2012年10月09日

【ケルン競馬場伝貧問題】現状更なる感染馬はなし


 Erstes Aufatmen in Sachen Quarantäne (German Racing)
 ”隔離検疫に関する件でまずはほっと一息”

 10月1日に発覚したケルン競馬場における伝染性貧血症の件、場内厩舎にて管理する全292頭の馬に対し行った隔離検疫だが、全馬陰性という結果が出た。まずは関係者みなほっと一息といったところであろう。

 但し、これは飽くまで感染症に対する抗体が血液中に出ていないということであり、即ち現時点で発症やその兆候を見せている馬がいないということである。伝染性貧血症の潜伏期間は3日〜3ヶ月ということなので、条例に基づき予定通り3ヶ月間は変わらず全馬競馬場敷地内から出ることは禁じられている。隔離状態が解除されるのは、3ヶ月後の再検査で再度全馬陰性という結果が出る必要がある。

 取り敢えずDanedreamもこの中に含まれていることになるので、彼女も今のところ無事であることが確認されたわけだ。

 昨日の凱旋門賞では、日本の競馬ファンの殆どが直線残り300mで歓声をあげ、残り50mで悲鳴をあげたのであろう。まあ私も確かに興奮させられた。しかしドイツ競馬基地としてはやはり「それでもDanedreamはその5馬身前にいたのだよ。」と妄想せざるをえない。恐らくドイツの競馬ファンたちも同じことを思っているに違いない。

 尚、オルフェーヴルの夢を破ったSolemiaがそれまでに勝っていた重賞はG2のコリーダ賞だけだ。

 コリーダ……

 過去に牝馬として凱旋門賞を連覇した唯一の馬の名である。コリーダ以来の偉業への挑戦を絶たれたDanedreamの無念は、コリーダ賞勝馬Solemiaに宿っていた。そういうことなのだろう。
posted by 芝周志 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2012年10月04日

伝染性貧血症事件勃発後のシールゲン調教師への取材記事


 10月1日に発覚したケルン競馬場在厩馬の伝染性貧血症感染による競馬場封鎖の件、3日のケルン地元紙Kölnische Rundschauに、Danedream管理調教師シールゲンへの取材記事が掲載されていた。

 Verlängerung für Danedream? (Kölnische Rundschau)
 ”Danedreamは(現役)延期?”

 事件勃発翌朝、取材記者が競馬場を訪れたとき、そこが封鎖されている競馬場とは分からない光景であったという。というのも、普段通りに馬房が開かれ、調教が行われていたからだ。

 「馬たちを運動させてあげないといけない。馬房の中に立たせっ放しにしておくわけにはいかないからね。」とシールゲン師は言う。

 Danedreamについては、「彼女が感染していないことを祈るばかりだ。」とのこと。感染馬を管理していたヴァイス厩舎とシールゲン厩舎は100mほどしか離れていないそうだ。敷地構造的にヴァイス厩舎は4コーナー脇の施設なのだろう。

 「(凱旋門賞では)賞金をつかむチャンスは十分にあった。彼女は最高の状態だからね。」
 「まさにカタストローフだよ。」

 ただ年内の出走が不可能になったことで、Danedreamの現役が1年延長される可能性もあるのではないかと考えてはいるようである。

 尚、30日にミラノのヴィットーリオディカプア賞(伊G1)で2着になったシールゲン厩舎のAmarillo他、このレースを勝った同じくケルン競馬場所属のレーヴェ厩舎管理馬Amariro等何頭かの馬たちが、帰国途中に宿泊させたバーデン競馬場で足止め状態とのことだ。ミラノへの出発前に検査をして陰性だったため、バーデン競馬協会ではそのまま面倒を看ると提案しているが、もともとケルンにいた馬であるため、戻さねばならないかどうかは、ケルン市当局の判断に委ねられていること。

 シールゲン「私は両手を縛られているようなものだよ。」
posted by 芝周志 at 02:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2012年10月03日

ケルン競馬場所属馬に伝染性貧血症発覚 ― Danedream、凱旋門賞出走不可に……


 昨夜2時10分、そろそろ布団に入ろうかと思ったその時、以下のツイートが飛び込んできて一気に目が覚めてしまった。



”理解できない!家畜伝染病がDanedream凱旋門賞連覇を阻む。競馬場と…(続きはリンクへ)”


 まさに何のことかまったく理解できず、「Tierseuche」という単語に馴染みがなかったせいもあり、半ば頭が混乱しながらリンク先へと飛んだ。そして更に見慣れない単語を確かめながら読みすすめると、ようやく事の重大さを理解し、愕然としてしまった。

 Danedreamを管理するシールゲン厩舎があるケルン競馬場で、同競馬場内他厩舎のある1頭の馬に伝染性貧血症の感染が確認され、それに伴い同競馬場内管理馬の隔離検疫、及び3ヶ月間の移動禁止令が発令されたのだ。即ちDanedreamは今週末10月7日ロンシャンで行われる凱旋門賞への出走が不可能となったのである。

 元ツイートのGerman Racingとはドイツ競馬の宣伝・広報を担う公式組織だ。ツイッターも云わばドイツ競馬団体の公式発表のものである。そしてこの直後に、ドイツ競馬2大情報サイト、GaloppOnline.de、及びTurf-Timesでも記事が上がり、ドイツ競馬統括組織である管理委員会(DVR)のサイトでも公式案内が掲示された。

 Kölner Bahn abgeriegelt - Danedream nicht nach Paris (GaloppOnline.de)
 ”ケルン競馬場閉鎖 ― Danedreamはパリへ行けない”

 Tierseuche: Renntag in Köln abgesagt - Danedream darf nicht im Arc laufen (Turf-Times)
 ”家畜伝染病:ケルンでの競馬開催中止 ― Danedreamは凱旋門賞走れず”

 Kölner Renntage 3. Oktober und 14. Oktober 2012 abgesagt (DVR)
 ”10月3日と14日のケルン競馬開催中止”

 いずれの記事も主旨は同じなので第一報時点での要点をまとめよう。

◆ミュンスター市の化学・獣医学調査機関がケルン市獣医局(Veterinäramt)へ、ケルン競馬場の1頭の馬が血液検査により伝染性貧血症に感染していると報告。ケルン市は条例に従い、感染した馬の殺処分、ケルン競馬場の閉鎖、全馬約300頭の隔離検疫、及び感染馬所属厩舎から半径1kmにいる馬の3ヶ月間の移動の禁止を指示。
◆これに伴いDVRとケルン競馬協会は、10月3日と14日に予定されていたケルン競馬場での開催の中止を決定。
◆感染源については、既にノルトライン・ヴェストファーレン州やラインラント・ファルツ州で症例が報告されているものと同様、動物病院で感染している馬に接触したものと思われる。
◆上記措置に伴い、Danedreamの凱旋門賞を始め、その他ケルン競馬場所属馬たちのレース出走は不可能となる。

 これらにやや遅れて報じられたイギリスRacing Postの記事ではDanedreamの共同馬主である吉田照哉氏のスポークスマン、パトリック・バーブ氏のコメントを取り上げているが、バーブ氏自身が伝聞情報の様子で、可能性は低いがなんとか凱旋門賞出走への期待を繋ぎたいニュアンスで書かれている。だが上記のように、ドイツ国内の報道ではこの時点で既に最終決定の様相を見せていた。

 第一報時点は現地時間の夜19時〜20時だったので、Danedreamの動向に関しては厩舎サイドを始め、まだ公式にはどこからも発表されていなかった。しかし現地翌朝、日本時間の2日夕方には状況は確定、フランスギャロへ正式に出走登録取消しが報告された。万全の準備を勧めてきたDanedream陣営は、思わぬ形で計画が潰れてしまい、やりきれない思いで一杯だろう。1936年、37年Corrida以来の牝馬による凱旋門賞連覇という偉業がかかっていただけに、無念というほかにない。シールゲン厩舎からは、しかし今のところ具体的なコメントは聞こえてきていない。容易に答えられる状況でもないのだろうが。

 それを示すように、Turf-Timesの続報によれば、ケルン競馬場とは別の調教場に厩舎をもつヴェーラー調教師のところへも、事態を心配した馬主等関係者からの電話が鳴り止まないとのことだ。ヴェーラー厩舎では馬主たちに安心してもらうため、管理馬全てに即時検査を行ったとのことである。

 またこのTurf-Times続報によると、ケルン競馬場理事ファスベンダー(※まったくの余談だが、ファスベンダーはケルン老舗カフェのオーナーで、ここのケーキや朝食メニューは最高である。)は、伝染性貧血症の報告を受けたと同時に条例に従った措置を実施し、また各国へも報告したという。伝染性貧血症は潜伏期間が3日から3ヶ月あるため、仮にDanedreamが既にフランスへ出発した後であっても出走停止処置にせねばならず、この段階で出走への望みは潰えていたのである。

 尚、感染した馬は、ケルン競馬場に馬房を持つ小厩舎サラ・ヴァイス調教師が管理する未出走馬で、まだ殆ど馬房から出たことはなく、他の厩舎の馬と接する機会は少なかったことから、恐らく感染は広がっていないだろうと、希望を込めてファスベンダーはコメントしている。シールゲン厩舎とはエリアも違うようだ。伝染性貧血症はアブ等の吸血性昆虫を介して伝染するものであり、すぐそばにいる馬にしか容易には感染しないという。ファスベンダー曰く、外部の動物病院にいた際にもらってきたものとのことだ。

 感染源については上記要点でも触れているが、今回の伝染性貧血症はケルン競馬場内で初めて発生したものではなく、実は8月以降既に症例が報告されていた。ドイツは乗馬関係が競馬よりも盛んな国なので、競走馬以外にも周辺には多くの馬がいるのである。感染源とされる馬がいたヴァハトベルク(Wachtberg)という町はケルンから南へ約50kmに位置し、現地の地方紙Rhein-Sieg-Rundschauでは9月中から伝染性貧血症に関するニュースを発信していた。

 2000 Pferde von Viruskrankheit bedroht (Rhein-Sieg-Rundschau 9/21)
 ”2000頭の馬がウイルス病に脅かされている”

 この記事によると、最初の発症例は8月中旬にライン・ジーク郡で報告された生後3ヶ月の馬で、この馬はヴァハトベルクの動物病院にいた10歳の輸血用牡馬10年間輸血用として使役されていた牡馬から血を受けていた。この牡馬がどこで感染してきたのかはわからないが、この当歳馬の他にも最低5頭の馬に輸血を行なっている感染が広がっている事実が明らかになった。これらの馬から更に感染が広がっていることも発覚し、(訂正:ここを発生源として感染が明らかになったのがこの記事の時点で合計6頭)結果として発生源となっている動物病院に過去にいたことがある馬たちも検査する必要が出てきたため、2000頭以上の馬が検査対象になるということである。

 このような事実に対し、何故競馬関係者は事前に対応できなかったのか、という問題も持ち上がってきたようだ。

 Ausbruch der Viruskrankheit war schon länger bekannt (GaloppOnline.de)
 ”ウイルス病の発生は既に以前から知られていた”

 今回の件は、単にDanedreamだけの問題ではなく、ドイツ競馬界全体が大きな損失を被る事態へと発展していくことになるだろう。

 それにしても、Danedreamだけでなく、Snow Fairyの故障、そしてつい先程報じられたNathanielの熱発により、有力馬が次々出走回避となってしまった今年の凱旋門賞。日本のオルフェーヴルにとってはライバルが減り、よりチャンスが大きくなったといえるのだろうが、同時に興醒め感も否めない。またDanedreamは、当然ジャパンカップにも来られなくなってしまった。私個人的には友人の競馬カメラマン、ゾルゲからの信任を受けたこともあり、彼女のラストランをドイツ競馬界のために撮るという責任をもって臨むつもりだったため、なんとも言えない虚しさに襲われている。つくづく残念である。
posted by 芝周志 at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2012年07月01日

競馬クラスタさん!ドイツダービーですよ!ドイツダービー!

 先週のアイマス7thライブの興奮がいまだ冷めやらぬ芝です皆さんお久しぶりですこんばんは。

 ライブに参加するのは初めてでしたが、横アリの盛り上がりと一体感はさすがアイマスというべき素晴らしきもので、ゲームキャラクターからアニメへ、歌手としてはズブの素人である声優のアイマスガールたちが見事なエンターテイナーへと成長した姿は、プロデューサーという名のファンたちにとってはまさしく7年間の集大成といえるもので、「みんないっしょに!」というライブテーマそのままに、ニコマス視聴者というバッタ者の私でさえ共にサイリウムを振る手が力強くなり…(ry

 さて、ギリギリになってしまったが、日本時間の今晩0:40はドイツダービーである。サッカーのユーロ2012決勝と日程が重なることから、ドイツの競馬協会は7月第1日曜日という伝統を破って翌週開催にしようと色々根回ししていたようなのだが、パリ大賞と日程が近くなりすぎるというフランスからのクレームにより、已む無く例年通りの開催日となった。しかし例年通り1週間連続開催の最終日にすると、全日程がサッカーと被りまくるため、今年はダービーを中日にし、古馬G2のハンザ賞を3日(火)とする変則プログラム。それゆえ毎年気になる馬場の荒れ具合をそれほど考慮する必要もなく、一応この金土の開催は稍重で、タイム的には標準の範囲内ではある。馬場状態としてはそれなりにフェアなレースを出来そうだ。

 ということで、毎年恒例の予想がドイツの競馬仲間であるヒネッケ兄弟から届いた。今年も頑張って訳してみましょうか。

 と、その前に、出馬表はこちらをば。

 Sparda 143. Deutsches Derby ※ドイツダービーの馬番はレーティング順

 では毎度全出走馬へのコメントを書いてくる弟マティアスの予想から。


 今年のダービーに関しては、Novellistを倒すのはどの馬も普通に難しいだろう。ただ2着以下はいくらでも可能性はある。

Novellist: 勝利を期待されている馬であり、誰の目にも明らかな本命。果たしてこの馬を倒せる馬はいるのか。
Salon Soldier: 闘争心のある馬だ。上積みの可能性もあり、見くびってはいけない。
Feuerblitz: イタリアダービー馬。それ故に注目。(短距離種牡馬の)Big Shaffle産駒がダービー馬とは通常想像し難いが、3着以内ならありえるし、母系からスタミナを引き継いでいる。
Girolamo: チャンスのあるいい馬で、厩舎主戦騎手が騎乗。血統的には必ずしも2400mが保つタイプではないが、馬体的にはいけそう。
Mano Dio: 私の目ではステイヤータイプ。
Black Arrow: いい馬だ。但し2400mが保つかは疑問が残る。
Macao: 個人的に気になっている馬。状態が良ければチャンスはあるだろう。長い目で見ればいい馬だと思う。シンパシー馬券だね。
Andolini: 血統的にはステイヤーではないが、考えれる馬ではある。渋った馬場が必要だろう。距離が保つかは分からないが、8着以内ならありえるのではないだろうか。
Munic Boy: ウニオン・レネンの印象からチャンスはあってしかるべき馬。闘争心もある。しかし私は期待していない。母馬がアメリカでいい肌馬のようだが、この母系のスタミナには疑問が残る。父Bernadiniも2000m「オンリー」の馬だ。
Russian Song: 運が良ければ6着以内までに来れそうな馬だ。しかし厳密に見るなら、あとから馬券を追加するときに考慮するくらいの馬だ。
Pastorius: ステイヤータイプではない。但し鞍上がヘリアーなので、チャンスある穴馬といったところ。
Milord: 自分にとっては圏外。
Baltic Rock: 追加登録してきた馬。元々ダービー登録はあったけど、ある時点で外されていた。途中でシールゲン厩舎から少規模厩舎へ移籍している。ダービーに出るには、この馬はまだ熟してないと思う。
Nostro Amico: 順調な過程を踏んできたとはいえない。ダービーにはまだ間に合っていないと思う。しかし古馬になってから能力を発揮する可能性はあるだろう。スタミナについては、確かとはいえない。
Anakin Skywalker: ステイヤータイプで大いに驚かす可能性はある。しかし3着以内は考えにくい。

