2009年06月15日

混戦ダービーを予感させることになった今年のウニオン

オッペンハイム・ウニオン・レネン(Gr.II)

ダービートライアルとしては格上の存在である伝統のウニオン・レネンがつい先ほど行われた。勝ったのはシュレンダーハーン牧場のWiener Walzer。古馬のエースAdlerflugが調教中の怪我で急遽引退となり、そして何より牧場オーナー、カリン・フォン・ウルマンさんが今月1日に逝去され、シュレンダーハーン陣営にとって辛く苦しい思いの中で臨んだレースであったろう。Wiener Walzerは4月10日に未勝利戦を7馬身差で圧勝後、剥離骨折の除去手術のため2ヶ月のブランクを余儀なくされた。だが仕上がりは万全であった。直線に入ると、逃げるEgonと2番手から先頭に並びかけたPeligrosoを持ったままでサッと抜き去ったのである。しかしブランクの影響は決してゼロとはいえず、抜け出してから右へ左へとふらふらし、鞍上デフリースの必死の鞭で気合を維持して、2着Oriental Lionに1¼差でゴールを駆け抜けた。ただ潜在力の大きさは認められるものの、Walzerkoeniginの仔でもあり、ダービー・ディスタンスへの不安を感じさせられた。このレースは結局、陣営の意地の勝利という印象が残った。

恐らく主戦デフリースは、ダービーではハノーファーのトライアルを勝ったSuestadoの手綱を握ることになるだろう。カリンさんの弔いとしては黒青赤の牧場勝負服の方が適しているだろうが、元々黄青のウルマン服はカリンさんが始めたものを息子が引き継いだものなので、どちらでもよいといえばよいのだろう。

2着のOriental Lionは道中Wiener Walzerの内にいて、直線では粘るEgonとふらふらするWiener Walzerの影響を少なからず受けてなかなか前へ出られず、Peligrosoが完全に失速して漸く空いたスペースからスパートをかけることができた。その位置から、既に最後方からスピードに乗せて追い込んできてたPanyuを押さえ込んでいるのだから、十分地力のある馬であることは示せた感じだ。ただ一瞬の切れる脚があれば前へ突っ込んでいける隙間は何度かあった。それが馬の問題なのか鞍上ポルクーの腕のせいなのかは何ともいえないが、それでもポルクーの騎乗があまり褒められたものでなかったことも確かだ。

オストマン陣営は主戦として今年から迎えていたモンジールとの契約を先日解消した。3年前までは位置取りの悪さで時々見せていたハラハラするレースも、追い込みの腕でちょっとしたパフォーマンスに高めていたモンジールであったが、今回の来独では失敗ばかりが目に付き、かつての「アガ・カーン・ジョッキー」という昔の名前では最早売れないほどの腕の衰えを露呈してまった。クビになるのも仕方ない。しかしオストマンにとっては頭の痛い状況であることに変わりはない。ポルクーは私が帰国後に名前が出てきた騎手なのでよく知らないのだが、昨年ローマ賞(伊Gr.I)で大穴を開けたEstejoに騎乗していたことでドイツに名が売れ、今年からバーデンバーデンでアウエンクヴェレ牧場の馬を預かるルーレック厩舎へ呼ばれてきて25歳のイタリア騎手である。そのポルクーを、とりあえずアウエンクヴェレのメイン厩舎であるオストマンのところへ連れてきたのだろうけど、今回の騎乗を見る限りダービー本番で任せてもらえそうな気はしない。

デットーリに中弛みを許さないプレッシャーを掛けられながらEgonが引っ張ったレースは、全体として締まった内容ではあり、レベルの低いレースだったとは思わない。しかしこの着順がダービーへ直結する評価に繋がるとはいえない。現状のままいけば、多分Suestadoが1番人気になるだろう。もっともステップが飽くまで準重賞勝ちであるから、GAGの上ではWiener Walzerかミュンヘンを勝ったSaphirがトップとなり、ゼッケン1番を付けることになる。両者の比較軸となるはずだったPeligrosoが、中1週の遠征のせいか今回失速してしまったため、ウニオンとバヴァリアン・クラシックのどちらが上に評価されるかは明日GAGが発表されるまで分からないが、とにかく今年のダービーが予想の難しい混戦模様になることは確かだ。

posted by 芝周志 at 02:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬
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