2012年10月09日

【ケルン競馬場伝貧問題】現状更なる感染馬はなし


 Erstes Aufatmen in Sachen Quarantäne (German Racing)
 ”隔離検疫に関する件でまずはほっと一息”

 10月1日に発覚したケルン競馬場における伝染性貧血症の件、場内厩舎にて管理する全292頭の馬に対し行った隔離検疫だが、全馬陰性という結果が出た。まずは関係者みなほっと一息といったところであろう。

 但し、これは飽くまで感染症に対する抗体が血液中に出ていないということであり、即ち現時点で発症やその兆候を見せている馬がいないということである。伝染性貧血症の潜伏期間は3日〜3ヶ月ということなので、条例に基づき予定通り3ヶ月間は変わらず全馬競馬場敷地内から出ることは禁じられている。隔離状態が解除されるのは、3ヶ月後の再検査で再度全馬陰性という結果が出る必要がある。

 取り敢えずDanedreamもこの中に含まれていることになるので、彼女も今のところ無事であることが確認されたわけだ。

 昨日の凱旋門賞では、日本の競馬ファンの殆どが直線残り300mで歓声をあげ、残り50mで悲鳴をあげたのであろう。まあ私も確かに興奮させられた。しかしドイツ競馬基地としてはやはり「それでもDanedreamはその5馬身前にいたのだよ。」と妄想せざるをえない。恐らくドイツの競馬ファンたちも同じことを思っているに違いない。

 尚、オルフェーヴルの夢を破ったSolemiaがそれまでに勝っていた重賞はG2のコリーダ賞だけだ。

 コリーダ……

 過去に牝馬として凱旋門賞を連覇した唯一の馬の名である。コリーダ以来の偉業への挑戦を絶たれたDanedreamの無念は、コリーダ賞勝馬Solemiaに宿っていた。そういうことなのだろう。
posted by 芝周志 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2012年10月04日

伝染性貧血症事件勃発後のシールゲン調教師への取材記事


 10月1日に発覚したケルン競馬場在厩馬の伝染性貧血症感染による競馬場封鎖の件、3日のケルン地元紙Kölnische Rundschauに、Danedream管理調教師シールゲンへの取材記事が掲載されていた。

 Verlängerung für Danedream? (Kölnische Rundschau)
 ”Danedreamは(現役)延期?”

 事件勃発翌朝、取材記者が競馬場を訪れたとき、そこが封鎖されている競馬場とは分からない光景であったという。というのも、普段通りに馬房が開かれ、調教が行われていたからだ。

 「馬たちを運動させてあげないといけない。馬房の中に立たせっ放しにしておくわけにはいかないからね。」とシールゲン師は言う。

 Danedreamについては、「彼女が感染していないことを祈るばかりだ。」とのこと。感染馬を管理していたヴァイス厩舎とシールゲン厩舎は100mほどしか離れていないそうだ。敷地構造的にヴァイス厩舎は4コーナー脇の施設なのだろう。

 「(凱旋門賞では)賞金をつかむチャンスは十分にあった。彼女は最高の状態だからね。」
 「まさにカタストローフだよ。」

 ただ年内の出走が不可能になったことで、Danedreamの現役が1年延長される可能性もあるのではないかと考えてはいるようである。

 尚、30日にミラノのヴィットーリオディカプア賞(伊G1)で2着になったシールゲン厩舎のAmarillo他、このレースを勝った同じくケルン競馬場所属のレーヴェ厩舎管理馬Amariro等何頭かの馬たちが、帰国途中に宿泊させたバーデン競馬場で足止め状態とのことだ。ミラノへの出発前に検査をして陰性だったため、バーデン競馬協会ではそのまま面倒を看ると提案しているが、もともとケルンにいた馬であるため、戻さねばならないかどうかは、ケルン市当局の判断に委ねられていること。

 シールゲン「私は両手を縛られているようなものだよ。」
posted by 芝周志 at 02:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬

2012年10月03日

ケルン競馬場所属馬に伝染性貧血症発覚 ― Danedream、凱旋門賞出走不可に……


 昨夜2時10分、そろそろ布団に入ろうかと思ったその時、以下のツイートが飛び込んできて一気に目が覚めてしまった。



”理解できない!家畜伝染病がDanedream凱旋門賞連覇を阻む。競馬場と…(続きはリンクへ)”


 まさに何のことかまったく理解できず、「Tierseuche」という単語に馴染みがなかったせいもあり、半ば頭が混乱しながらリンク先へと飛んだ。そして更に見慣れない単語を確かめながら読みすすめると、ようやく事の重大さを理解し、愕然としてしまった。

 Danedreamを管理するシールゲン厩舎があるケルン競馬場で、同競馬場内他厩舎のある1頭の馬に伝染性貧血症の感染が確認され、それに伴い同競馬場内管理馬の隔離検疫、及び3ヶ月間の移動禁止令が発令されたのだ。即ちDanedreamは今週末10月7日ロンシャンで行われる凱旋門賞への出走が不可能となったのである。

 元ツイートのGerman Racingとはドイツ競馬の宣伝・広報を担う公式組織だ。ツイッターも云わばドイツ競馬団体の公式発表のものである。そしてこの直後に、ドイツ競馬2大情報サイト、GaloppOnline.de、及びTurf-Timesでも記事が上がり、ドイツ競馬統括組織である管理委員会(DVR)のサイトでも公式案内が掲示された。

 Kölner Bahn abgeriegelt - Danedream nicht nach Paris (GaloppOnline.de)
 ”ケルン競馬場閉鎖 ― Danedreamはパリへ行けない”

 Tierseuche: Renntag in Köln abgesagt - Danedream darf nicht im Arc laufen (Turf-Times)
 ”家畜伝染病:ケルンでの競馬開催中止 ― Danedreamは凱旋門賞走れず”

 Kölner Renntage 3. Oktober und 14. Oktober 2012 abgesagt (DVR)
 ”10月3日と14日のケルン競馬開催中止”

 いずれの記事も主旨は同じなので第一報時点での要点をまとめよう。

◆ミュンスター市の化学・獣医学調査機関がケルン市獣医局(Veterinäramt)へ、ケルン競馬場の1頭の馬が血液検査により伝染性貧血症に感染していると報告。ケルン市は条例に従い、感染した馬の殺処分、ケルン競馬場の閉鎖、全馬約300頭の隔離検疫、及び感染馬所属厩舎から半径1kmにいる馬の3ヶ月間の移動の禁止を指示。
◆これに伴いDVRとケルン競馬協会は、10月3日と14日に予定されていたケルン競馬場での開催の中止を決定。
◆感染源については、既にノルトライン・ヴェストファーレン州やラインラント・ファルツ州で症例が報告されているものと同様、動物病院で感染している馬に接触したものと思われる。
◆上記措置に伴い、Danedreamの凱旋門賞を始め、その他ケルン競馬場所属馬たちのレース出走は不可能となる。

 これらにやや遅れて報じられたイギリスRacing Postの記事ではDanedreamの共同馬主である吉田照哉氏のスポークスマン、パトリック・バーブ氏のコメントを取り上げているが、バーブ氏自身が伝聞情報の様子で、可能性は低いがなんとか凱旋門賞出走への期待を繋ぎたいニュアンスで書かれている。だが上記のように、ドイツ国内の報道ではこの時点で既に最終決定の様相を見せていた。

 第一報時点は現地時間の夜19時〜20時だったので、Danedreamの動向に関しては厩舎サイドを始め、まだ公式にはどこからも発表されていなかった。しかし現地翌朝、日本時間の2日夕方には状況は確定、フランスギャロへ正式に出走登録取消しが報告された。万全の準備を勧めてきたDanedream陣営は、思わぬ形で計画が潰れてしまい、やりきれない思いで一杯だろう。1936年、37年Corrida以来の牝馬による凱旋門賞連覇という偉業がかかっていただけに、無念というほかにない。シールゲン厩舎からは、しかし今のところ具体的なコメントは聞こえてきていない。容易に答えられる状況でもないのだろうが。