 私の予想は以下の6頭。

 Novellist
 Salon Soldier
 Feuerblitz
 Girolamo
 Mano Diao
 Black Arrow

 ビックリさせるならMacaoだろう。これまでのレースでは早熟なところを見せているが、ポテンシャルはある。


 続いて兄ハネスの予想メールをば。こっちはお手紙テイストなので、訳もそんな感じでw


 Novellistは避けて通れない。ウニオンの走りには完全にしびれたね。それゆえ今年のダービーは比較的はっきしていて、Novellistをあっさり本命に据えるよ。それに続くのは、これも結構はっきしていて、Black Arrowが挙げられるな。三連単のヒモとなると、Girolamo。ウニオンではよく走っていた。それからFeuerblitz、イタリアダービーの結果からあと200m保たないという理由はないだろう。Munic Boy、この馬にはウニオンでも期待していたし、最後に脚が上がっていたようだが、多分まだ上積みはある。そして驚かすとしたらMilordだろう。まだ出し切ってないものがある。
 といった感じで、この6頭からどれだけ三連単に絡んでくれるか緊張するね…


 と、現地からはこんな感じの予想。

 では私の予想だが、既に二人の予想からもお分かりのとおり、今年はNovellistという馬が1頭抜けている。ハネスの言葉通り、私もこの馬を避けて通ることは出来ない。一点気になるところを挙げるなら、道中ややかかり気味で折り合いがつくまで時間がかかるところなのだが、いざ直線に入ると騎手のゴーサインを待って冷静にスパートできるし、エディが馬群さばきに失敗しない限り、圧勝しておかしくない。父はダービーがベストのMonsunだし、母父Lagunasもダービー馬だ。母Night Lagoonは2歳牝馬チャンピオンのNライン系で、ベタなくらいの血統的裏付けもある。この馬にはむしろ今後の国際舞台で一線級の活躍を期待したいので、ここはあっさり突破して欲しい。

 2番手に来るのも、ハネス同様レーティング2位のBlack Arrow。前からでも中団からでもレースが出来、直線で潰れない走りは安定している。追い出してからのキレがないので、スパっとキレるNovellist相手では分が悪いが、3着以内はしっかり確保しそうなタイプ。鞍上にはフランキーを連れれきたので、無駄のない乗り方できっちり粘ってくれるだろう。

 3番手にはウニオン2着のMunic Boy。アメリカ血統がハンブルクでどの程度通用するのか分からないが、今年は上で触れた通り開催最終日ではないし、比較的良質な馬場コンディションでレースが出来るだろう。となるといきなり昇級戦で好走し、上積みもかなり見込めそうなので、入着候補の1頭には十分挙げられる。

 その他に気になるところは、Salon SoldierとNostro Amico。前者はバヴァリアン・クラシックでBloack Arrowによく食らいついての僅差3着。この時がオープン初挑戦だったことを考えれば、まだ上積みが期待できる。シールゲン厩舎主戦のシュタルケは、最終追い切り後にGirolamoの方を選んだけれど、潜在力という意味でSalon Soldierに期待したい。

 Nostro Amicoは2歳時にミラノのリステッドを勝っているが、その後骨折で復帰が遅れ、6月初旬に同じくミラノのリステッドを叩いて(4着)ここに挑む。臨戦過程の順調さは欠いているし、父がマイラーのMartilloで距離不安が残るが、勝負付けが済んでおらず、叩き2戦目の上積みもありそうなので、一応注目してみたい。仮にここがダメでも、距離を縮めて今後に期待したい馬ではある。

 あと1頭一応選ぶなら、イタリアダービー馬ということに敬意を評してFeuerblitzになるだろう。ただ正直なところヒネッケ兄弟ほど高くは買ってない。父がBig Shaffleだからというわけではなく(中距離で走っている産駒なら結構いるし)、イマイチ今年のイタリアダービーのレベルが高いように見えないのだ。まあ来たら低く見積もってごめんなさいということで。

 というわけで団子をつけると以下のとおり。

◎Novellist
○Black Arrow
▲Munic Boy
△Salon Soldier
△Nostro Amico
△Feuerblitz

 ところで、ハネスからのメールによると、奴らは11月に来日するらしい。JC週は23日が金曜日で三連休だし、接待が大変になりそうだ。競馬場では他の海外競馬クラスタにお相手してもらうかな。
posted by 芝周志 at 18:30| Comment(2) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2011年11月26日

Danedream ist da!

 凱旋門賞をレコード勝ちで圧勝したドイツのシンデレラガール、Danedreamが日本へやってきてしまいましたね…。春からの半年間、どんどんトップホースへの階段を駆け上がる姿を遠く日本からウォッチしていた馬が、今自分の目の前にやってきたというのは感無量ですよ。

 「目の前にやってきた」とは気の早い表現に聞こえるかもしれないが、木曜日の調教で実際に彼女を目の前にしたのである。

 実は今回、外国プレスとして撮影許可証を得ることが出来たのだ。「日本人なのになぜに外国プレス?」ってことになるだろうが、今月初旬、ドイツにいた頃の友人である競馬カメラマンのゾルゲ君(滞独中彼を通じSport-WeltやVollblut誌に時々写真を載せさせてもらっていた)から「どうしても日本に行くことが出来ないので、俺の代わりに許可証をもらってDanedreamを撮ってくれ。」とメールが来たのである。もちろん二つ返事でOKし、ゾルゲ君がJRAにかけあってくれた。またその過程で、この秋から写真を投稿しているドイツの競馬ウェブマガジン"Turf-Times"からも、「ゾルゲから話を聞いた。うちの分も撮ってくれ。」と更に依頼を受け、両者の推薦状を得て外国プレス証の取得にこぎつけたのである。

 Danedreamは私にとっても望外の夢をもたらす馬となった。日本馬たちにも当然思い入れはあるが、今回ばかりはとことんDanedreamを応援させてもらう。

 間近で見たDanedreamは、これまでドイツの記事で読んでいたとおり、人見知りせず興味深そうによく観客やカメラマンの方へ顔を向けてくれた。ドイツから来ているカメラマンのノルティンク兄さん(速報目的の写真家ではないので、仕事として競合しない)と一緒に行動させてもらっているお陰で、国際馬房(ここには日本人プレスはいない)で馬場入り前の曳き運動をしているとき、厩務員のシンティアちゃんとも顔見知りである彼が「ちょっと止まって写真撮らせて。」と頼むと、立ち止まり二人(一人と一頭)揃ってこっちを向いて写真に収まってもらえた。このペアはホント微笑ましい。

 写真については、外国プレスという特別な許可を得て撮影しているため、どの程度自分の裁量で公開してよいのかは、実はまだきちんと確認していない。許可証には「取材目的以外に(許可証を)使用できない。」とあるので、いつものように気軽にアップすることは出来ないだろう。もっとも、Turf-Timesでは写真にShibaShuji.comのリンクを付けてもらっているので、写真を通じてジャパンカップを報じるという筋が通れば、絶対的に禁止ということにはならないのではないかと考えてはいる。しかし現時点では残念ながら控えておかざるえない。

 その代わり私への依頼元であるゾルゲ君の写真ポータルサイトGaloppfoto.deとTurf-Timesには早速載っているので、サイズが小さかったりウォーターマークが付いてはいるが、一応今回の調教写真(といっても走ってないが)をご覧いただくことは出来る。

 Galoppfoto.de →こちら
 Turf-Times →こちら

 Turf-Timesでは別の日本人の方が撮った写真とのコラージュ風になっている。こちらの方とは面識はないが、ドイツ競馬という稀なご縁となっているわけで、そのうち数少ないドイツ競馬クラスタとの飲み会にお呼びしたいなと。

 さあジャパンカップがやってくる。ドイツの競馬ファンにDanedreamの勇姿を伝えるために、私も心して頂いたこの貴重な機会に臨むとしよう。
posted by 芝周志 at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2011年10月09日

Danedream、凱旋門賞を勝利するまで


 2010年5月、バーデンバーデンの南西にある小さな町アーヘルンで1本の電話が鳴った。電話を受けたのはこの町で家具センター"Möbel RIVO"を営むヘルムート・フォルツ(Helmut Volz)、かけたのはディルク・アイゼレ(Dirk Eisele)、サラブレッド売買エージェントBBA Germanyの代表だ。アイゼレはその日、バーデン競馬場で行われていた春季ブリーズアップ・オークションにおり、トレーニング・セールに出されていた1頭の2歳牝馬に目を付けたのである。

 「いい馬が1頭いるんですよ。今日のオークションで一番興味がある馬なんです。」

 フォルツは話を聞いて、アイゼレに落札へのゴーサインを出した。ブリュンマーホフ牧場(Gestüt Brümmerhof)から出品された父Lomitas、母Danedrop(母父Danehill)の仔Danedreamは、こうしてアイゼレによって9000ユーロで落札され、フォルツが所有することになったのである。

 Danedreamはこの時点まで、既に生産牧場であるブリュンマーホフの所有馬としてシールゲン厩舎に預けられ、調教されていた。しかし目立たない馬だったらしく、牧場主のグレゴール・バウム(Gregor Baum)はとっとと売り払うことを決めたようである。主取りのための落札下限額も提示していなかったそうだ。

 だがセリ会場でのDanedreamは一味違ったらしい。この馬にいい気配を感じ取ったのはアイゼレだけではなかった。トレーニング・セールでこの馬の背に跨っていたシールゲン厩舎2番手騎手のミナリクも、この時好感触を感じ取っていて、彼の故郷チェコから買い付けに来ていた客に売り込んでいたというのだ。たった9000ユーロである。ミナリクがもう少し熱心に故郷からの客を焚きつけていたら、もしかしたらDanedreamはチェコでデビューすることになり、運命は大きく変わっていたかもしれない。

 結果としてフォルツの手に渡ったDanedreamは、そのままシールゲン厩舎に残り、早くも6月20日、ウィッサンブール競馬場でデビューした。

 ウィッサンブール(Wissembourg)??? どこよそれ?

