2010年06月27日

独ダービーのトライアルが一通り終わったところで

 昨晩ハノーファーで行われたトライアルが終わったところで、外国からの出走馬を除き今年のダービー候補はほぼ出揃った。後述するとおりまだ1頭、中1週で狙おうとしている馬がいることはいるが、とりあえず前哨戦をYouTube映像で振り返ってみよう。

5月24日ミュンヘン
バヴァリアン・クラシック(G3)2000m − Scalo

 (いつ聞いてもミュンヘンの実況はうざい…。)

 例年なら本番1ヶ月前に当たるステップレースだが、今年は祭日に合わせた前倒しとダービーの後ろ倒しで、間にもう一回走れるスケジュールで行われた。勝ったScaloにとっては、前走のバンクハウス・メッツラー春季賞(G3)で勝負をつけた相手が殆どで、しかもそのとき力関係が定まってなかった同厩同馬主のLangleyをペースメーカーに立てた、完全にお膳立てされたレースだった。それでいて直線入り口で前が開かず、一瞬ヒヤッとしたシーンがあったが、外へ出してからは先に抜け出していたWheredreamsareをきっちり差し切り、力の違いを見せ付けている。とはいえ、ここで本当の実力が試されたとはおよそ言い難いのは事実だ。

6月13日ケルン
オッペンハイム・ウニオン・レネン(G2)2200m − Zazou

 (左右で英独語同時実況とかうざすぎるだろ…。)

 1番人気となったScaloはここが真の試金石となるはずだったが、直線で内を突こうとする度に、逃げていたNext Hightがよれて進路を塞ぎ、一瞬躓く危うい場面があるなど、全くレースをすることが出来なかった。それゆえこの5着という結果は全く参考にならない。しかしスムーズに抜け出すことが出来ていたら勝てたかとなると、またそういう話ではない。Zazouがそんなたらればを言わせないほど圧勝したからだ。Zazouは春緒戦ドクター・ブッシュ・メモリアル(G3)を完勝した後、仏1000ギニーへ向かい、最後方からよく追い込んで5着。そして挑んだこのウニオンでも、最後方から直線でしばし進路が開かなかったものの、先に外を抜け出したLindentreeの更にその外へ持ち出してスパートをかけての完勝で、ぐうの音も出ないほどの強さであった。ダービー本番のゼッケン1番は、まず間違いなくこの馬になるだろう。

6月18日ブレーメン
swbダービー・トライアル(LR)2100m − Russian Tango

 残念ながらYouTubeやDailymotionでも映像発見できず。

 メールミュルヘンス・レネン(G2・独2000ギニー)3着のRussian Tangoとデビューから平場2連勝で前走がトップハンデで完勝だったLyssioが人気を分け合った。レースはAltair Starが作った緩いペースに、Lyssioが中団の内、Russian Tangoが後方で、馬群は密に固まった展開。そして長い600mの直線に入ると同時にスプリントとなって、外から追い込んだRussian Tangoが、内で叩き合うVal MondoとAltair Starを僅かに交わし勝利。Lyssioは切れの勝負に敗れた形で6着だが、勝ち馬からは2馬身離れていない。2100mレースでありながら、実質的には600mのロングスパートの競り合いであり、ハンブルクのハードな消耗戦の予行練習として適した内容だったかは疑問が残る。

6月26日ハノーファー
アクツィオン・ゾンネンシュトラール・ダービー・トライアル(LR)2400m − Seventh Sky


 ドイツの変動祭日によって開催日が固定されず、直行だったり間にもう1レース入ったりするが、近年ここの勝者が3頭もダービーを勝っているので、決して軽視できないレースだ。特に今年はダービー後ろ倒しにより、中2週の最終便となり、距離も2400mとなって、ローテーション的にも距離経験においても本番へ向けた好条件を備えている。
 1番人気には楽勝デビューを果たしたシュレンダーハーン牧場のSolidaro。だが1戦1勝馬で1.3倍はどう考えても被りすぎだ。結局後方を進んで直線多少伸びるも勝ち負けには絡めず5着。メンバーに手薄感があったとはいえ、ドイツの競馬オヤジたちはもう少し修行しろと。
 勝ったSeventh SkyはSamum、Schiaparelliという2頭のダービー馬の半弟で、デビュー戦は2.2倍と期待を集めていた。しかし2着、3着、3着と勝ちきれないレースが続き、ここでは4番人気に人気を落としていた。だが前走は直線でなかなか前が開かない展開ながら1馬身¼差の3着まで詰め寄っており、馬の成長は見えていた。そして今回は先団から早めに抜け出して馬場のいい外へ向かい、更に外埒一杯に伸びてきたSupersonic Flightを押さえ込んでの勝利。本番にうまく間に合ったと見ていい。

