった。馬券は前日のうちに後楽園のWINSで買ってあった。この年の4歳馬メジロライアンとホワイトストーンも好きで、君の引退後を担うのは彼らだと思っていたから、それぞれの単勝と複勝を500円ずつ買った。そして僕を決定的に競馬へと結びつけてくれた君との別れを記念し、単勝8番の馬券を1000円買った。思えば単枠指定のないジャパンカップを除き、僕が君と出会ってから初めて君がその単枠指定から外された馬券だった。でもそんなことは関係ない。僕は君と出会った証を残しておきたかっただけなのだから。確かサンスポで高橋源一郎がハートマークというふざけた印を付けていたけど、君の単勝馬券を買った人の多くはみんなそんな気持ちだったにちがいない。
君の最後のゲートが開いた。僕は後ろのからのギューギューとした圧力に押されながらも、安い一眼レフカメラを持って坂の途中の埒にしがみ付き、君の最後の姿を追っていた。
最終コーナー、僕はあの瞬間を今でも覚えている。「ただ無事に帰ってきてくれればいい」、そう思っていた自分の意識があっという間に消し飛び、外を回って先団に向かってきた君を見て、「オグリが来た!オグリが来たっ!」と叫んだのだ。言い知れぬ胸の高鳴り。僕はカメラを構え、君だけを目掛けてシャッターを切った。そして僕の前をとおり過ぎるとカメラを下ろし、僕が次世代を期待したメジロライアンとホワイトストーンが迫りくる姿にも興奮しながら、君に向かって「オグリ頑張れ!頑張れーっ!」と必死に叫んだんだ。
そして君は勝った。最後にもう一度、君は僕の知っている君を見せてくれた。恥ずかしながら、僕の目は明らかに熱くなっていた。こんなに涙もろかったっけかと、頭の隅にいる冷静な自分が苦笑いしながらも、僕は目頭にこみ上げる熱いものを押さえ切れなかった。
1月の引退式。僕は現場には行かなかったが、写真で君の姿を見たとき、君の毛色が驚くほど白くなっていて、ああ終わったんだなと実感したよ。
種牡馬としての君は結局振るわなかった。血統的に三流とは最初から言われていたことで、そのような結果は冷静に受け止めていた。と同時に、つくづく君は心だけで走ってたんだなと再認識したよ。そういう意味で君は、血統のスポーツとしての競馬の常識をも打ち破っていたんだな。どの馬の仔でも、どの馬の親でもない。君は紛れもなく君なんだと(まあお母さんのホワイトナルビーの血は認めるけどね)。
君が怪我でこの世を去るというのは、なんとなくらしくないなとは思う。最期を痛い思いで迎えたのは辛かったろう。どうか安らかに眠ってくれ。
競馬を始めた最初に君と出会えて本当によかった。これまで多くの馬を見てきて、もちろん君のような奴とは一度も出会っていないし、きっとこれからも出会うことはないだろう。そういう意味で君は僕にとって一生特別な存在だ。だが、事実上君とともに僕の競馬人生が始まったお陰で、僕は競走馬たちの走る意思というものを最初から知ることが出来た。だからこれまでも、そしてこれからも、競走馬たちとの出会いを繰り返し楽しむことができる。
だから心を込めて言おう。
ありがとう、ありがとう、オグリキャップ
2010年06月27日
独ダービーのトライアルが一通り終わったところで
昨晩ハノーファーで行われたトライアルが終わったところで、外国からの出走馬を除き今年のダービー候補はほぼ出揃った。後述するとおりまだ1頭、中1週で狙おうとしている馬がいることはいるが、とりあえず前哨戦をYouTube映像で振り返ってみよう。
5月24日ミュンヘン
バヴァリアン・クラシック(G3)2000m − Scalo
(いつ聞いてもミュンヘンの実況はうざい…。)
例年なら本番1ヶ月前に当たるステップレースだが、今年は祭日に合わせた前倒しとダービーの後ろ倒しで、間にもう一回走れるスケジュールで行われた。勝ったScaloにとっては、前走のバンクハウス・メッツラー春季賞(G3)で勝負をつけた相手が殆どで、しかもそのとき力関係が定まってなかった同厩同馬主のLangleyをペースメーカーに立てた、完全にお膳立てされたレースだった。それでいて直線入り口で前が開かず、一瞬ヒヤッとしたシーンがあったが、外へ出してからは先に抜け出していたWheredreamsareをきっちり差し切り、力の違いを見せ付けている。とはいえ、ここで本当の実力が試されたとはおよそ言い難いのは事実だ。
6月13日ケルン
オッペンハイム・ウニオン・レネン(G2)2200m − Zazou