 ということで調べてみると、アルザス地方にある小さな町の競馬場で、グーグルマップで見ると如何にもな田舎競馬場であった。しかしそれでもドイツの未勝利戦が賞金総額5000ユーロ程度なのに対し、この時のレースは総額12000ユーロである。2着に2馬身半差のデビュー勝利を飾ったDanedreamは、早速1着賞金6000ユーロを獲得した。
*のんびりブログ記事書いてる間にどっかから映像を見つけてYoutubeにアップした人がいたよw →Danedreamデビュー戦(直線のみ無音)

 因みに7頭立てだったこのレースの結果をよく見ると、1〜3着をドイツ馬が独占しており、最下位もドイツ馬である。アルザス地方はドイツからは国境を跨いですぐだし、賞金稼ぎにはおいしいことこの上ない。とはいえ、普段注目されるような馬たちは大抵国内の主要競馬場か、国外でも著名な競馬場ででデビューしているので、6月という早い時期にこういうところでフランスの低級馬相手に賞金をかっさらっておこうというのは、それほど長い目で見られていないタイプの馬が多いと思われる。そういう意味でDanedreamも、落札額同様にこの段階では厩舎内で決して高い評価の馬ではなかっただろう。フォルツ自身もDanedreamを購入当初、地元バーデン地方から近く、賞金はドイツよりも高いこの辺りの競馬場で2、3勝あげる程度に走ってくれればよいと考えていたということだ。

 それでもデビュー戦で勝利をあげたことで、2戦目はケルンのリステッド競走オッペンハイム・レネンに挑戦する。そして2歳ではトップレートをつけることになるAcadiusの3着と好走した。この辺でフォルツも、地元近くで卒なく走ってもらって楽しもうという期待度ではなくなってきたのだろう。続けて再びフランスへ行き、ドーヴィルのリステッド競走Criterium du Fonds Europeen de l'Elevageに出走させた。だが1着入線するも3着に降着となってしまう。もっともここで陣営に更なる色気が出た。思い切って凱旋門賞当日の2歳牝馬G1、マルセル・ブーサック賞に挑戦したのである。しかしさすがにこの時のDanedreamには、このクラスはあまりに敷居が高すぎたようで、見せ場なく6着に終わる。その後はドイツ国内戦に戻り、2歳女王決定戦ヴィンターケーニギン賞(G3)で、3番人気で3着と順当な走りを見せて、Danedreamは2歳シーズンを終えたのである。

 こうして2歳戦を振り返ると、デビュー当初から徐々に期待値を増す好走をしたと言えるだろう。とはいえ、大物感を漂わせるほどでもなかった。正直なところ、この段階で3歳での成長ぶりを見越していた者は、誰一人としていなかったはずだ。ヘルムートの息子ハイコー・フォルツ(Heiko Volz)曰く、冬の間は誰もDanedreamの話題などしていなかったという。因みに私も、何となく名前の字面だけ頭の隅に残った程度で、翌春イタリア・ダービーに出ていたときは、改めて調べ直す必要があるほど忘れ去っていた。

 明け3歳。初戦をミラノのリステッドで4着、続いて果敢に牡馬と混合のイタリア・ダービーに挑戦して3着と健闘し、ダントツの1番人気に押されたイタリア・オークスでは、期待以上の圧勝劇を演じた。

 > 5月7日 イタリア・ダービー(伊G2) 3着
 > 5月29日 イタリア・オークス(G2) 1着

 このイタリアキャンペーン、私はシールゲン厩舎がヴィンターケーニギン賞2着のAigrette Garzetteを期待1番手牝馬と見做していると見ていたため、国内本流はこちらを中心とし、Danedreamは国外ルートからディアナ賞(独オークス)を目指すと考えていた。だが実は、Danedreamはディアナの登録がなかったというのである。6月26日にサンクルーのマルレ賞(仏G2, 2400m)もそのステップだと思っていて、ここで5着となり壁に当たっても、まあ国内で仕切り直せるだろうくらいに考えていた。それゆえディアナの2週間前に古馬混合のベルリン大賞(G1)に出てきたときは正直驚いた。しかも相手はドイツの2強と呼べる存在のScaloとNight Magicである。軽ハンデの有利があるとはいえ、随分とハードルを上げた挑戦をするものだとレース前は誰もが軽視し、人気も11頭立ての8番目であった。だがこの見事な勝ちっぷりである。

 > 7月24日 ベルリン大賞(G1) 1着

 この勝利の直後シールゲンは「これはブリーダーズカップ(フィリーズ&メアターフ)に向けてよい試走になった。多分アメリカへ向かう前に1レース使う。」とコメントしていた。しかしステップとして挟んだバーデン大賞(G1)がまたしても鮮やかな勝利。

 > 9月4日 バーデン大賞(G1) 1着

 BC F&MTを想定し始めたのは、多分イタリア・オークスを勝ってからであろう。春初戦の段階では、間違いなく誰一人、そこまでのチャレンジを考えていなかったはずである。だがこのバーデン大賞の勝利で、BC F&MTどころか凱旋門賞への挑戦プランが浮上してきたわけだ。それでも馬主と厩舎はギリギリまで慎重だった。やはり凱旋門賞は別格である。BCでもF&MTは牝馬限定戦、確実に実利を狙うなら、ここで無理せず予定通り直行したほうがいいというのが理性的判断である。凱旋門賞には登録もしていなかったし、追加登録には10万ユーロもかかる。だが勝利の度に「この馬は自分たちが思っている以上に、レースで強くなっていく」と鞍上のシュタルケがコメントしているとおり、どこまで伸びるか分からない未知の可能性を誰もが感じていた。陣営は熟慮の末、夢にかける方を選んだわけだ。凱旋門賞直前に照哉氏が馬主権利を半分買い取ったことは、恐らくこの決断に決定的影響を与えてはいない。照哉氏の意向が働くくらいなら、全権売っていただろうからだ。明らかに繁殖として手に入れたい照哉氏へ半分というところに、現役中は口出しさせないというフォルツの意思が透けて見えるのである。

 そして凱旋門賞。Danedreamはドイツ競馬界としては1975年Star Appeal以来2頭目という快挙を成し遂げたのである。

 > 10月2日 凱旋門賞(G1) 1着

 このレースについてはもはや私がコメントする必要はあるまい。2:24.49というレースレコードでの圧勝。ドイツ競馬ヲタとしてはまさに感無量である。

 年内はもう1戦使うということだ。一応当初予定通りBC F&MTを狙うか、ジャパンカップに来るか、どちらからしい。凱旋門賞と比較すればどちらも蛇足であろうが、ここで牝馬限定戦に行くより、JCに来てくれたら嬉しいことこの上ない。凱旋門賞後は何事もなかったようにペロッと飼葉を食べ、深夜3時過ぎにケルンの厩舎に戻ったあとも、実にリラックスしていたということだ。遠征はまったく苦にしないらしく、馬運車を見ると耳をピクッと前へ向け、喜んで乗り込むらしい。ミラノへの遠征のときも、10時間の移動中、平気で飯を食い、水をごくごく飲んでたそうである。

 また来年も現役続行予定である。照哉氏に決定権があるなら、とっとと引退させて日本へ連れてくるだろう。しかしそれよりは、牝馬として凱旋門賞二連覇を目指してほしいものだ。

 正直なところ、凱旋門賞後どんどんネタが出てきて、書きたいことは他にもいろいろあるのだけど、もうすでにまとまりない状態まできてしまったので、この辺でやめておく。ただ血統話はドイツ牝系ではないので、私が書くことはないので悪しからず。

【追記】
 kalikolaさんが20歳の厩務員チュンティアちゃんについて書いてます。自分も元記事読んだときこれについても書きたかったのだけど、記事を独立して書けるほど印象的なインタビューだったので、kalikolaさんが取り上げてくれてありがたいです。
 kolikolaのblog「凱旋門賞馬デインドリームについて」
posted by 芝周志 at 01:23| Comment(2) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2011年10月02日

Danedreamが凱旋門賞制覇!!!