 それを示すように、Turf-Timesの続報によれば、ケルン競馬場とは別の調教場に厩舎をもつヴェーラー調教師のところへも、事態を心配した馬主等関係者からの電話が鳴り止まないとのことだ。ヴェーラー厩舎では馬主たちに安心してもらうため、管理馬全てに即時検査を行ったとのことである。

 またこのTurf-Times続報によると、ケルン競馬場理事ファスベンダー(※まったくの余談だが、ファスベンダーはケルン老舗カフェのオーナーで、ここのケーキや朝食メニューは最高である。)は、伝染性貧血症の報告を受けたと同時に条例に従った措置を実施し、また各国へも報告したという。伝染性貧血症は潜伏期間が3日から3ヶ月あるため、仮にDanedreamが既にフランスへ出発した後であっても出走停止処置にせねばならず、この段階で出走への望みは潰えていたのである。

 尚、感染した馬は、ケルン競馬場に馬房を持つ小厩舎サラ・ヴァイス調教師が管理する未出走馬で、まだ殆ど馬房から出たことはなく、他の厩舎の馬と接する機会は少なかったことから、恐らく感染は広がっていないだろうと、希望を込めてファスベンダーはコメントしている。シールゲン厩舎とはエリアも違うようだ。伝染性貧血症はアブ等の吸血性昆虫を介して伝染するものであり、すぐそばにいる馬にしか容易には感染しないという。ファスベンダー曰く、外部の動物病院にいた際にもらってきたものとのことだ。

 感染源については上記要点でも触れているが、今回の伝染性貧血症はケルン競馬場内で初めて発生したものではなく、実は8月以降既に症例が報告されていた。ドイツは乗馬関係が競馬よりも盛んな国なので、競走馬以外にも周辺には多くの馬がいるのである。感染源とされる馬がいたヴァハトベルク(Wachtberg)という町はケルンから南へ約50kmに位置し、現地の地方紙Rhein-Sieg-Rundschauでは9月中から伝染性貧血症に関するニュースを発信していた。

 2000 Pferde von Viruskrankheit bedroht (Rhein-Sieg-Rundschau 9/21)
 ”2000頭の馬がウイルス病に脅かされている”

 この記事によると、最初の発症例は8月中旬にライン・ジーク郡で報告された生後3ヶ月の馬で、この馬はヴァハトベルクの動物病院にいた10歳の輸血用牡馬10年間輸血用として使役されていた牡馬から血を受けていた。この牡馬がどこで感染してきたのかはわからないが、この当歳馬の他にも最低5頭の馬に輸血を行なっている感染が広がっている事実が明らかになった。これらの馬から更に感染が広がっていることも発覚し、(訂正:ここを発生源として感染が明らかになったのがこの記事の時点で合計6頭)結果として発生源となっている動物病院に過去にいたことがある馬たちも検査する必要が出てきたため、2000頭以上の馬が検査対象になるということである。

 このような事実に対し、何故競馬関係者は事前に対応できなかったのか、という問題も持ち上がってきたようだ。

 Ausbruch der Viruskrankheit war schon länger bekannt (GaloppOnline.de)
 ”ウイルス病の発生は既に以前から知られていた”

 今回の件は、単にDanedreamだけの問題ではなく、ドイツ競馬界全体が大きな損失を被る事態へと発展していくことになるだろう。

 それにしても、Danedreamだけでなく、Snow Fairyの故障、そしてつい先程報じられたNathanielの熱発により、有力馬が次々出走回避となってしまった今年の凱旋門賞。日本のオルフェーヴルにとってはライバルが減り、よりチャンスが大きくなったといえるのだろうが、同時に興醒め感も否めない。またDanedreamは、当然ジャパンカップにも来られなくなってしまった。私個人的には友人の競馬カメラマン、ゾルゲからの信任を受けたこともあり、彼女のラストランをドイツ競馬界のために撮るという責任をもって臨むつもりだったため、なんとも言えない虚しさに襲われている。つくづく残念である。
posted by 芝周志 at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ競馬