(左右で英独語同時実況とかうざすぎるだろ…。)
1番人気となったScaloはここが真の試金石となるはずだったが、直線で内を突こうとする度に、逃げていたNext Hightがよれて進路を塞ぎ、一瞬躓く危うい場面があるなど、全くレースをすることが出来なかった。それゆえこの5着という結果は全く参考にならない。しかしスムーズに抜け出すことが出来ていたら勝てたかとなると、またそういう話ではない。Zazouがそんなたらればを言わせないほど圧勝したからだ。Zazouは春緒戦ドクター・ブッシュ・メモリアル(G3)を完勝した後、仏1000ギニーへ向かい、最後方からよく追い込んで5着。そして挑んだこのウニオンでも、最後方から直線でしばし進路が開かなかったものの、先に外を抜け出したLindentreeの更にその外へ持ち出してスパートをかけての完勝で、ぐうの音も出ないほどの強さであった。ダービー本番のゼッケン1番は、まず間違いなくこの馬になるだろう。
6月18日ブレーメン
swbダービー・トライアル(LR)2100m − Russian Tango
残念ながらYouTubeやDailymotionでも映像発見できず。
メールミュルヘンス・レネン(G2・独2000ギニー)3着のRussian Tangoとデビューから平場2連勝で前走がトップハンデで完勝だったLyssioが人気を分け合った。レースはAltair Starが作った緩いペースに、Lyssioが中団の内、Russian Tangoが後方で、馬群は密に固まった展開。そして長い600mの直線に入ると同時にスプリントとなって、外から追い込んだRussian Tangoが、内で叩き合うVal MondoとAltair Starを僅かに交わし勝利。Lyssioは切れの勝負に敗れた形で6着だが、勝ち馬からは2馬身離れていない。2100mレースでありながら、実質的には600mのロングスパートの競り合いであり、ハンブルクのハードな消耗戦の予行練習として適した内容だったかは疑問が残る。
6月26日ハノーファー
アクツィオン・ゾンネンシュトラール・ダービー・トライアル(LR)2400m − Seventh Sky
ドイツの変動祭日によって開催日が固定されず、直行だったり間にもう1レース入ったりするが、近年ここの勝者が3頭もダービーを勝っているので、決して軽視できないレースだ。特に今年はダービー後ろ倒しにより、中2週の最終便となり、距離も2400mとなって、ローテーション的にも距離経験においても本番へ向けた好条件を備えている。
1番人気には楽勝デビューを果たしたシュレンダーハーン牧場のSolidaro。だが1戦1勝馬で1.3倍はどう考えても被りすぎだ。結局後方を進んで直線多少伸びるも勝ち負けには絡めず5着。メンバーに手薄感があったとはいえ、ドイツの競馬オヤジたちはもう少し修行しろと。
勝ったSeventh SkyはSamum、Schiaparelliという2頭のダービー馬の半弟で、デビュー戦は2.2倍と期待を集めていた。しかし2着、3着、3着と勝ちきれないレースが続き、ここでは4番人気に人気を落としていた。だが前走は直線でなかなか前が開かない展開ながら1馬身¼差の3着まで詰め寄っており、馬の成長は見えていた。そして今回は先団から早めに抜け出して馬場のいい外へ向かい、更に外埒一杯に伸びてきたSupersonic Flightを押さえ込んでの勝利。本番にうまく間に合ったと見ていい。
ざっと振り返ってみたところで1番人気になりそうなのはというと、やはりウニオンを圧勝したZazouであろう。2歳で5戦しているあたりがあまり近年のダービー候補らしくなく、当初は早熟短距離系かと思っていた。だがハイレベルなところを戦っていただけあって、3歳になっても素質上位の実力を見せている。ただ父がShamardalで母Zaza Topもマイルから2000mの活躍馬だったので、2400mにはやや不安も残る。もっとも母父がLomitasだから、そちらの血が強く出てくれば距離もこなせるだろう。私のイメージとしては2歳チャンピオンでウニオンを勝った2006年のAspectusに被るので、本番であっさり裏切る可能性も否定できない。
ウニオンで消化不良となったScaloは、とにかく分からない。父のLandoには、そろそろダービー馬を出してもらいたいという意味で期待したいのだが、母系は短距離に寄っており、ちょっと微妙ではある。ただ世代内での実力が上位であることは間違いないので、距離をこなしたときに多頭数でのせめぎ合いにどれだけ耐えられるかだろう。