 直線で燃えた!ネットのストリーミング見ながら、ゴールの瞬間叫んだ!

 すげー!すげーーよ!Danedream!!!!!!

 セリで9000ユーロだったこの馬が、今年の春時点で誰がこんな快挙を成し遂げると想像したか?
 馬主も調教師も、誰一人想像出来なかったはずだ。シュタルケがレースの度に言ってる通り、毎度毎度陣営の想像の上を行く結果を残してるんだ。なんて馬だよまったく…。

 レースレコードだぜ?ビックリだよw

 アンドラッシュの雄叫びがネットを通じても心に響いた…。

 おめでとう!アンドラッシュ!
 おめでとう!ペーター!
 おめでとう!シールゲン厩舎のみなさん!

 今はこの感動をとにかくブログに書き残したかったので、後日また改めて書きます。
posted by 芝周志 at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2011年07月07日

第二の男ヨゼフ・ボイコに栄光輝く― 第142回ドイツ・ダービー優勝Waldpark

 3日(日)にハンブルクで行われた第142回ドイツ・ダービーは、ヴェーラー厩舎2頭出しの1頭Waldparkが後方から馬群を見事に差し切って勝利。4戦4勝で無敗のダービー馬誕生だ。2着にはEarl of Tinsdalが先行して粘り、5頭出しのシュレンダーハーン牧場優勢と言われた戦前の予想を覆し、まさかのヴェーラー厩舎ワンツーフィニッシュであった。だが、厩舎主戦のペトロサはEarl of Tinsdalの方に乗っており、Waldparkを勝利に導いたのは厩舎二番手騎手のヨゼフ・ボイコだ。

 今年のダービーは主戦騎手の騎乗馬選択がレース前から大きな話題となっていた。取り分けシュレンダーハーン牧場専属ヒルシュベルガー厩舎の主戦騎手アドリー・デフリースがどの馬を選ぶのかが、前哨戦が終わった後の主要なニュースとなっていた。そしてウニオン勝馬でレーティング1位のArrigoではなく、バヴァリアン・クラシックを勝ったMawingoを選んだことはかなりの驚きを持って報じられた。血統的な距離適正は明らかにArrigoの方がダービーに合っていたためであるが、デフリースは調教での出来でMawingoを選んだとのことである。彼は2年前にも同様にレーティング下位のSuestadoを選んで、勝利はスウェーデンから招聘したヨハンソン騎乗のWiener Walzerに譲ってしまっている。もっとも今回はMawingoがシュレンダーハーン勢最先着の4着となり、デフリースの判断は間違ってなかったことになったが、しかし上位独占が予想された中でのこの結果は、彼にとっても然程の慰めにはならないだろう。

 しかしデフリースの選択ばかり注目されていた一方で、ヴェーラー厩舎のペトロサがEarl of Tinsdalを選んだこともちょっとした驚きではあった。もっともWaldparkが3連勝中とはいえまだ準重賞勝ちまでだったのに対し、Earl of Tinsdalは既にフランクフルトの3歳春季賞(G3)を勝っている。紙面上の実績はEarl of Tinsdalの方が上であるから、距離不安があったとしても、ペトロサはこちらを選んで不自然ではない。だが彼のこの選択に、二番手騎手のボイコは、本当にそっちでいいのかと、驚きをもってペドロサに訊いてしまったそうだ。それほどWaldparkの出来と成長力がよかったのであろう。ただWaldparkの厩務員はボイコのパートナーだということで、もしかしたらペトロサの方にちょっとした義理が働いてたかもしれない。そんな想像は日本人的かもしれないけど(笑)

 ヨーロッパでは、厩舎や馬主と騎手が専属契約していることが多い。そして大手厩舎になると、主戦騎手の他に二番手、三番手扱いとなる騎手も抱えている。1つのレースに2頭出しする場合は、有力な馬のほうに主戦騎手が乗り、二番手騎手はペースメーカー役に任ぜられることがしばしばだ。また多場開催のときは、よりチャンスが大きい、または有望な馬がいる競馬場に主戦騎手が行き、二番手はそうでないほうに行かされる。それゆえ二番手騎手はなかなかビッグレースでチャンスを掴む機会がない。ただ裏開催に行った時などは、トップジョッキーが表開催に集中してるので、結構荒稼ぎしたりはしているし、専属騎手を持たない中小厩舎に有力馬がいて、一方で自厩舎がそれほど期待が高くない馬を出走させるようなときは、主戦は人気薄の自厩舎の馬に乗らなければならないのに対し、余っている二番手騎手が中小厩舎の有力馬の方に乗って勝利するなんてこともよくある。シールゲン厩舎の二番手ミナリクなんかは、そのパターンでG1を何度か勝っている。

 ダービーでは上に触れたとおり、2年前のデフリースが選択をミスった最近の例だが、勝ったヨハンソンは厩舎二番手ではなく、国外からピンポイントで招聘したパターンだ。この手のケースは実は結構ある。だが厩舎二番手騎手がダービーに勝つというのは、それほど多くはない。しかし日本で最も知られているドイツ馬Landoとその父Acatenangoは、実は共にイェンチヒ厩舎の二番手ティリツキが手綱を握っていた。

 このような数少ないチャンスを今年手にし、それを見事ものにしたのがボイコである。1971年3月27日生まれの彼は既に40歳だ(これを確認したときはちょっと驚いた。一応ボイコのことは既に10年近く見てきてるのだから当然あり得る年齢ではあるのだが、今年勝春が40だと気づいたときと同じくらい衝撃だったw)。下積みと裏方に生きてきた男にやっとスポットライトが当たったのである。

 ヨゼフ・ボイコはスロヴァキアの首都ブラティスラヴァ出身のスロヴァキア人である。馬とはあまり縁がなかった家庭の生まれらしいが、1986年、15歳のときにチェコで騎手デビューし、初騎乗初勝利をあげている。東欧の社会主義体制が崩れた翌年1990年にウィーンへ移り、1992年にドイツのホッペガルテンにやってくる。しかし当初は厩務員扱いだったらしい。その後一時ローカル競馬場のゴータに移り、1996年8月、ブレーメンのファネルサ厩舎に雇われることになる。

 ファネルサ厩舎は決して大きな厩舎ではない。重賞クラスに馬を出すこともなく、ボイコも厩務員、攻馬手、騎手を全てこなす厩舎スタッフの一員だ。だがここでボイコは一歩一歩実績を積み重ねていく。ブレーメンという場所もよかったのであろう。現在ラーフェンスベルク牧場の調教施設に厩舎を構えるヴェーラーは、当時ブレーメンにいた。国内リーディングを競う大厩舎が隣にあるのである。そばで大きな刺激を受け、自厩舎の馬の調教をつけ終わった後には、手伝いに行っていたかもしれない。

 90年代後半にボイコは徐々に勝ち星を増やし、2000年には84勝をあげ遂にリーディングベストテン(8位)に食い込んだ。ここで注目すべきは騎乗数だ。1998年368鞍(29勝28位)、1999年408鞍(36勝21位)、2000年747鞍(84勝8位)で飛躍的にその数を伸ばしている。如何に彼が自厩舎以外からの信頼を獲得していったかが分かるだろう。そして翌2001年には778鞍騎乗し86勝でリーディング2位となる。またダービー初騎乗を果たし、18頭立て16番人気のNear Honorで3着に突っ込み、大波乱に一役買っている。