 ざっと振り返ってみたところで1番人気になりそうなのはというと、やはりウニオンを圧勝したZazouであろう。2歳で5戦しているあたりがあまり近年のダービー候補らしくなく、当初は早熟短距離系かと思っていた。だがハイレベルなところを戦っていただけあって、3歳になっても素質上位の実力を見せている。ただ父がShamardalで母Zaza Topもマイルから2000mの活躍馬だったので、2400mにはやや不安も残る。もっとも母父がLomitasだから、そちらの血が強く出てくれば距離もこなせるだろう。私のイメージとしては2歳チャンピオンでウニオンを勝った2006年のAspectusに被るので、本番であっさり裏切る可能性も否定できない。

 ウニオンで消化不良となったScaloは、とにかく分からない。父のLandoには、そろそろダービー馬を出してもらいたいという意味で期待したいのだが、母系は短距離に寄っており、ちょっと微妙ではある。ただ世代内での実力が上位であることは間違いないので、距離をこなしたときに多頭数でのせめぎ合いにどれだけ耐えられるかだろう。

 ブレーメンのトライアルを勝ったRussian Tangoは父がミスプロ系の短距離実績馬Tertullian。産駒は昨年のIrianに代表されるように、マイルから2000mに実績がある。しかし2400mとなるとなんとも。母のRussian Sambaは2000m前後まで距離をこなしているが、距離不安は確実に残る。ただメールミュルヘンスでもマイルの流れで一旦振り落とされかけたところからジリジリ詰めて3着に粘りこんだり、ブレーメンでもラスト600mの凌ぎ合いを最後に差し切っているので、最後にスタミナを残せる展開なら勝ち負けに絡む可能性もあるか。

 ブレーメン2着のVal MondoもLando産駒で、ここにもダービー後継候補がいるのだけど、この馬の母はScalo以上に短距離型のBig Shaffle産駒だし、距離不安は相変わらず残る。そもそもLando自身が現役時代良馬場専用機で、勝ったダービーはネレイーデ以来のレコード更新となる高速馬場だった。それゆえ産駒も重い馬場での実績馬が少なく、2000m前後の良馬場で能力を発揮するタイプが多い。そういう意味でLando産駒のダービー制覇ってなかなか難しいなと。

 ブレーメンで期待を裏切ったLyssioはMotivator産駒で、元々牧場の期待も大きかったと思われる。ただダービーを勝つにはスタミナだけでなく、馬群から抜け出す一瞬の切れも要求される。ブレーメンのレースを見る限り、この馬にはその切れがまだ備わっていない。今のところ物足りないというのが正直な感想だ。

 ハノーファーを勝ったSeventh Skyは、上述したとおり2頭のダービー馬の弟で、母のダービー適正は折り紙つき。そして父が今年のダービートレンドとなっているKing's Best。日本のエイシンフラッシュも英国のWorkforceも、徐々に力を付けていって本番を制したタイプだ。その意味でSeventh Skyも本番をターゲットに仕上がってきたといえるだろう。

 ここに挙げたトライアル組のほかに、あと1頭来週末のハンデ戦をステップに本番を狙っている馬がいる。Quilaliである。本当はハノーファーに参戦する予定だったが調整過程で一頓挫あり、1週スケジュールが遅れてしまったのだ。今年初戦を着差以上に楽勝して厩舎の期待も高く、なんとか本番に間に合わせたいようだ。しかしこのスケジュールの狂いを取り戻せるかは、とりあえず今週末のレース結果を見てからだろう。

 ドイツ・ダービー発走は7月18日。予想を立てるにはまだ早すぎるので、直前になったら改めて記事を書く。その際は、昨年も予想してもらったドイツ人の競馬オタ友だちにも、また予想を送ってもらうつもりだ。
posted by 芝周志 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/39300603
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック