まず軽くキリスト昇天祭で祝日だった木曜ドルトムントのメイン。
◆5月13日ドルトムント
シュパールカッセ・ドルトムント大賞(L, 2000m) <YouTube>
ダービーへ向けたステップの一つで、2007年のJCで来日したSaddexが3歳時代に勝ったレース。今年の勝者Hollywood Kissも当然王道を進むのかと思ったが、しかし2400mまでの適正はないということで早々とダービー登録から外れていた。Nordfalkeとのラスト1F余りの叩き合いはなかなか見応えあり、ダービーに進まずともマイルから2000mの重賞での活躍は期待できる。父PaoliniというのもLandoの血の継承にも繋がる1頭だ。
さて本題その1。この日はドルトムントのほかにローカル競馬場のハースロッホとマクデブルクでも開催があった。そのうちハースロッホの第1レースを意外な馬が勝った。
◆5月13日ハースロッホ
4歳以上別定戦(ランクF, 2200m)
最下級のランクF戦(参考:リステッド以上はA、3歳未勝利戦はD)の勝者の名はDanon Attacker。馬名のリンク先を見ていただければ分かるが、生産者が社台ファームの日本馬である。彼は昨年JRA3戦、門別で1戦して未勝利だったダノンアタッカーだ。仮にもJRAに所属した馬である。こんな草競馬レベルで負けるはずもなく、ドイツに来てこれで3戦3勝。
しかしこのクラスの馬がわざわざ日本から買われてドイツにやってくるなんてことが、いまだかつてあっただろうか。母父にサンデーが入ってるあたりは多少魅力だろうが、しかし種牡馬にするほどの馬でもなさそうだ。調教師はレッケ、馬主はシュタール・ダンゲロ(Stall D'Angelo)でG1に出てくるほどの布陣ではないが、オープンレベルでは普通に常連であり、ハースロッホの草競馬で満足しているような陣営ではない。この馬がどのレベルまで上がってこられるか、楽しみに追ってみたい。
本題その2。
◆5月9日京都
3歳未勝利戦(芝1400m)
一方今更気付いたのだが、先週日曜の京都でドイツ産馬のミラノムーンがデビュー2戦目を勝ち上がった。しかしドイツ産馬といっても、ミッションモードやリリエンタール、エイシンフラッシュといった重賞クラスの母を持つ馬ではない。ミラノムーンの母Moon Loveは3〜4歳時に5戦して未勝利で、GAGがたった51.1kgという、それこそダノンアタッカーが走ったレースレベルの馬だ。1994年生だが、最後に全馬リストが掲載されたGalopp2006(毎年3月頃発行。2007年版を最後に休刊)を見たらなんと12歳で現役登録されている。ミラノムーンは2007年生まれだから、Galopp2006の発行前後に現役登録を抹消して種付けをしたのだろう。
父Tannenkönigも1998年にマイル重賞で活躍していたものの、結局16戦して勝ち星は3歳未勝利1勝のみという、トップホースと呼ぶには物足りない馬だった。種牡馬としてはマイルG3馬Proudanceを出すなど、そこそこ稼ぐ産駒は出しているものの、昨年の種付料は2000ユーロ(約24万円)でそれほどお高い部類には入らない。
生産者のウルリケ・ティンマーマン(Frau Ulrike Timmermann)は個人馬主調教師でもあり、恐らく数頭の自家生産馬を自分で走らせているのだろう。Moon Love07、即ちミラノムーンをBBAGのオークションカタログで探してみたが載っていなかった。ということは庭先取引だった可能性がある。現馬主の山口義道氏が直接ティンマーマンから買ったとは想像し難いが、一体どういう経緯でこの馬を手に入れたのかは聞いてみたいところだ。
と、いろいろネットで調べながら書いていたら気付いたのだが、ダノンアタッカーの馬主シュタール・ダンゲロの勝負服とミラノムーンの馬主山口義道氏の勝負服が似ている。何か関係あるのだろうか。山口氏って何者?
Danon Attacker
ミラノムーン
ともあれ、独日それぞれへクロスして渡ったおよそ上等といえない馬たちが、それぞれの土地で小さな一歩を記したのは喜ばしいことだ。今後もこのクラスの行き来が続くのかはなんともいえないけれど、少なくともこの馬たちの走りは大事に見ていきたいと思う。
★追記1
Stall D'Angeloって重賞クラスでも見たことあるけど、どの馬だったか思い出せなかったのだが、まはるさんのブクマの指摘で分かった。Toughness Danonだ。ダービー3着のあと、フュルステンベルク・レネン(G3)を勝った馬である。そして名前に「Danon=ダノン」。これは共同オーナーとしてダノックス、あるいは野田順弘氏が関わっている可能性が想像できる。このダノンアタッカークラスの馬がドイツに渡るというのも、なるほど最初から自分たちの所有馬ならありえるわけだ。
Stall D'Angeloは、競馬では比較的最近見かけるようになったオーナーシップで、馬術競技馬も生産、所有している。サイトを一応見つけたのだけど、今のところイントロの写真フラッシュしかない。「Rich History」とか書いてあるから、馬術競技では古くから名が知られているのかもしれない。まだコンテンツがないとはいえ、言語選択アイコンに日の丸が含まれているのが、日本との関わりを十分想像させてくれる。
→http://www.d-angelo.biz/
★追記2
追記1を書いている最中にツイッターで笠雄二郎先生からご指摘が入った。ダノンアタッカーの母ゴールドポイントはネオユニヴァースの全姉じゃないですか!
更にりろんちさんが私ではなかなか気付かない補足情報を載せてくれました。おお〜!この2頭と独日関係が繋がってくる〜!w
是非こちらも合わせてお読みくださいませ。
日本・ドイツ・ロシア: まったり血統派の茶飲み話
2010年05月15日
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ヴィクトリアマイルはブエナビスタが貫禄の勝利
Excerpt: ひとこと ※もっさりと更新。twitterで呟いたネタを1週間に1回まとめるお仕事。 レース結果 ◆【ヴィクトリアマイル】(東京)〜ドバイ帰りのブエナビスタがGI4勝目 ※状態はあまり良くなかったとは..
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Tracked: 2010-05-16 23:17
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やりましたね〜エイシンフラッシュ。まさかあの血統で32秒台の末脚を繰り出すとは予想外でしたが。
誰が日本に連れてきたのかと思えば生産は社台ファームでしたか。
頭文字でもしやと思って牝系をたどるとMonsunが。さすがは照哉さんだなぁ。
嬉しいですねぇ!やりましたドイツ血統!
欧州血統はずぶいイメージがありますが、今回はラスト600mをトップスピードで走り続けるスタミナが要求されてましたし、スローからロングスパートで長い叩き合いをするフランス競馬に近かったかもしれません。
にしても、スゴイ3Fタイムを叩き出しました。
母ムーンレディについてはこの辺でも書きましたが(http://blog.shibashuji.com/article/34205062.html)、MラインにSurumuを付けているところがMonsunの母と近似しますね。サンデーやノーザンテイストを薄めるには最高でしょう。エイシンフラッシュも種牡馬として使い勝手がよさそうですし。
ちょくちょくチェックしてみますね。。。