ブレーメンのトライアルを勝ったRussian Tangoは父がミスプロ系の短距離実績馬Tertullian。産駒は昨年のIrianに代表されるように、マイルから2000mに実績がある。しかし2400mとなるとなんとも。母のRussian Sambaは2000m前後まで距離をこなしているが、距離不安は確実に残る。ただメールミュルヘンスでもマイルの流れで一旦振り落とされかけたところからジリジリ詰めて3着に粘りこんだり、ブレーメンでもラスト600mの凌ぎ合いを最後に差し切っているので、最後にスタミナを残せる展開なら勝ち負けに絡む可能性もあるか。
ブレーメン2着のVal MondoもLando産駒で、ここにもダービー後継候補がいるのだけど、この馬の母はScalo以上に短距離型のBig Shaffle産駒だし、距離不安は相変わらず残る。そもそもLando自身が現役時代良馬場専用機で、勝ったダービーはネレイーデ以来のレコード更新となる高速馬場だった。それゆえ産駒も重い馬場での実績馬が少なく、2000m前後の良馬場で能力を発揮するタイプが多い。そういう意味でLando産駒のダービー制覇ってなかなか難しいなと。
ブレーメンで期待を裏切ったLyssioはMotivator産駒で、元々牧場の期待も大きかったと思われる。ただダービーを勝つにはスタミナだけでなく、馬群から抜け出す一瞬の切れも要求される。ブレーメンのレースを見る限り、この馬にはその切れがまだ備わっていない。今のところ物足りないというのが正直な感想だ。
ハノーファーを勝ったSeventh Skyは、上述したとおり2頭のダービー馬の弟で、母のダービー適正は折り紙つき。そして父が今年のダービートレンドとなっているKing's Best。日本のエイシンフラッシュも英国のWorkforceも、徐々に力を付けていって本番を制したタイプだ。その意味でSeventh Skyも本番をターゲットに仕上がってきたといえるだろう。
ここに挙げたトライアル組のほかに、あと1頭来週末のハンデ戦をステップに本番を狙っている馬がいる。Quilaliである。本当はハノーファーに参戦する予定だったが調整過程で一頓挫あり、1週スケジュールが遅れてしまったのだ。今年初戦を着差以上に楽勝して厩舎の期待も高く、なんとか本番に間に合わせたいようだ。しかしこのスケジュールの狂いを取り戻せるかは、とりあえず今週末のレース結果を見てからだろう。
ドイツ・ダービー発走は7月18日。予想を立てるにはまだ早すぎるので、直前になったら改めて記事を書く。その際は、昨年も予想してもらったドイツ人の競馬オタ友だちにも、また予想を送ってもらうつもりだ。
5月24日ミュンヘン
バヴァリアン・クラシック(G3)2000m − Scalo
(いつ聞いてもミュンヘンの実況はうざい…。)
例年なら本番1ヶ月前に当たるステップレースだが、今年は祭日に合わせた前倒しとダービーの後ろ倒しで、間にもう一回走れるスケジュールで行われた。勝ったScaloにとっては、前走のバンクハウス・メッツラー春季賞(G3)で勝負をつけた相手が殆どで、しかもそのとき力関係が定まってなかった同厩同馬主のLangleyをペースメーカーに立てた、完全にお膳立てされたレースだった。それでいて直線入り口で前が開かず、一瞬ヒヤッとしたシーンがあったが、外へ出してからは先に抜け出していたWheredreamsareをきっちり差し切り、力の違いを見せ付けている。とはいえ、ここで本当の実力が試されたとはおよそ言い難いのは事実だ。
6月13日ケルン
オッペンハイム・ウニオン・レネン(G2)2200m − Zazou
(左右で英独語同時実況とかうざすぎるだろ…。)
1番人気となったScaloはここが真の試金石となるはずだったが、直線で内を突こうとする度に、逃げていたNext Hightがよれて進路を塞ぎ、一瞬躓く危うい場面があるなど、全くレースをすることが出来なかった。それゆえこの5着という結果は全く参考にならない。しかしスムーズに抜け出すことが出来ていたら勝てたかとなると、またそういう話ではない。Zazouがそんなたらればを言わせないほど圧勝したからだ。Zazouは春緒戦ドクター・ブッシュ・メモリアル(G3)を完勝した後、仏1000ギニーへ向かい、最後方からよく追い込んで5着。そして挑んだこのウニオンでも、最後方から直線でしばし進路が開かなかったものの、先に外を抜け出したLindentreeの更にその外へ持ち出してスパートをかけての完勝で、ぐうの音も出ないほどの強さであった。ダービー本番のゼッケン1番は、まず間違いなくこの馬になるだろう。
6月18日ブレーメン
swbダービー・トライアル(LR)2100m − Russian Tango
残念ながらYouTubeやDailymotionでも映像発見できず。
メールミュルヘンス・レネン(G2・独2000ギニー)3着のRussian Tangoとデビューから平場2連勝で前走がトップハンデで完勝だったLyssioが人気を分け合った。レースはAltair Starが作った緩いペースに、Lyssioが中団の内、Russian Tangoが後方で、馬群は密に固まった展開。そして長い600mの直線に入ると同時にスプリントとなって、外から追い込んだRussian Tangoが、内で叩き合うVal MondoとAltair Starを僅かに交わし勝利。Lyssioは切れの勝負に敗れた形で6着だが、勝ち馬からは2馬身離れていない。2100mレースでありながら、実質的には600mのロングスパートの競り合いであり、ハンブルクのハードな消耗戦の予行練習として適した内容だったかは疑問が残る。
6月26日ハノーファー
アクツィオン・ゾンネンシュトラール・ダービー・トライアル(LR)2400m − Seventh Sky
ドイツの変動祭日によって開催日が固定されず、直行だったり間にもう1レース入ったりするが、近年ここの勝者が3頭もダービーを勝っているので、決して軽視できないレースだ。特に今年はダービー後ろ倒しにより、中2週の最終便となり、距離も2400mとなって、ローテーション的にも距離経験においても本番へ向けた好条件を備えている。
1番人気には楽勝デビューを果たしたシュレンダーハーン牧場のSolidaro。だが1戦1勝馬で1.3倍はどう考えても被りすぎだ。結局後方を進んで直線多少伸びるも勝ち負けには絡めず5着。メンバーに手薄感があったとはいえ、ドイツの競馬オヤジたちはもう少し修行しろと。
勝ったSeventh SkyはSamum、Schiaparelliという2頭のダービー馬の半弟で、デビュー戦は2.2倍と期待を集めていた。しかし2着、3着、3着と勝ちきれないレースが続き、ここでは4番人気に人気を落としていた。だが前走は直線でなかなか前が開かない展開ながら1馬身¼差の3着まで詰め寄っており、馬の成長は見えていた。そして今回は先団から早めに抜け出して馬場のいい外へ向かい、更に外埒一杯に伸びてきたSupersonic Flightを押さえ込んでの勝利。本番にうまく間に合ったと見ていい。
ざっと振り返ってみたところで1番人気になりそうなのはというと、やはりウニオンを圧勝したZazouであろう。2歳で5戦しているあたりがあまり近年のダービー候補らしくなく、当初は早熟短距離系かと思っていた。だがハイレベルなところを戦っていただけあって、3歳になっても素質上位の実力を見せている。ただ父がShamardalで母Zaza Topもマイルから2000mの活躍馬だったので、2400mにはやや不安も残る。もっとも母父がLomitasだから、そちらの血が強く出てくれば距離もこなせるだろう。私のイメージとしては2歳チャンピオンでウニオンを勝った2006年のAspectusに被るので、本番であっさり裏切る可能性も否定できない。
ウニオンで消化不良となったScaloは、とにかく分からない。父のLandoには、そろそろダービー馬を出してもらいたいという意味で期待したいのだが、母系は短距離に寄っており、ちょっと微妙ではある。ただ世代内での実力が上位であることは間違いないので、距離をこなしたときに多頭数でのせめぎ合いにどれだけ耐えられるかだろう。
ブレーメンのトライアルを勝ったRussian Tangoは父がミスプロ系の短距離実績馬Tertullian。産駒は昨年のIrianに代表されるように、マイルから2000mに実績がある。しかし2400mとなるとなんとも。母のRussian Sambaは2000m前後まで距離をこなしているが、距離不安は確実に残る。ただメールミュルヘンスでもマイルの流れで一旦振り落とされかけたところからジリジリ詰めて3着に粘りこんだり、ブレーメンでもラスト600mの凌ぎ合いを最後に差し切っているので、最後にスタミナを残せる展開なら勝ち負けに絡む可能性もあるか。