 これだけ活躍すれば更に大手の厩舎から声はかかる。だがボイコはそれらを断った。苦しかった時代に最も支えてくれたのがファネルサ調教師だったからだ。今どきなかなかない義理堅さである。それゆえその後も主に裏開催を中心として、他の主要な騎手が年間500〜600鞍乗る傍ら、毎年700鞍以上、競馬界自体のジリ貧度が高まってレース開催数が減り始めても年間600鞍以上乗り、中小厩舎の馬たちの手綱を握ったのである。(余談だが、ドイツで本格的に競馬を撮り始めた2002年に結構騎手の写真も撮っていたのだが、ボイコはなかなかケルンやデュッセルドルフに現れてくれなかったため、リーディング上位の騎手の中で唯一いつまでも撮れなかったことを覚えている。)

 ファネルサ厩舎に所属して10年が経った2006年暮れ、ボイコに大きな転機が訪れた。ヴェーラーから二番手騎手としてオファーが来たのである。ヴェーラーは前年にブレーメンからラーフェンスベルク牧場の調教場に移っており、このオファーを受けることはブレーメンから離れることを意味する。この時ボイコがどれほど逡巡したかについては分からない。だがこのオファーを結果として受けたのは、既に十分身近によく知っていたヴェーラーだったからであろう。またファネルサも、きっとボイコの背中を押したに違いない。この年の12月30日、ドルトムント最終開催日にファネルサは、全9レースのうち6レースに馬を出走させた。決して大きくない厩舎で1日6頭はなかなかない。ボイコはもちろんその全ての手綱を握った。3勝、2着1回、3着1回、4着1回。ファネルサは巣立つ弟子の花道に目一杯馬を仕上げ、ボイコは長年世話になった師匠の最後の恩に報いたのである。

 大手厩舎に移ったとはいえども、ボイコは二番手騎手としての契約である。ヴェーラー厩舎主戦騎手は3歳年下のエドゥアルド・ペトロサだ。1995年にドイツへやってきたこのパナマ人青年も、しばらく二番手騎手として下積みを重ね、スボリッチが抜けた2002年から厩舎一番手となったのである。エディは着実に腕を上げ、2003年3月のドバイ・デューティーフリーをPaoliniで同着優勝したことで、ドイツ国内での彼の評価は大きく跳ね上がった。それでも下積み時代と変わらず騎乗数も多く、4年連続リーディング1位という実績も、そういった地道な仕事ぶりに基づいている。

 そのようなペトロサとの関係で、二番手のボイコはヴェーラー厩舎に移る以前と変わらず、裏開催に出向く機会が多い。しかし重賞や準重賞が2箇所で開催されているようなときは、ボイコも厩舎の有力馬に乗り、以前に比べて騎乗馬の質が上がったのは確実だ。とはいえ、ボイコが手綱を取って準重賞勝ちを収めたような馬が、次に重賞へ出る際ペトロサが騎乗するということもしばしばである。二番手騎手ボイコが日陰の存在である状況は、基本的には変わらなかった。

 しかし今回遂に、ペトロサがEarl of Tinsdalを選んだ結果とはいえ、Waldparkという無敗の厩舎有力馬に騎乗し、ダービーという競馬界最大の栄誉をボイコは獲得したのである。彼が地道に重ねてきた苦労を、ドイツの競馬関係者やファンは皆知っている。スタンド前へ戻ってきたボイコを、観客はみな大きな拍手と声援で迎えた。実況のチャップマンも彼を称えて大いに盛り上げる。はっきりは覚えてないがこんな調子で。

「調教のときも決して遅刻はしない、どの競馬場でも騎乗する、いつも勤勉な男、ヨゼフ・ボイコォー!」

 これほど清々しい、誰もが幸せに感じるような凱旋シーンもなかなかない。表彰式では2位になった関係者も壇上に上がるのだが、ペトロサは名前を呼ばれたとき、心の中に多少は複雑な思いがあったかもしれない。だがそんな思いを彼は悪ふざけに変えて「ブ〜」と言いながら壇上に駆け上がり、そしてすぐに笑顔を見せて、友達同士が喜びを分かち合うようにボイコと強く抱き合った。「これでよかったんだよ。他の厩舎の馬の後ろで2着になるより、うちの厩舎の馬の後ろでよかった。」とペトロサはコメントしている。

 Waldparkはバーデン大賞に登録しており、恐らくそこではボイコではなく、ペトロサが手綱を握ることになるであろう。そこは二番手契約である者の宿命である。しかし今回のダービー勝利をきっかけに、他厩舎からの有力馬騎乗の依頼は増えるかもしれない。既に40歳であるが、まだ40歳でもある。第二の男ボイコが脚光を浴びる機会が今後増えることを期待しつつ、私も遠く日本から心を込めて言いたい。

 おめでとう!ヨゼフ・ボイコ!
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2011年07月03日

第142回ドイツ・ダービーです


 どんなに更新の少ない怠慢ブログでも、ドイツ・ダービーだけはスルーしませんよ!

 とはいえもう明日に迫って慌てて書いてるなうです…。

 例年通りドイツの競馬友達ヒネッケ兄弟からダービー展望のメールが届いた。私もさっき一生懸命ドイツ語で予想を書いて送ったところだ(たまにドイツ語書くとしんどい…)。OKはもらっているので、彼らの予想もざっと訳して紹介したい。

 その前に、まずは出馬表。ダービーはGAG(ドイツのレーティング)順に馬番号が決まっている。

馬番号

ゲート番号

馬名

GAG

馬主

調教師

騎手

1

4

Arrigo

95,5

Gestüt Schlenderhan

Jens Hirschberger

K.Fallon

2

18

Ametrin

95,0

Gestüt Schlenderhan

Jens Hirschberger

F.Minarik

3

8

Lindenthaler

95,0

Gestüt Ebbesloh

Peter Schiergen

W.Buick

4

11

Mawingo

94,5

Gestüt Schlenderhan

Jens Hirschberger

A.de Vries

5

7

Ibicenco

94,5

Gestüt Schlenderhan

Jens Hirschberger

T.P.Queally

6

16

Gereon

93,5

Ch.Zschache

Christian Zschache

J.P.Murtagh

7

15

Saltas

93,5

Gestüt Ittlingen

Peter Schiergen

A.Starke

8

2

Brown Panther

93,0

Owen Promotions Ltd./England

Tom G. Dascombe

R.Kingscote

9

9

Theo Danon

93,0

Stall D'Angelo

Peter Schiergen

A.Suborics

10

6

Silvaner

92,5

Frau M.Herbert

Peter Schiergen

T.Hellier

11

3

Earl Of Tinsdal

92,5

Sunrace Stables

Andreas Wöhler

E.Pedroza

12

10

Waldpark

92,0

Gestüt Ravensberg

Andreas Wöhler

J.Bojko

13

14

Sommernachtstraum

89,5

L.-W.Baumgarten u.S.J.Weiss

Waldemar Hickst

St.Pasquier

14

17

Ordensritter

89,5

Stall Nizza

Horst Steinmetz

D.Bonilla

15

13

Tahini

89,0

Gestüt Schlenderhan

Jens Hirschberger

M.Cadeddu

16

1

Appleby

85,5

Stall Schloss Benrath

Sascha Smrczek

D.Porcu

17

5

Mi Senor

84,0

Rennstall Darboven

Andreas Wöhler

Frau St.Hofer

18

12

Hoseo

67,0

Frau R.Sturm

Erika Mäder

H.Grewe



 今年の国外からの追加登録は英国のBrown Pantherのみ。ハンデ戦だが5戦4勝で波に乗ってやってくる侮れない相手ではある。しかしShirocco産駒なのでそれほど敵愾心が起きないのも事実ではあったり。

 さて、ドイツの友人ヒネッケ兄弟の弟マティアスが、これまた丁寧にも全馬の寸評を書いてきてくれた。まずは彼のメールを訳そう。


 2011年ダービーは、絞りきれない難しいレースだ。抜けた馬はいないし、大手厩舎のジョッキーが選択した馬にも驚かされる。ドイツ馬同士の間に差はない。Ordensritter、Mi Senor、Hoseoは圏外だが。Brown Pantherが倒すべき相手ではあろう。

