2009年05月19日

古豪たち復活の春

ヴィクトリアマイル、ウォッカは強かった。それ以上の言葉がないレース。しかし、だったらあのドバイの成績はなんだったのか?これだけ桁外れの強さを持ちながら内弁慶で、しかも東京スペシャリストって、なんか物足りない。好きな馬だけに、どこか歯がゆい。まあそれでも安田は素直に応援する。今回は病み上がりで自重したが、安田は出来る限り府中まで行きたい。今週末のブエナビスタも外せない。ダービーも含め3連闘はちときついが。

ベナツェット・レネン(Gr.III)

ドイツのスプリント重賞初戦は、昨年頭角を現し始めた遅咲きの6歳馬Contatが、大穴牝馬Etoile Nocturneとの接戦を鼻差制し、初重賞制覇。ゴールの瞬間はEtoile Nocturneが抜けていたように見えたため、こちらが誘導馬に従われ勝者として戻ってきて、鞍上のモンジールもファンサービス一杯にスタンドの声援に応えていたらしい。しかし写真判定でContatに軍配が上がり、チャップマンに実況席から「ウィリアム、ノー・チャンス」と宣告されて、モンジールの目は点になっていたそうな。

人気のSmooth Operatorはスタートゲート内で立ち上がり、一瞬しりもちをついていた時点で「こりゃ危ないな」と感じたが、案の定やや出遅れ、全体的に後手後手のレースになってしまった。それでも4着にまで追い込んできていたので、精神面を中心に上手く立て直せば、次はガラッと変わる可能性はある。実力の判断は次まで保留。

BHF銀行マイレ(バーデナー・マイレ)(Gr.III)

こちらも若い人気馬が飛ぶ波乱。古馬マイル〜中距離の新たな主役を担うべき期待を込め、1.6倍のダントツ人気に支持されたLiang Kayが、これまたどこかちぐはぐはレースで3着に敗れる。外目後方2番手で3コーナーを回った直後、前のWiesenpfadに詰まるような形で一瞬上体を上げ、そのまま最後方に下がってしまった辺りで「こりゃまずいな」と感じたが、案の定外外を回らされて直線での仕掛けが明らかに遅れ、追い込んではきたものの3着止まり。モンジールは追わせると上手いのだが、馬群捌きがむかしから下手。腕は一流でも協調性に難あるヘリアーが出て行って、昔の名前じゃあまり優遇してくれない故郷フランスで燻ってたモンジールをドイツへ呼び戻したはいいけど、オストマン師の騎手に対する悩みはまだまだ解消できなさそう。ただ馬自身もどこか本調子じゃなかったというか、嵌ったときのピリッとした切れ味が感じられなかった。父Dai Jinほどのふてぶてしい強さはなさそうだ。

さて前日同様、ゴール前で写真判定にもつれ込む接戦を演じたのは、私が一昨年まで目の前で見ていた馬たちだった。中団から馬場の外目を抜けたAspectus、後方から内を突き前へ躍り出るKönig Turf。逃げるEarl of Fireを両脇から同時に抜き去り、かつて鎬を削ったライバル同士、栗毛と黒鹿毛が馬体を合わせ、古豪の意地がぶつかり合う。鳥肌ものだ。そしてAspectusが僅かに短頭差König Turfを抑え、2007年7月大ヘッセン・マイレ(Gr.III)以来の久々の重賞制覇を果たした。

Aspectusは2歳王者、3歳時にウニオンを勝ってダービー候補に支持されたが、距離の壁にぶつかり、以後マイルから中距離に転向。しかし上述の大ヘッセン・マイレを除いてGr.II、Gr.IIIレベルで煮え切らないレースが続き、昨年はフランスの大厩舎ファーブル師の下へ送られた。しかしそこでも結果が出せず、今年になって再びドイツに戻ってくる。尤もレットゲン牧場専任のブルーメ師の下ではなく、新調教師ムンドリーが与ることになった。そして4月のクレーフェルトの平場別定戦で慎重に復帰し勝利、ここに臨んできたのである。今回のレースを見る限り、馬に覇気は十分ある。6歳という年齢でどこまで力をつけなおせるか分からないが、かつての輝きをもう一度見てみたいのも正直な気持ちだ。同期Prince Floriは同日ローマの共和国大統領賞(伊Gr.I)で差のない5着に踏ん張り、衰えを感じさせながらも地道に頑張っている。ウニオンで降したLauroはヴェーラー厩舎に所属しながらもアメリカを主戦場として昨年はGr.II勝利。今年も16日にピムリコのディクシーS(米Gr.II)でシーズンスタートし、2馬身差の4着。ゴドルフィンに移籍したSchiaparelliの動向は分からないが、この世代は個性派揃いで層が厚い。Aspectusもまだまだ同期の頑張りに負けられない。

しかしそれにも増して胸を打ったのは2着のKönig Turfだ。昨年3月サンクルーのエドモンブラン賞(Gr.III)を逃げ勝ち、新境地を開くかと思われた直後、調教中に骨折し、一旦引退を余儀なくされた。それ以前にも骨折で長期休養し、ボルトを骨に埋めたまま復帰して重賞戦線を戦った苦労馬である。命はとり止め、フランスでの種牡馬入りの話も決まっていたのだが、引き取り先の牧場から馬主へ買い取り金が振り込まれてこないということで取引不成立となり、今年再び現役復帰となったのだ。管理していたシュプレンゲル師は愛馬が手元に戻ってきたことをことのほか喜び、ロンシャンの平場戦で一叩きさせて(3着)、このレースに送り込んだ。そしてこの熱さ溢れる激走である。ターフに現れたシュプレンゲル師は、かつてKönig Turfの主戦を務めていたムンドリー師の勝利を讃えると同時に、戻ってきた愛馬を涙を流して迎えたという。König Turfの次走は、2年前に制したハンブルガー・マイレ(Gr.III)の予定だ。

posted by 芝周志 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬
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