ブレーメン2着のVal MondoもLando産駒で、ここにもダービー後継候補がいるのだけど、この馬の母はScalo以上に短距離型のBig Shaffle産駒だし、距離不安は相変わらず残る。そもそもLando自身が現役時代良馬場専用機で、勝ったダービーはネレイーデ以来のレコード更新となる高速馬場だった。それゆえ産駒も重い馬場での実績馬が少なく、2000m前後の良馬場で能力を発揮するタイプが多い。そういう意味でLando産駒のダービー制覇ってなかなか難しいなと。
ブレーメンで期待を裏切ったLyssioはMotivator産駒で、元々牧場の期待も大きかったと思われる。ただダービーを勝つにはスタミナだけでなく、馬群から抜け出す一瞬の切れも要求される。ブレーメンのレースを見る限り、この馬にはその切れがまだ備わっていない。今のところ物足りないというのが正直な感想だ。
ハノーファーを勝ったSeventh Skyは、上述したとおり2頭のダービー馬の弟で、母のダービー適正は折り紙つき。そして父が今年のダービートレンドとなっているKing's Best。日本のエイシンフラッシュも英国のWorkforceも、徐々に力を付けていって本番を制したタイプだ。その意味でSeventh Skyも本番をターゲットに仕上がってきたといえるだろう。
ここに挙げたトライアル組のほかに、あと1頭来週末のハンデ戦をステップに本番を狙っている馬がいる。Quilaliである。本当はハノーファーに参戦する予定だったが調整過程で一頓挫あり、1週スケジュールが遅れてしまったのだ。今年初戦を着差以上に楽勝して厩舎の期待も高く、なんとか本番に間に合わせたいようだ。しかしこのスケジュールの狂いを取り戻せるかは、とりあえず今週末のレース結果を見てからだろう。
ドイツ・ダービー発走は7月18日。予想を立てるにはまだ早すぎるので、直前になったら改めて記事を書く。その際は、昨年も予想してもらったドイツ人の競馬オタ友だちにも、また予想を送ってもらうつもりだ。
2010年06月24日
蔵出し ヨーロッパの競馬場写真
府中開催も終わり、とりあえず競馬撮影が一段落ついているところで(30日の大井・帝王賞は参戦を考えているが、如何せん平日で仕事が終わるか分からないし、そもそも梅雨で天候が怪しいし)、なんとなくアップする機会を逸していたヨーロッパ滞在時の各競馬場写真をフォト蔵にアップしてみた。
→Racecourses
壁紙にも使えるように2100x1400pxにしてあります。
選別してみて改めて景色写真をちゃんと撮ってる競馬場とそうでないとこがあることに気付く。例えばロンシャンなんかは専らレース写真に集中してしまっていて、壁紙によさそうな写真が殆どなかった。ハンブルクやバーデンバーデンもそう。大きな開催で狙い定めて行くと、周りをゆっくり見ている余裕がなくなってしまってたんだなと。そういう開催では人ががやがやしてしまってるというのもあったし。
そういう意味では日本の競馬場もなかなか難しい。今回はアップしてないが、今後国内でも意識して競馬場の風景を撮りたいと思う。
以下、サンプル数枚。
さて、今週末は宝塚記念であると同時に、ドイツではハノーファーでダービートライアルが行われ、それで一通りの本番出走馬が出揃う。このところドイツ競馬レポしてないので、来週にはダービー展望書こうかなと。
→Racecourses
壁紙にも使えるように2100x1400pxにしてあります。
選別してみて改めて景色写真をちゃんと撮ってる競馬場とそうでないとこがあることに気付く。例えばロンシャンなんかは専らレース写真に集中してしまっていて、壁紙によさそうな写真が殆どなかった。ハンブルクやバーデンバーデンもそう。大きな開催で狙い定めて行くと、周りをゆっくり見ている余裕がなくなってしまってたんだなと。そういう開催では人ががやがやしてしまってるというのもあったし。
そういう意味では日本の競馬場もなかなか難しい。今回はアップしてないが、今後国内でも意識して競馬場の風景を撮りたいと思う。
以下、サンプル数枚。
さて、今週末は宝塚記念であると同時に、ドイツではハノーファーでダービートライアルが行われ、それで一通りの本番出走馬が出揃う。このところドイツ競馬レポしてないので、来週にはダービー展望書こうかなと。