Arrigo: 既に以前から厩舎期待の馬。しかしこれまでのレースから、明確な厩舎ナンバーワンの位置づけではなくなっている。どちからというと渋った馬場のほうがよい。
Ametrin: ステイヤー。見くびってはいけない。
Lindenthaler: 評価が難しい馬だ。自分の感覚としてはステイヤーではなさそう。
Mawingo: 紙面上はステイヤーではない。ArrigoとIbicencoとの間に殆ど差はない。厩舎主戦ジョッキーが騎乗。シュレンダーハーン牧場陣営では、2000mならナンバーワンだろう。しかし更に400mいけるかは疑問。
Ibicenco: ステイヤー。いい馬だ。3着以内には十分考えられる。
Gereon: 小さな馬主調教師の所有馬。このところは不運な騎乗のレースが続いた。3着以内のチャンスは十分にある。
Saltas: 6着以内ならあり得る。だが最後の一押しに欠ける。
Brown Panther: ロイヤル・アスコットで行われた面子の揃ったハンデ戦で、素晴らしいレースを見せた。英国の評価ではG2クラスの馬ということだ。馬主はサッカー選手のマイケル・オーウェン。重馬場ならドイツ馬をまとめて倒すことができるだろう。しかし良馬場だと状況は異なる。
Theo Danon: 2100mまでならいい馬だ。しかしステイヤーではない。それゆえ入着圏内は考えにくい。
Silvaner: (2歳チャンピオンだが)冬の間に十分な成長をしなかった。しかし格言にあるように「その馬のベストパフォーマンスを忘れてはいけない。」
Earl of Tinsdal: 個人的には持久力はあると思っている。一概には言えないのだけど。母はマイラー血統だが、ステイヤーとのかけ合わせでは、更に距離をこなせる産駒を出している。バヴァリアン・クラシック(G3)では落鉄していたので、Mawingoに対する敗北の言い訳は立つ。厩舎主戦ジョッキーが乗り、6着圏内はあり得る。
Waldpark: いまだよく分からない馬だ。私の見立てでは確実に上位には来る。主戦ジョッキーの選択した馬ではないといえども。
Sommernachtstraum: 6着以内ならありえるだろう。
Ordensritter: 気性難の馬。それゆえいい走りを出来ないのだろう。ウニオン・レネン(G2)では軽く進路妨害にもあってる。しかしはっきり言って入着圏内は難しいだろう。
Tahini: 紙面上はステイヤーではない。しかし穴馬としてチャンスはある。厩舎では存外に低く評価されている。今年のヒルシュベルガー厩舎の馬は、どれもチャンスがある。
Appleby: 未勝利馬。スタートが下手なところがある。しかし後から見てみるとスピードはある。入着はあり得るかもしれない。
Mi Senor: 馬主の希望で出走するが、ステイヤーではない。
Hoseo: 同じく馬主の希望で出走するに過ぎない。前の方に来ることも考えられなくもないが、実質的にはAgl.II(ハンデ2級クラス)の馬だろう。

 今年はいろんな可能性があり得る。ドイツ馬の中で抜けた馬は本当にいない。もう一度書くが、Brown Pantherは重馬場では強く、ドイツ馬にとってまず倒さねばならない相手だろう。しかし馬場次第で順位は変わる。はっきりとした順位予想は出来ないが、一応以下のようになる。

1. Brown Panther
2. Gereon
3. Mawingo
4. Arrigo
5. Waldpark
6. Ibicenco.

 Earl of Tinsdaleも加えていいかもしれない。AmetrinとTahiniも理論的にはあり得るのだが、厩舎の戦略の犠牲になってしまうだろう。


 以上、弟マティアスの予想。本命に挙げたBrown Pantherは馬場次第という感じだが、今年のハンブルクの馬場は非常に乾いていて、連日3.3〜3.6というハンブルクではこれまで自分はみたことがないような馬場数値を示している。先ほどネットで中継を眺めたところ、今日は雨が降っていて、馬も外埒に流れてはいたが、明日は内の仮柵が外されるし、内と外で結構伸びそうな感じだ。

 兄のハネスは弟ほど凝ってないのだが、一応ざざっと訳そう。


 今年はシュレンダーハーン牧場の独占状態と層の厚さに混乱させられる。ウニオン・レネンからAmetrinとArrigoはそれほど多くを見せていない。Mawingoはデフリースが選択した馬、Ibicencoは国際的に試されているし、Tahiniは唯一2400mを勝ってる馬だ。高いレベルで層が広がっているのか、それともダービーの勝者はシュレンダーハーン以外から出てくるのか?いずれにせよシュレンダーハーンを無視するわけにはいかない。昨年は散々な予想をしてしまったが(註:本命はMonterossoだった)、今年は以下の6頭で。

Arrigo
Brown Panther
Earl of Tinsdal
Gereon
Ibicenco
Waldpark

 アドリー(デフリース)!すまない!君の馬よりこっちのほうが距離が持つと思うんだ…。
 (ヴェーラー厩舎では)Wald Park(私の好きな馬)よりEarl of Tinsdalを上と見る。主戦のエディーがこっちを選んだからね。英国ではBrown Pantherはドイツ・ダービーでは無敵だろうという評価だが、見てみようではないか。


 ハネスはArrigoを本命にしてきた。元々の期待は一番高かった馬だからね。しかしその割にスパッと勝ちきれないがために、巷の予想を混乱させている原因にもなってるかなと。

 では最後に私の予想をば。

 一応先ほど主要な前哨戦を一気に観直してみたが、レースの印象がよかったのはIbicenco、Brown Panther、Waldparkだった。しかしそのまま単純にこの3頭というわけでもない。

 上にも書いたが、今年は馬場が非常に乾いている。1週間使い込んでいるので、決して馬場状態が良いとはいえないが、今日のレースでも外はよく伸びているし、同時に仮柵が外される直線の内埒沿いは確実に馬場がいい。この辺の要素をどう考慮するかも重要だ。

 恐らくシュレンダーハーンはAmetrinかTahiniをペースメーカーにしてくるだろう。少なくともAmetrinは先行する。ペースが極端に緩くなることはないと考えられる。そうなると定石通りなら、最後に脚を貯めて追い込んでこられる馬が有利にはなる。

 追い込みが効きそうなのは、Gereon、Mawingo、Silvanerといったところ。Gereonは年明け後ズブい競馬で勝負どころではまらず、最後に追い込んで2、3着になってるが、鞍上ボシュカイの衰えも否めず、今回ムルタを迎えることができたことで、タイミングよく大外一気を密かに期待している。

 Silvanerも年明け後イマイチだが、血統的には距離が伸びて更に良いタイプだし、ここで一気にはまる可能性も否定出来ない。

 一方Mawingoは落ち着いて終いを使える馬なのだけど、Tertullian産駒がダービーを勝つのは想像できない、というかなんか嫌だ。ってことで3着までなんじゃないかと(すまない!アドリー!)

 Arrigoにはデビューから潜在力の高さを感じており、この馬自身には結構期待をかけている。しかしまだ馬が出来上がってない感じもし、ダービーは入着までのような気がする。

 シュレンダーハーンの馬ではIbicencoが面白いと思っている。年明け初戦で未勝利を圧勝後、ロンシャンのリステッドで3着。そしてシャンティイのリス賞(仏G3、2400m)でKreem と競りあっての僅差2着(しかも0.5kg余分に背負っている)となり、確実に力を付けている印象を受ける。

 同じくシュレンダーハーンでは、ウニオンで逃げ粘ったAmetrinにも成長力を感じる。ペースメーカーになりそうな気はするが、ミナリクが完璧なペースメイキングをすれば、直線で仮柵の取れた内埒沿いを止まらずに駆け抜ける場面も考えられる。

 Waldparkは3戦3勝でどれも強い勝ち方。潜在能力は高そう。しかしこれまで倒した相手はどれも弱く、このメンバーに入ってどれだけのものはか、やってみないと正直分からない。勝ってしまえば別次元のレベルである可能性もある。主戦のペトロサがEarl of Tinsdalを選んだのにはちょっとビックリしたが、何となく限界の見えてるEarl of TinsdalよりはWaldparkの方が面白そうだ。厩舎2番手のボイコにとっても、一世一代のチャンスかもしれない。

 相手関係が分からないという意味では、Brown Pantherもどれだけのものかはやってみないと何ともではある。一応ロイヤル・アスコットのキング・ジョージ5世Sを見てみたところ、確かに強い。そして父Shiroccoにそっくりだと思った。その印象ゆえに、スタミナのいる馬場でこそ本領発揮するタイプではないかと思う。明日の馬場はちょっと?かも。

 ということで、予想としては以下のとおり。

◎Ibicenco
○Waldpark
▲Gereon
△Arrigo
△Brown Panther
△Silvaner
△Ametrin

 Mawingoも3着はあり得るかなと。しかし3着以内は固いと思わせる馬がいないのも事実。印を付けた7頭のうちどれが勝ってもおかしくはないと思っている。

 ということで、発走は現地時間3日17:35(日本時間4日0:35)。wktkしながら待つとしよう。

【追記】
 マティアスより現地からメールが来た。土曜日の馬場は後から再測定されて4.0(良)になったが、実際にはもっと重くなっているという印象を皆持っているとのこと。夜には一時的に強い雨が降り、まだ止まないので、当日の馬場は重くなるだろうと。それゆえMawingoの可能性は下がり、Arrigo、Brown Pantherのチャンスは広がった、Waldparkも面白そうだってことだ。
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2011年05月21日

ケンタッキー・ダービー馬Animal Kingdomの母Daliciaとその牝系



 アメリカ競馬は門外漢です(キリッ


 早くも米クラシック第2戦のプリークネスSを日本時間の明朝に控えたところで、遅ればせながら5月7日にケンタッキー・ダービーを制し、間もなく二冠目に臨むAnimal Kingdomの牝系について書いてみようかと。

 因みにAnimal Kingdomを略すと「あにき」が頭をよぎるのだが、擬人化クラスタからのコンセンサスは全く取れていない。

 さておき、アメリカ競馬門外漢の私が敢えてケンタッキー・ダービー馬などを取り上げたのは他でもない、このAnimal Kingdomの牝系に思い切りドイツ縁の血が流れているからだ。母Daliciaは現役時代ドイツで走っており、私自身の記憶にはあまり強くは残っていないものの、一応生でも見てきているのである。

 Dalicia

 2001年生まれの2004年クラシック世代で、同期のドイツ馬ではShiroccoが日本人には最も通りがよいだろう。生産者はCarlton Consultants Ltd.。英国のベイス(Erika Alice Bass)という馬産家のドイツでの生産者名義で、一時ドイツでサラブレッド生産活動をしていた。調教師はペーター・ラウ、鞍上は厩舎主戦のムンドリーが主に務めている。

 2歳でいきなり牝馬リステッドからデビューしているあたり、厩舎の期待はそれなりに高かったようだが、ここは10着に敗退。しかし年明け未勝利戦を2着し、続けて牝馬リステッドでも2着と、順調なスタートを切った。この時勝ったのがこの時点では世代トップの期待を背負っていたSaldentigerinだから、Daliciaもまあまあの評価を得る存在にはなった。路線としてマイルの1000ギニーには向かわず、1戦挟んでディアナ賞(独オークス・G1)に挑んで5着に健闘している。続けて牝馬混合G3で古馬と初対戦するが、Daliciaと既に何度か対戦しているValleraが古馬を打ち負かしたのに対し、Daliciaは11着と大きく敗退した。この辺りやや安定感の欠けるところはあったのだろう。ここまでのレースで確認できるものを見るかぎり、概ね後方待機から直線での追い込み勝負に賭けるタイプであった。ところでこのVallera、日本に入ってきてるね。

 そもそもこの時点でDaliciaはまだ未勝利である。ようやく初勝利を手にするのが、04年8月15日のブレーメン・オークション・レネン(L)だ。残念ながら自分はこの時のレース映像を確認できないのだが、この時2着に負かした相手が、同厩舎の牡馬Egerton。このEgertonがこの後バーデン大賞に向い、ダービー馬Shiroccoを押さえWarrsanの2着となって「世界最強の未勝利馬」の称号を得たことは、誰もが知るところである(え?)

 Daliciaはその後フランスにも度々遠征し、古馬になってコリーダ賞(G2)でも4着と健闘している。しかし勝ち味には薄く、2勝目を手に入れたのが、秋のバーデン開催の2000m重賞シュパール・カッセ-フィナンツグルッペ賞(G3)だ。このレースには前走G1のバイエルンツフトレネンを制してきたSoldier Hollowが圧倒的人気で参戦しており、Daliciaは単勝21.4倍で、完全な人気薄であった。レースはSoldier Hollowが人気通りに直線でサクっと抜け出してそのまま勝利するかと思えたが、仕掛けが早すぎたのかソラを使ったか、脚色がやや衰えたところを、満を持して後方から追い込んできたDaliciaがばっさり差し切ったのだ。こうして負かした相手を見ると、意外にこの馬は持ってるものがあったのかもしれない。

 生産者でありオーナーのCarlton Consultants Ltd.がこの年一杯でドイツの厩舎と生産活動を閉じたことで、Daliciaはオークションに載せられ、40万ユーロでアメリカに売られる。移籍後のレース振りは分からないのだが、一応1勝をあげ、ビヴァリーヒルズH(Gr. II)で4着になっているようだ。通算成績は24戦3勝。しかし重賞やリステッドでの入着回数は多く、オープン馬としてはまずまず優秀な成績を残したといえるだろう。

 Daliciaの牝系を遡ろう。

 Animal Kingdomの祖母、Daliciaの母であるDynamisはレットゲン牧場の生産馬だ。英国でシェイク・アハメッド・アル・マクトゥームの馬として、後にDaliciaのオーナーであるベイスに買われて走ったが、18戦未勝利で終わったらしい。産駒はDaliciaが最も優秀であるが、Daliciaの全妹Darwinaの産駒Daveronが先日のBeaugay S(米G3)を制するなど、肌馬としては優秀だ。

 Dynamisから実質的にドイツを離れてはいるものの、この牝系はレットゲン牧場の基幹の一つDラインである。近年では03年ヘンケル・レネン(独1000ギニー・G2)のDiacadaや06年ダービー2着のDickens等がレットゲンの活躍馬として挙げられる。

 このDライン、遡ってみると分かるように、Didergö以前がハンガリー生産馬で、この馬を5歳の時にレットゲンが購入したところから、ドイツでのラインが始まっている。レットゲンといえばKinczemの直系に当たるWラインを基幹血統に持つことでも知られており、過去においてハンガリーとの縁は深い。去年暮れにAnna Mondaの記事でも少し触れたが、Didergöを輸入したこの時期にはPrince Ippiというハンガリーの名馬Imperialを父に持つ活躍馬も出している。しかしこの頃レットゲン牧場オーナーのルーディ・メール(Rudi Mehl)とその妻であり牧場創業者の娘マリア・メール・ミュルヘンス(Maria Mehl-Mülhens)がハンガリーの馬産界とどのような関係を築いていたのかは、残念ながら自分の手元資料からは分からない。ただ冷戦期にあってもこれほどハンガリーと交流を持っていた牧場は他にないだろう。レットゲンのアーカイヴに入って色々調べると、きっと面白い話が出てきそうな気がする。

 さて、このドイツでの基幹牝馬となるDidergö自身、なかなかの活躍馬だったようで、ドイツにも遠征してミュンヘンの別定戦を勝っている。その母Dussogoも勝ち鞍にSt.Laszlo賞(1300m)とAlag賞(2000m)という当地重賞格のレースがあり、戦後ハンガリー競馬再興期の活躍馬の1頭である。更にその母Dubiosaは戦前最後のハンガリー1000ギニー馬だ。Didergöの生産牧場はハンガリー伝統のキシュベル牧場で、実に筋の通った血統といえるだろう。

 DidergöはImiの仔を身篭ってレットゲンにやってきた。(訂正:DidergöがImiの仔ですね。1代勘違い…)ImiはImperialの父で、まさにハンガリーの名血としてドイツに入ってきたのである。ImiとDidergöの仔(ここも訂正。父はUtrilloで、レットゲン生産のオーストリア・ダービー馬です)Diuはその血に相応しい活躍をした。独1000ギニーを3着後、ディアナ賞を勝利。その後牝馬G3で2着になり、通算成績は10戦4勝、入着4回。産駒でもDiu Starが重賞を2勝している。Daliciaの祖母であり、Diuの孫に当たるDiasprinaはヴィンターケーニギン賞を制している2歳牝馬チャンピオンで、この牝系はやはり名血と呼ぶに相応しいであろう。

 そんな中欧の名血がアメリカに渡ってダートのケンタッキー・ダービーまで制してしまうのだから、競馬というのは奥深い。そしてDaliciaはなんと現在社台で繋養されており、今年ネオユニヴァースの仔を産んだそうだ。明朝プリークネスSのAnimal Kingdomにまずは注目すると同時に、その弟の2年後のデビューも楽しみに待ちたいと思う。
posted by 芝周志 at 23:52| Comment(10) | TrackBack(0) | 海外競馬